はざまの庵

分類し難い存在を愛でる覚え書き by aiwendil お気軽にコメントをどうぞ。

「resfest 10」@仙台(なのか?)。

2007-02-25 23:03:38 | アートなど
昨日2月24日は、せんだいメディアテークで開催されていた国際映像フェスティバル「resfest 10」 へ行って参りました。
少なくとも私はそのつもりだったのですが、しかし。
行ってみれば「せんだいメディアテーク月例上映会」としての名目が前面に押し出されていて、「resfest」としてのアイデンティティは非常に薄いものになっていたような気がします。
上映内容も5プログラムのみ。ひとつ間違えば「resfest」とは名ばかりかと思われかねない、どうにも釈然としないイベント形態でした。
メディアテーク側でも「イメージの庭」などのイベントでresfest作品を上映したりと、以前から布石を打っておいた成果のイベント誘致なのだろうな、と、その努力はうかがえるのですが、それが施設運営組織全体にはコンセンサスを得られていないのでは?と思えてしまうようなぎこちなさを感じてしまって、私にとってはどうにも落ち着かない鑑賞でした。

しかしまあ、上映作品自体は、どれもさすがの出来。単一文化に染まらない創造の多様性が炸裂していて非常に楽しめました。
次々と繰り出されるハイクオリティなショートフィルム世界に触れるうち、2時から9時の7時間があっという間に過ぎてしまいました。ショートフィルムおそるべし。
唯一の心残りは「BY DESIGN」と「EVERYTHING UNDER THE SUN」を観られなかったこと。
こんなことなら東京でもっと観ておくんだったと激しく後悔しています。

以下、短評と覚え書きメモ。

◇プログラム「SHORTS ONE」世界のショートフィルム。
[THE TALE OF HOW]:ファンタスティック。
[RABBIT]:アニメーション。教材的な絵柄で無邪気なグロテスクを描く。強烈な印象を与える作品。
[I AM (NOT) VAN GOGH]:コンペの審査面接で語られる構想がリアルタイムで映像として提示される。時計の回転と雑踏の中に紛れ込むコマ撮りランナーが印象的。
[A PERFECT RED SNAPPER DISH]:完璧な鯛料理を求める料理人。些細なミスを連発するうち対処法がクレイジーになってゆく。マッドサイエンティストを連想。ブラック。
[FOOD FIGHT]:食べ物同士が戦う。戦争の歴史になぞらえた展開。兵器を食物に置き換えることで戦争の愚劣さを露呈させる。見た目はお馬鹿で笑えるけれど、奥は深い。考えさせられる。
[THE BOX]:帰宅する女性。テレビをつけると自分の行動が映っている。パニックする女性。現在に近づく映像。ついには女性はテレビに取り込まれてしまう。ホラー的。本来は追いかけ再生された映像が現実に追いつくことはないけれど、それを意識させないトリッキーな編集手法が秀逸。
[SILENCE IS GOLDEN]:困った隣人デニス、アルコール依存の母。少年の心象。因果。動き出す落書き世界が印象的。
[0.08]:ドキュメント。ごく普通のサッカー少年、ヴィクター。ただし、彼の視力は0.08しかない。カメラの描き出す0.08の世界。感動的。レンズのもたらした可能性に感慨。
[FOG (NIEBLA)]:スペインの山村でかつて起きた事件を語る老人。空からきた羊。村に起こった変化。幸福のノスタルジー。
[TEN THOUSAND PICTURES OF YOU]:プリント写真が映像として動き出す。スターと女性。裏切りと報復。被写体の逆転。
[GAME OVER]:かつて一世を風靡したゲームをアナログなオブジェで再現。昆虫標本と花のインベーダーゲーム。ピザのパックマン。目玉焼きのモンスター。ほのぼの。

