はざまの庵

分類し難い存在を愛でる覚え書き by aiwendil お気軽にコメントをどうぞ。

東京遠征7/28。(東京藝大美術館「金刀比羅宮書院の美」、「歌川広重 名所江戸百景のすべて」、「素描

2007-07-29 00:37:02 | アートなど
昨日7月28日は、東京にて4つのギャラリーで8つの展示を観て参りました。
以下簡単に。

まずは、東京藝術大学美術館で企画展3つ。

「金刀比羅宮 書院の美 ? 応挙・若冲・岸岱 ?」
(情報は→こちら あるいは こちら )

こんぴらさんの愛称で親しまれる四国金刀比羅宮の書院襖絵を公開した企画展。
応挙や若冲の筆があると聞いて足を運びました。
内容は、円山応挙や伊藤若冲、岸岱らの筆による襖絵をメインに、金刀比羅宮をめぐる信仰習俗を紹介したもの。
やはり展示品が襖絵なだけあって、移動不可能な部分は複製画で対応。
若冲の花丸図は6割が複製でした。
若冲目当てで行くとがっかりしてしまうかもしれません。
しかしながら、それぞれの襖絵の部屋を再現しつつ、部屋の役割などがきっちり解説されており、やはりメインは金刀比羅宮の文化的価値に係る紹介なのだなと納得。
広報に問題があるような気がします。
個人的ヒットポイントをいくつか。
応挙の遊虎図の虎たちがユキヒョウのようにモコモコフワフワで微笑ましい。
岸岱の水辺柳樹白鷺図の凛とした美しさ。
若冲の花丸図。枯れや虫食いも込みで植物の持つ生命感。
頓田丹陵の富士巻狩図にパロミノの馬が描かれていて吃驚。
こんぴら狗のエピソードにほろり。
ところでわたくし、疲れている時に薄明かりの中でたまに見えないものが見えてしまったりするのですが、立ちくらみも手伝ってか、今回も若冲の花丸図の中に一瞬昆虫がうごめいているような幻を見てしまいました。それが妙にはまっていて、一人脳内で感心。花丸図には虫が似合いそうな気がします。
総じて良質の企画展。
文化財級の調度を惜しげも無く貸し出してくれた金刀比羅宮に拍手。
9月9日まで。

2つ目。
東京藝術大学創立120周年企画 芸大コレクション展「歌川広重《名所江戸百景》のすべて」
文字通り、歌川広重の浮世絵「名所江戸百景」を一堂に集めてしまった驚きの企画展。
「金刀比羅宮 書院の美」よりもある意味こちらのほうがボリューム満点だったかもしれません。
単品でならいくつか目にしたことはあっても、このようにまとめて見る機会はなかったので圧倒されました。
まとめて見てみると、構図の面白さ、秀逸さがよくわかってお得感倍増。
ゴッホやゴーギャンへ与えた影響を紹介するコーナーもあって非常に面白い。
現物が一同に会するのは滅多に無いことでしょうから、浮世絵好きはこの機会にぜひ。
こちらも9月9日まで。

3つ目。
東京藝術大学第二研究室「『素描展』?思索のなかで?
美術館隣りの陳列館2階での学内展示。
研究室の面々がそれぞれの制作活動の課程で残してきた素描を展示したもの。
ふつう我々鑑賞者の目に触れるのは最終的な作品のみだけれど、このように思索の跡が白日の下に晒されると、それもまた作家性を理解する縁となって非常に面白い。
わたくし個人的には川又聡氏の習作に一目惚れ。
馬と鶏に生命へのまなざしを感じました。
完成作をぜひ目にしてみたいものです。
こちらは会期短く31日(火)まで。
最終日は正午までなのでお早めに。


