はざまの庵

分類し難い存在を愛でる覚え書き by aiwendil お気軽にコメントをどうぞ。

横浜遠征5/10。(東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻3期生「OPEN STUDIO MAY 2008」)

2008-05-22 23:56:55 | アートなど
もう10日以上も経ってしまいましたが、5月10日(土)は、横浜で展示をひとつ観て参りました。

観てきたのは、一昨年から私が個人的に注目している東京藝術大学大学院映像研究科のメディア映像専攻において定期的に開催されている「OPEN STUDIO」という催しです。大学院の校舎をそのまま展示スペースとして講義課題の概要や学生さんたちの作品を紹介した、言わば展覧会兼ラボ公開のようなもの。
今回は、この春入学したばかりの第3期生が展示・運営する初のイベントで、「OPEN STUDIO MAY 2008」と銘打たれています。
3週間のあいだに演習で作成した課題作品15作が展示されており、主に藤幡正樹氏の授業と、外部講師として招かれたジャン=ルイ・ボワシエ氏およびジャン=シャルル・フィトゥーシ氏の特別講義におけるワークショプ作品が主体となっていました。
グループワークの成果としての作品が多くを占め、ほとんどが独立した「作品」というより、あくまで「習作」といった位置づけであるため、作家性が汲み取れるような作品は見当たらなかったものの、かすかな現象から思わぬ面白さを抽出する意識の方向性は期待どおりのもので、たいへん興味深く拝見しました。また、強烈な個性こそ備わっていないものの、展示作品たちのその完成度の高さには非常に驚かされました。
第3期生の最初期の作品を拝見したわけなのですが、今回提示されていた各個の表現の中の問題意識が今後どのように個人の表現として進化・発露してゆくのかがとても楽しみです。
以下、作品毎の解釈覚え書きメモおよび短評雑感。
(とりあえず半分だけ。少しづつ書き足します)

写真課題
1 深石圭祐氏『自分』: 写真。二人組になって、相手を通して「自己」を表現するという課題の成果。首、側頭部、頭頂部など人物の一部を大写しでフレームカットし、そのパネルを恣意的に配置した作品。個というとらえ難い概念をアウトプットすることの難しさをうかがわせながら、イメージ的な訴求力をそなえているのが印象的。
2 荒木悠氏『Moving Stills』: 静止画を連ねた動画。男性の顔の中央を丸い鏡が隠している。鏡を持つ手や男性の頭部は不随意的に少しづつ位置を変えてゆくが、鏡の位置だけが変わらず定位置を保つ。

ジャン=ルイ・ボワシエ ワークショップ課題
3 細谷宏昌氏『tease』:インタラクティブ作品。モニタに写し出された黒い画像の中に、かすかに白い部分がある。マウスポインタでその部分を長押しすると、ほのかに赤らんで、さらにぱっと明るくなり、今まで見えていたものは大型電灯の芯であったことが知れる、というもの。ガス台やストーブの点火を彷彿とさせる動作関連性が面白い。
4 田村友一郎氏『冷静と情熱のあいだ』:インタラクティブ作品。モニタに、「びんのフタを開けようとして開けない」「練り歯磨き粉チューブから歯ブラシにペーストを出そうとして出さない」等、何らかの動作をしつつ完遂できない手作業の映像が繰り返し現れる。その画面中、行為の目的を担う核とおぼしき部分をマウスポインタで触れると、動作の未遂と完遂を分かつターニングポイントで小刻みに動画がループする。また、いっぽうで、インタラクティブを装いつつ何ら操作が及ばない映像も混じっている。操作性と面白さの焦点と意識の誘導を問題意識として内包いるようで興味深い。
5 渡邉一史氏『Untitled』:インタラクティブ作品。モニタに白い画面が流れており、壁の傷のような細かいまだら模様がついている。流れてゆく画面をじっと見ていると、模様が次第に形を帯びて具象の風景画となってゆく。マウスポインタで画面に触れると流れる画像の速度が変化する、という作品。無意味から意味を担う具象への移行が面白い。また、画像の元となった素材実物(漆喰にスクラッチングしたもの?)がとなりに展示してあるのも面白い。
6 内村真以子氏『pom』:インタラクティブ作品。海を背景にし、メラミン樹脂の白いスポンジを揉みながら保持する手の映像が流れており、デフォルトではスポンジを揉む手は小刻みにリピートしている。マウスを動かすと、モニタ下部にあるポインタを動かすことができるが、常に一定の速度で下へ向かうようになっており、結局は自然に下へ落ちてしまう。落ちてゆくポインタがちょうど映像の上にかかっている間だけスポンジを揉むサイクルがゆっくりになる。個人的にとても好きな作品。ゆっくりになったスポンジの動きと落下するポインタの速度が同期しているのが面白い。さながら呼吸する生物のように感じられるから不思議。

(以下休筆。のちほど書き足します。)



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2 コメント

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素敵なブログサイトですね。 (Unknown)
2008-07-10 23:01:52
素敵なブログサイトですね。

私もオープンスタジオ行ってきました。
おっしゃるように皆さんの萌芽を感じる部分もありましたが、あえて辛口で言わせていただければ、どの作品も私に驚きや感動を与えてはくれませんでした。課題発表という位置づけだからかもしれませんが。もちろん私は彼ら/彼女らのように作品を作ることはできませんが。正直、今手にしている技術を駆使したという印象が強く、それ以上のものは感じられなかったというのが感想です。どの作品もお行儀がよい印象でした。おそらく皆さん、ものすごい時間をかけて準備されたのだと思いますが、時間をかけすぎて、グループワークにおいては議論しすぎて逆に作品がちっちゃく、丸くなっちゃった?って印象です。もっと大胆なものを観たかったです。少しでも、それぞれの学生さんたちの直感を観たかったなです。
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私はこのopen studioには行けませんでした。が、学... (ゆき)
2008-07-24 14:48:53
私はこのopen studioには行けませんでした。が、学生さんの一人を知っている関係で、その人の作品を見せてもらったことがあります。

大学院に入学したばかりとは言え、製作の苦悩を感じたものの、面白い切り口でした。

才能がどのように開花するのか、今後を楽しみにしています。
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