◇プログラム「CINEMA ELECTRONICA」世界のミュージックビデオあれこれ。
[GNARLS BARKLEY : 『SMILEY FACES』]:ドキュメンタリー仕立て。様々な時代・場所に出没する二人。ナールズ・バークレーは音楽の立役者だと主張する学者と、彼らは存在しないと主張する学者の対立。
[TIGA : 『U GONNA WANT ME』]:回転。残像。光跡。ビームアートのよう。
[ADAM FREELAND : 『HELLO, I LOVE YOU』]:森を行く幼い少女がロボットに出会う。家に連れ帰り、はじめは両親に拒絶されるが次第に家族同様に。しかしあるとき、急に暴走を始めるロボット。家族は逃亡を余儀なくされる。
[HIFANA : 『NAMPOOH』]:マペットの旅。CGとの共演。変な生き物大集合。マペットの水着がgood。
[SIR ALICE : 『L'AMOUR MADE IN TAIWAN』]:いかにも怪しげな帽子とサングラス・コートの男女。スパイ的ドラマが展開。
[DJ UPPERCUT : 『WHAT YOU STANDIN' FOR』]:ひと昔前の東欧的プロパガンダ風グラフィックで展開するアニメーション。ロボットのような顔と、レコードから飛び出す鉄のようなフォント。顔のパーツからも文字が生成。
[PLAN B : 『NO GOOD』]:モノたちが自ら動いてかしづいてくれる部屋。寝ながら歌う歌手に寄ってたかって身支度させる服たち。しかし、コード類の反乱に続き、モノたちが浸食をはじめる。コマ撮りの妙味。ほんの少しさわひらき的?
[SEOUL DIARY]:モノクロの街。歌手が持つ本の世界。紙の着せ替え。巨大ロボ。韓国文化からの視点。
[JAMIE LIDELL : 『NEW ME』]:馬車のいる石畳の街角。『アタック25』のようにひとつの風景画面が25枚のパネルに分割されており、なんと、それぞれ時間軸が異なっている。その中に現れる白い服の男。時間軸の異なるはずのパネル間を移動して歩き、パネルの真ん中でダンスを踊る。やがて男は1人またひとりと増えてゆき、それぞれのパネル中央でぴったり同期したダンスを踊る。とにかくすごい! クラクラきてしまいました。この日観たものの中でダントツのマイベスト映像です。
 追:もう一度観たくてたまらず思わず検索。公式サイトに動画を発見!(→こちら
 う~ん、何度観てもドキドキしてしまいます。
[THE HEAVY BLINKERS : 『TRY TELLING THAT TO MY BABY』]:お菓子の住む世界を旅するマフィン坊や。頭に載せたチェリーをめぐる悪意無いいたずら。パラダイス。
[MASSIVE ATTACK : 『FALSE FLAGS』]:火炎瓶に火をつけて投げる青年の表情をスローモーションで追ったビデオ。ドラマチック。ビル・ヴィオラの作品を連想しました。
[THE PRESETS : 『GIRL AND THE SEA』]:森を出て海へ還る人魚。彼女を育てたオオカミが崖の上から海を見つめ、人魚との日々を回想する。ノルシュタインのアニメーションのような柔らかな色使いが印象的。
[CODLCUT : 『SOUND MIRRORS』]:水中で輝きながらうごめく生物たち。音楽と同期しながら次第に進化してゆく。美しく伸びる光跡。やがてクラゲが誕生し、ぼんぼりのように多数浮遊する。光の洪水。
[VENETIAN SNARES : 『SZAMAR MADAR』]:弦の音にあわせて震える光跡。闇に浮かぶストーンヘンジのような荒野。雨の水滴と稲妻の閃光が音と同期し、美しい光景が展開する。途中で映像がピクセル落ちして真っ暗になり、音声も途切れ、ブルースクリーンに映像出力信号のような文字列が出現。う~ん、アヴァンギャルド。上映事故かと思いました(笑)。
[GRAVENHURST : 『THE VELVET CELL』]:ラフな線描とシルエットが音と同期。サラリーマンと建築物。
[HALFBY : 『RODEO MACHINE』]:カラフルな人々が繰り広げる妙なパレード。グルーヴィジョンズっぽいなあ、と思っていたらどんぴしゃでした。パレードの沿道でひそかに様々な人間模様が展開しているのが可笑しい。最後のスパイスも最高。
[PSAPP : 『ON SITE』]:ゆるーい絵柄の猫たちが繰り広げる戦いの中をくぐり抜け、姫君の居る塔を目指す子蜘蛛たち。ほのぼの克つシュール。
[PLASTIC OPERATOR : 『FOLDER』]:妙な街に妙な天気予報。天気予報のキャスターに恋する青年が告白して空を翔る。
[VITALIC : 『BIRDS』]:ジャンプする小犬たちをスローモーションでとらえた映像。ビーム光と跳ね上がる毛並みが不思議な視覚効果を生む。
[BASEMENT JAXX : 『TAKE ME BACK TO YOUR HOUSE』]:ソビエト時代の極寒の森林。山小屋で歌う女性。コサックダンスとバラライカ。戦車で迎えに来た軍人に『戻って来てくれ』と乞われ、戦車に乗り込む女性。
[JUSTICE VS. SIMIAN : 『WE ARE YOUR FRIENDS』]:熟睡する人々への過激ないたずら。部屋中がしっちゃかめっちゃかに。
[ALL HE NEEDS ]:男たちのロマンスを描いたドキュメンタリー風映像。