次に、銀座のギャラリー小柳で展示をひとつ。
須田悦弘展

須田氏に関しては、今年の1月13日、14日に行った金沢21世紀美術館で作品「雑草」を拝見して、そのつつましやかな展示方法と木彫の超絶技巧に心を奪われていたところ。
(須田氏については→こちら )
東京藝術大学美術館でみかけた展覧会情報誌で発見して、予定を変更してダッシュで足を運びました。
桜の葉、スミレ、ツツジ、朝顔、ハハコグサ、カタバミ、そして小さな雑草たち。
身近でつつましやか、それでいて美しい植物たちを模した精密な木彫作品は、いくら間近で見ても本物と見紛うばかり。
単に精密さを求めているわけではなく、生命そのものへのまなざしを感じるのが素晴らしい。
技術と視点と手法と理念が見事に一体化した作品群だと思います。
これからも注目してゆきたいアーティストです。
残念ながら会期は今日で終了。
そのかわり、京都のアサヒビール大山崎山荘美術館 の企画展 で9月17日まで作品が展示されているようですので、興味のある方はぜひ。


次いで、目黒区美術館でひとつ。
線の迷宮<ラビリンス>II - 鉛筆と黒鉛の旋律
鉛筆や黒鉛など、白と黒を基調としたシンプルな画材で表現を追求している作家10名の作品を一同に集めた企画展。
ボリューム、質ともに大変素晴らしい内容。期待以上でした。
同じ鉛筆等を使いながらも、これだけ技法と表現に個性が生じるという事実。
10もの作家世界はどれも濃密。圧巻です。
絵画好きと現代美術好きにはおすすめ。

有名どころの作品で客寄せするのではなく、こういった良質の企画展を次々と打ち出す目黒区美術館。
今、私の中で注目度ナンバーワンの美術館かもしれません。
(前回は「原マスミ大全集!」。ちなみに次回予定は「馬と近代美術」!!)
今後もぜひともがんばって運営していってほしいものです。


最後に、東京オペラシティアートギャラリーで3つ。

まず、「メルティング・ポイント
ジム・ランビー、渋谷清道、エルネスト・ネト、の3氏作品を集めた企画展。
オペラシティアートギャラリーの企画展にしては作品数は少なめ。
三者三様の作風が面白いけれど、行き慣れているとちょっと物足りないかもしれません。
ネトの作品にはいつも生物膜を連想するのですが、今回の作品もその例に漏れず。
骨内部の構造体や、細胞膜のモジュール構造を彷彿とさせる造形がやはり興味深い。
丸亀市猪熊玄一郎現代美術館  での個展へはぜひ行ってみたいところ。

次に、「[収蔵品展]いのちの宿るところ」
オペラシティアートギャラリーの収蔵品を、会期ごとにテーマを定めて展示したもの。
たまに、企画展よりもこちらの収蔵品展のほうがとんでもなく充実していたりするので侮れない。
今回も、私個人的にはこちらの「いのちの宿るところ」のほうが大ヒット。
殊に竹内浩一氏の動物画には、激しく心を奪われました。
具象でありながら理想化され抽象化された動物たち。
驢馬の穏やかな表情はさながら宗教画のよう。
ほぼ原寸大の重種馬を描いた「遠ざかる音」は圧倒的な存在感。
静謐な空気の中に佇む馬体はどこか神々しさを感じさせるような気がして、しばらくぼうっと魅入ってしまいました。
奥山民枝氏の光を扱った絵画群も目が釘付け。
具象と抽象のあわい。
それでいて光の特性を実に的確に描き出している様子はさながら物理の世界を見ているようで、妙に感心しきってしまいました。
他にも濃~い絵画が盛りだくさん。
なかなかのおすすめです。

最後に、「[project N]田尾創樹 展」
若手作家への支援として位置付けられた展示。
田尾創樹氏は初見でしたが、その圧倒的な諧謔性とメタ的視点に度肝を抜かれました。
どこまでが本気なのかよくわかない上、好悪の分かれそうな作風。
苦労も多そうですがぜひとも突っ走っていただきたいものです。


今日は思わぬ出会いがあったりと、ずいぶん盛りだくさんの一日でした。
晴天に感謝。


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