はざまの庵

分類し難い存在を愛でる覚え書き by aiwendil お気軽にコメントをどうぞ。

<font size="-3">草間彌生展。</font>

2004-11-26 23:30:16 | アートなど
東京国立近代美術館で開催されている美術展「草間彌生:永遠の現在」をみてきました。
網目や水玉、密集した突起物などをモチーフにした絵画や立体作品、あるいは、鏡と電飾で永遠を演出したインスタレーション作品などで世界的に有名な現代アーティスト草間彌生の企画展です。
(この展覧会のことは、ざらえもんさまのblogで教えていただきました^^ 該当記事は→こちら
金曜のみ20時まで夜間開館しているので、出張の仕事が終わってからの観賞。
これが正解でした。
人もまばらで、体験型の作品もじっくり堪能できました(^^。
数々ある作品の中でとくに印象的だったのはやはり、鏡と電飾を利用した体験型のインスタレーション作品です。
「Infinity Mirrored Room -信濃の灯」「水上の螢」「天国への梯子」の3作はまさに永遠を具現化してみせた驚異の作品。不思議な美しさに満ちた世界が見る者を包み込みます。とりわけ「水上の螢」と「天国への梯子」の無限感はもう、たまりません。アート好きならずとも、不思議なモノ好きには一見の価値ありです。
これらの作品を見ながらふと、永遠への接近によって露見する物理的限界について考えました。
たとえば、理論的には、合わせ鏡の中には永遠が宿るはずです。しかし、鏡には必ず微細なゆがみがあります。このゆがみは、日常的にはまったく問題にならないくらい小さなものなので、ふつうならば気付きません。しかし、鏡と鏡の反射がくりかえされると、このほんの小さな歪みが反復によって増幅され、反射像はいつか必ず鏡のフレームからはずれてしまいます。ためしにちょっと合わせ鏡を覗いてみるとその歪みが体験できると思います。(小さい鏡だと鏡のなかの自分が邪魔になるので、もともと永遠に近付くのは難しいのですが(^^;。)わたしたちは、物理的限界のため、どうしても本当の永遠は実現できないのだなあ、と、特に「天国への梯子」を見ながら妙に感慨にふけってしまいました。
印象的だったことはまだあります。
黄色の地に黒の水玉模様があしらわれた作品をじ~っと見つめていると、黒いはずの水玉が藍色を帯びたグラデーションに見えてきました。これ、補色残像のせいなんですが、わかっていても何だか不思議に面白くて、何度もじ~っと見ては視線をずらし、じ~っと見ては・・・とくり返してしまいました(^^;。 視覚の不思議を味わった瞬間です。
そしてもうひとつ。
草間さんの絵画や立体作品に頻出するモチーフに、網目や水玉、そして突起物があります。これらは一見べつモノですが、よ~く見ていると、じつは互いに相関しあった同質のモチーフなのではないかという気がしてきました。水玉と網目は、よく考えれば背景と前景の反転であり、ネガポジの関係です。さらに、水玉と網目は突起物の集合を上から俯瞰したものに他なりません。水玉=網目に奥行きを与えたものが突起物なのではないか? と私的にはそう思えました。
美術研究的には突起物はファルス、つまり性的なモチーフとして分析されているようです。それはそれで正統的な解釈なのでしょう。しかし、私には、あの突起物の集合があるモノに見えて仕方がなかったのです。
腸の絨毛上皮、という言葉を御存知でしょうか。高校で生物を選択されたことのある方ならばおそらくピンときましたね(^^。
そう、小腸絨毛上皮。私には、草間さんの水玉=網目=突起物モチーフがこの絨毛に見えてしかたがなかったんです(^^;。
動物の小腸の内腔は、絨毛とよばれる細~いひだひだで埋め尽くされています。ひだひだがあるおかげで腸の表面積が増え、栄養分を効率良く吸収できるようになっているのです。
この絨毛を電子顕微鏡で拡大してみると、まさに突起物の集合。ゆらゆらうごめくひだひだの集団です。草間作品にそっくり(笑)!
もちろん、私が生物学を生業にしているための職業病的な見方である可能性は大です(^^;。
しかし、草間作品は生命、生体、ミクロコスモス、を描いている側面もあるのではないか、と、そのように強く感じた観賞でした。


この草間生彌展、題名を変えながら京都、広島、熊本、松本を巡回するそうです。
興味のある方は東京国立近代美術館HPで詳細をどうぞ。


東京国立近代美術館HPは→こちら



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2 コメント

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>箸にも棒にもうまい棒にもかからないなぁとつく... (aiwendil)
2004-12-04 18:35:45
>箸にも棒にもうまい棒にもかからないなぁとつくづく・・ヾ(´ε`;)ゝ

うまい棒(笑)!!!
その表現にうまい棒100本(^^!

やっぱり私も非日常的無限感が味わえるインスタレーション作品が好きみたいです。
来年の横浜トリエンナーレ2005が楽しみです。ざらえもんさまも機会がありましたら、ぜひ(^^。
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出張でいらしてたのですね。 (ざらえもん)
2004-11-27 20:21:12
出張でいらしてたのですね。
空いた時間に見られて何よりです。
aiwendilさんの文章を読んでいたらもう一度見たくなってしまいましたよ。
>草間さんの水玉=網目=突起物モチーフがこの絨毛に見えてしかたがなかったんです(^^;。
水玉=網目までは私も感じましたが突起物までとは・・・思い至りませんでしたねぇ。
言われてみれば、そうですよね。
あの一つのモチーフをあそこまで固執して発展させるパワーはすごいですよね。
しかし同じモノをみてもこの文章力の違いは・・・私のblogの文は箸にも棒にもうまい棒にもかからないなぁとつくづく・・ヾ(´ε`;)ゝ
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