はざまの庵

分類し難い存在を愛でる覚え書き by aiwendil お気軽にコメントをどうぞ。

<font size="-3">多摩美術大学情報美術科卒業製作展&現代美術館「転換期の作法」。</font>

2006-03-13 02:53:17 | アートなど
土曜は東京出張のついでに、美術展2つを観て参りました。
まず、横浜の赤レンガ倉庫1号館で3月10日(金)から12日(日)まで開催されていた多摩美術大学情報芸術科の卒業製作展。
先日の文化庁メディア芸術祭の会場でチラシをみかけて気になっていたもの。
(サイコロをモチーフにしたデザインがシンプルで非常に美しいのです。)
横浜在住の、大学時代からの友人を誘って行ってきました。
行ってみれば、規模の大きさに驚きました。
かなりの作品数です。
しかし卒業製作展とあって、まさに玉石混交。
荒削りなもの、企画倒れのもの、コンセプト勝ちのもの、アイデアは良いのに技術が追い付かないもの、ハイクオリティのもの、等々。
特に印象に残っているのは、前川峻志氏の「千篇書道」という作品。暗い中、スクリーンに映写されている画像に表示されたアドレスへメールを送ると、その文字が円の集積として美しく表示される作品です。
文字数制限によるエラーが頻発しており、技術的には課題があるものの、充分メディアアートとして世の中に通用する作品に思えました。これには友人も面白いと絶賛。アイデア勝ちだと思います。
そして、文化庁メディア芸術祭のアート部門でも優秀賞を受賞していた津島岳央氏の「メディアアートの寓意」。会場での調整に難航しているようでしたが、やはり群を抜いたクオリティが印象的でした。
映像作品もひととおり観てきたのですが、やはり『映像は難しい』ということを痛感させられました。
絵には力を入れていることが感じられましたが、いかんせん、音にまできちんと気を使っている例は少なく、映像表現における音の扱いの重要性を再認識しました。
こうやってみると、自ら『素人』と名乗っているコンドルズの作る映像はかなりのハイクオリティであることがうかがえます。妙なところで妙な認識を新たにした体験でした。
他にも、生徒のご家族とおぼしき方々が大勢いらしていたようで、普段接することの少ないメディアアートというものに触れ、戸惑いと好奇心の入り交じった感想を述べる方々の姿がこれまた印象的でした。


さて次に、木場にある東京都現代美術館で開催中の「転換期の作法~ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリーの現代美術~」展、ついでに「日本画アニュアル2005」展を観て参りました。
こちらは1人での観賞。
入館時にすでに16時を回っており、閉館の18時までに観られるかがわかりませんでした。
そこで、チケット販売所で聞いたところ、『両方で一時間くらいで観られます。』との話。それでも迷っていると、『中には30分くらいで出てくる方もいますよ。』とのダメ押し。それでわざわざ共通券を購入したわけなのですが、ところがどっこい。フタを開けてみれば、とても1時間なんかでは観られないほどボリュームたっぷりの展示でした。
おかげで、「日本画アニュアル2005」のほうは、15分ほどで駆け足観賞する羽目に。
しかも、片方の半券があれば、もう片方の展示は差額で観られる、と出口に表示されているではありませんか。
ならばわざわざはじめから共通券を買う必要はなかったわけです。
「転換期の作法」は、映像作品だけで3時間20分かかるらしく、事前に手続きをしておけば1回に限り再入場できるサービスを行っていました。
これはとても嬉しいサービスです。
ですが、それでチケット売り場の対応が正当化されるというものではありません。
『どうせ真剣に鑑賞する人間はいないだろう』とでもいわんばかりのチケット売り場の対応。
美術館でこれほど腹立たしい思いをしたのは初めてです。
チケット売り場の方は、もっと責任を持って正しい情報を提示して欲しいものです。
肝心の展覧会内容は、予想通りのクオリティでとても楽しめました。
東欧の現代美術センスは独特の個性を持っており、非常に面白いです。どこかユーモアの漂う作品が多く、とりわけ「アロゾ」というグループの映像作品には声を出して笑ってしまいました。
他にもINERという架空の工業製品シリーズ(肉体労働を再現するためのフィットネス機器)や、架空のバイオ植物シリーズ(完璧な栄養バランスの果実、人間の皮膚で共生する植物etc.)など、どこかラーメンズやNAMIKIBASHIの作品を思い起こさせる作品があってひとりでニヤニヤしてしまいました。
今回は時間がなく、映像作品はほとんど飛ばして観なければならなかったので、ぜひともリベンジを果たしたいです。
「日本画アニュアル2005」のほうは、近年活躍している若手日本画家6人の作品を集めた作品展。
日本画の枠を飛び越えるようなエネルギーと個性を持った作品群に圧倒されました。
じっくり観られなかったのが、ただただ残念でなりません。
なお、両展示とも会期は3月26日まで。
興味を持たれた方はどうぞお早めに。



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2 コメント

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行ってまいりました、東京都現代美術館。 ()
2006-03-18 23:37:22
行ってまいりました、東京都現代美術館。
maru鑑賞のための東京遠征でしたが、これはチャンスと、友人を巻き込んでしめしめと行って参りました。わたしも両方の展示を見てきました。
日本画のほうを優先して鑑賞したので、「転換期の作法」のほうは時間が全然足りず・・・。こちらの記事を読んでいましたので予想はしていましたが、本当映像作品だけで時間のかかることかかること。
後ろ髪を引かれる思いで美術館を後にしました。
しかし両者ともとても興めました!
「アゾロ」最高ですね。わたしもフフフと笑ってしまいました。いい空気をかもし出しておりましたね。全部の映像を見切れなかったのが心残りです。
「INER」は、我々も「ラーメンズ的なユーモアを感じるね」と言いつつ体感して参りました。ペンキ塗り、重かったです笑。
友人も喜んでおりました。aiwendil様のご紹介のおかげで、濃い一日を楽しめました(^^)
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>橘さま (aiwendil)
2006-03-23 22:28:49
>橘さま

おおっ、行かれましたか!
楽しまれたようで何よりです。

あの独特のユーモア。
私が気に入ったのはアゾロの「芸術家は何をしてもいいの?」「今、ここで」「すべてやられてしまった」などなど。あのとぼけて飄々とした空気が大好きです。特に「芸術家は~」で信号待ちで4人につられてしまう一般人男性の様子が可笑しくて可笑しくて、何度も観てしまいました(笑)。
INERSシリーズも、運搬用一輪車では体験しながら思わず『あはははは』と声を出して笑ってしまいましたよ。

文学の世界でも東欧出身の作家は独特のゆるぎない個性を持っていてけっこう好きなのですが、アートは盲点でした。観に行って良かったなと思います。
東欧、あなどれじ。

日本画 MOTアニュアル2006もすごかったですよね。
いずれも強い個性と力を持った絵ばかり。
なかでも私は屏風絵に圧倒されました。
有り体ですが、「こういうのを『才能』や『天才』って言うんだろうなあ」としみじみ感じました。

芸術の世界はいつも思わぬ驚きを与えてくれます。
世の芸術家に感謝。
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