はざまの庵

分類し難い存在を愛でる覚え書き by aiwendil お気軽にコメントをどうぞ。

<font size="-3">キメラマウスでメス由来精子が発生?</font>

2005-03-01 22:20:44 | 科学など
Yahooニュースからの引用。
雌雄細胞のキメラマウス精巣内で、メス由来の精粗細胞と卵細胞がともに形成されることを、大阪大学の岡部氏が発表したそうです。
ソースは→こちら
元論文が掲載されるはずのPNAS 3月1日号電子版がまだ閲覧できないので、あくまで「精粗細胞」なのか本当に「精子細胞」まで分化しているのかまではわかりません。
もし本当に精子形成されているのだとすると、オス由来細胞のシグナルによってメス由来細胞が完全に雄性生殖細胞として機能するほどに分化し得たということになります。
つまり、「母親由来の精子」というシロモノをつくることが論理的には可能になるわけです。
が、いっぽうで、その、オス由来細胞のシグナルが充満した環境下で、なぜ卵細胞が無事発生し得たのか、ということもとても気になります。
いままでの性分化に関する知見の常識でいえば、オスの細胞が混ざっていた時点でその個体の生殖腺は精巣になり、その後の分化カスケードにともなってオス個体が形成される、と考えるのがふつうです。
キメラといえども正常オスの遺伝子を持った個体の生殖腺に卵細胞が発生したことのほうが、じつはすごいことなのではないかと思えます。
もしも遺伝子以外の外的要因(物質)によって卵精巣が形成されたのだとしたら、哺乳類でははじめての例になるのではないでしょうか。
とてもエキサイティングです。
・・・・・まあ、ソースはあくまでマスコミ記事ですので、元論文を読んでがっかり・・・ということも十分ありえるのですが(^^;。
いずれにせよ、元論文を読むのがとても楽しみです。



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4 コメント

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それはなんとも興味深い論文ですね! (uzura)
2005-03-02 01:47:00
それはなんとも興味深い論文ですね!
そのキメラマウスは外部生殖器は完全な雄性なのでしょうか?また、下垂体等の生殖腺軸からのホルモン分泌などはどうなっていたのでしょうか?全く不思議です。
ところで哺乳類以外では例があるというのを知らなかったのですが、たとえば魚類などで性転換がおこる場合などのことでなんでしょうか?
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>うずらさま (aiwendil)
2005-03-03 21:43:52
>うずらさま
魚類や両生類の生殖腺はけっこういいかげん(?)でして、ホルモン感作によって比較的簡単に卵巣になったり精巣になったりしてしまうんですよ。
いっぽうで、哺乳類の性腺が外部からのホルモン感作によって分化異常を起こしたという例は報告がありません。
(もしそういう例がみつかったらもうそれだけでどえらいことです。「Nature」一発採用! ぐらいの大事件。)
いやしかし、そもそも同じ原形を部材流用して「オス」と「メス」に形作るという無茶をしているわけですから、むしろ哺乳類は、性別固定が厳格すぎるという意味では生物の中でも相当の変わり者なんじゃないかという気もします。
結局のところ、哺乳類の性分化機構はまだ謎も多く、解明されていない部分だらけなんですよね。
SRY遺伝子が発見されたときは、「これで性分化の謎は決着した!」と、世界中の研究者がぬか喜びをしたはず(笑)ですが、その後、SRYだけがすべてではないとわかってきましたし・・・。
思えば、SRY遺伝子が同定され(Sinclar, et al.)、SRYノックアウトマウスがXY メスになることでSRYが精巣決定因子であると証明され(Koopman, et al.)たのが1991年。
まだ14年しか経っていないんですねぇ・・・(しみじみ)。
この14年の間にWT-1やら、Sox9やら、DAX-1やら、Ad4BP/SF-1やらなにやら、いろいろな因子が発見されてきましたが、それでもまだSRY以降の分化シグナルカスケードがすっかり解明されたわけではないのです。
性腺の分化だけでもこんなですから、脳の性分化にいたってはなにをやいわんや。
未だ混沌状態。
だからこそ面白い、とも言えるわけですが(笑)。

それにしても、PNASの元論文がみつからない!
Early Edition で出てこないとなると、紙出版まであと数週間待たねばならないということなんでしょうか。
PubMedで引っぱっても出てきませんし。
早く詳細が知りたい!
う~ん、生殺し状態です・・・・。
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哺乳類は、胎生を獲得した時点で性別固定が厳格に... (uzura)
2005-03-04 01:13:47
哺乳類は、胎生を獲得した時点で性別固定が厳格になる必要があったのかもしれませんね。妊娠中に性腺がおいそれと変化するようでは大変ですから…そして妊娠という、個体の体内で別な個体の発生が進み、お互いに影響し合うという仕組みが、ほかに比べて性分化を複雑にさせる要因でもあるのでしょうか。

性分化どころか、胎盤の仕組みやなにやら、生殖・発生分野は解明されていないことだらけですね。そして知識はなくても、肉体は知っているというのがなんとも不思議な気がします。
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>うずらさま (aiwendil)
2005-03-05 23:34:04
>うずらさま
まだ元文献は拾えていません(TT)。
abstractも出ていないなんて、どないなっとんねん、と関西モードになってしまう今日このごろ。

母体の豊富なホルモン環境下で正常に分化する必要性があった・・・たしかにそれは性別固定厳格化にとっての大きな必然性ですね。

>性分化どころか、胎盤の仕組みやなにやら、生殖・発生分野は解明されていないことだらけですね。そして知識はなくても、肉体は知っているというのがなんとも不思議な気がします。

同感です。
ツキノワグマの着床遅延のことをはじめて聞いた時には正直「嘘だ~」と思いましたし(だって、杯盤胞状態で3か月も子宮内を浮遊しているなんて!)、母体と胎児間でのステロイド代謝のことを知った時も驚きを禁じ得ませんでした(笑)。
母体性腺-母体副腎-胎盤-胎児副腎-胎児性腺・・・この複雑な絡み合いたるや。しかも動物種ごとに機構が違うときている。
個別の細部は違うけれど、総体で考えた時のおおまかな「しくみ」はきちんと果たされている、という、このことが一番の驚異なのかもしれませんね。
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