◇プログラム「RADIOHEAD, THE VISIONARIES」レディオヘッドのミュージックビデオ総覧。
[STREET SPIRIT]:モノクロ。歌い手、少年、椅子、エキゾチックな女性ダンサー、犬。トレーラーハウス周辺で展開する印象的な風景。スローモーションを組み込んだ、時間軸の異なる人物の同居。
[PARANOID ANDROID]:手書きイラスト風アニメーションで展開するコミカルな不思議世界。ヘリコプターに乗った天使が印象的。
[KARMA POLICE]:闇の中、歌い手の乗った古びた車が男を追う。追い詰められた男は車のオイル漏れに気付き、地面のオイルに火を放つ。バックで炎から逃れようとする車。迫る炎。車は火に包まれ、いつの間にか歌い手は消えている。
[NO SURPRISES]:固定カメラ。水槽の中で歌う歌い手の顔アップ。水槽に映り込む鏡文字の歌詞。次第に水が迫る。顔が水没し、息を止める。水が引くと、ふたたび歌い続ける歌手。
[PYRAMID SONG]:海に沈む街。影の男がボンベを背負って海中をさまよう。軌跡を描く光。骨格だけになって沈む人間たち。住宅、テーブル、マリンスノー。海上で戯れる光たち。
[KNIVES OUT]:テレビモニタの中で電車に揺られる男女。ズームアウトするとそこは病室。奇妙な手術を施される女と男。心臓の頭を持つ骸骨になった歌手がギターを抱えて歌う。
[GO TO SLEEP]:3DCG。ロンドンの街。歩くビジネスマンたち。建物が崩壊する中、公園で歌う歌手。やがて建物は再構築する。
[THERE THERE]:深い森をさまよう歌手。木の根に小人リスの家を見つける。『楽しい川辺』や『ピーターラビット』の世界のように盛装してお茶会を開く動物たち。猫の結婚式とカラスの神父。光るコートと靴を見つけて身につけると、番人のカラスが追ってくる。逃げるが森の魔力に捕らえられ、足から全身が樹になってしまう。
[I MIGHT BE WRONG]:粗い粒子の映像。歌手のアップ。地下駐車場のようなところで歌う歌手。
[LIKE SPINNING PLATES]:CADのような立体図面。出来上がった謎のマシン。高速で回転するマシンの中にはシャム双生児(?)。スキャンされる赤子。遊離する骨。謎は深まる。
[NATIONAL ANTHEM]:ライブの観客顔どアップ映像。強烈。
[SIT DOWN STAND UP]:ブレて増幅する街。立体駐車場。駅。過ぎ行く風景。
[CREEP]:コーンヘッドのようなアニメーションキャラで登場する歌手。周囲に風景が書き加えられ、増えてゆく物体。ビルの中のオフィスが出来上がる。前面の壁とレンガで塞がれた視界を、窓を突き破って外へ。ゴミ箱へ落下すると、今度は風景が順番に消えてゆく。
[HARROWDOWN HILL]:本城直季の写真を動画にしたような映像と、飛翔する鳥にまとわりつく手のコマ撮りアニメ、警官隊との衝突、水中へダイブする歌手の映像がめまぐるしく交錯する。

いずれの映像でも、最後に落書き一発ギャグ的な映像が挿入されていて、RADIOHEADのロゴマーク(怪物の顔)で締めくくられていたのが印象的。


◇プログラム「RESMIX ELECTRONICA」日本のミュージックビデオあれこれ。
力尽きたのでとりあえずここまで。
ちなみに、このプログラムで特に印象的だったのは2作。
グルーヴィジョンズの「HALFBY『SCREW THE PLAN』」のネタ振りっぷりと、児玉裕一氏の「POLYSICS『ELECTIC SURFIN' GO GO』」での まさかのスロトングマシーン2号ちゃん登場にテンションが上がりました。


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2 コメント

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記事の内容とはちょっと違う話になってしまいます... (うずら)
2007-02-25 23:54:01
記事の内容とはちょっと違う話になってしまいますが「0.08」という作品、私の裸眼視力もそのぐらいかそれ以下なんですが、ということは私は日常で不思議な映像世界を体験していると言うことになるのでしょうか?どんな作品なのか見てみたいです。
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>うずらさま (aiwendil)
2007-03-03 23:58:50
>うずらさま
作中では、(英語で)「0.08%」と言っていたんです。
視力の英語表記法を知らないので、日本の視力表現とおなじなのかどうか私も少し疑問に思っていたところ。
もし同じだとするなら、矯正視力で0.08しかない、ということなのでしょうか・・・?
謎です。

生まれたときは『目が見えない』と診断されていたこと。でも現実には視力があって、さまざまな『できないはずのこと』ができているということ。
次第に明らかになってゆく少年の日常と歴史。
感動的ですよ~。
もし機会がありましたらぜひ。
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