はざまの庵

分類し難い存在を愛でる覚え書き by aiwendil お気軽にコメントをどうぞ。

<font size="-3">イメージの庭vol.2「脳の中の鼓動」3日目。</font>

2006-02-12 23:57:13 | アートなど
今日12日(日)も昨日に引き続き、せんだいメディアテークで開催中のショートフィルム上映会、イメージの庭vol.2「脳の中の鼓動」へ行って参りました。
第3日目の本日は、プログラムC(貫井勇志「血族」)、プログラムD(前田真二郎「日々"hibi" 13 full moons」)、プログラムE(池田泰敦「7×7」)、そして小島淳二氏と谷篤氏ご本人方を迎えたプログラムA(teevee graphics)、計4本の上映でした。
私はプログラムDから最後までの3本を見て参りました。
人の入りとしては、昨日と同じくらいでしたでしょうか。しかし、やはり小島氏と谷氏を迎えたプログラムAは開場前に行列ができていたほどで、たいへんなにぎわいでした。
残り日程は明日13日(月)のプログラムE、D、F のみ。興めた方はラストチャンスですのでお見逃しなく。


なお、詳細はせんだいメディアテークHP→こちら をどうぞ。

今回印象深かったのは、フロアで3人の作家さんとお話できたことです。
以下、メモ程度にプログラムの個人的感想とフロアでのできごとを。


・プログラムD 前田真二郎「日々"hibi" 13 full moons」
 2004年の1月1日から12月31日までの、毎日15秒間の映像をつないだ作品。映像を撮影する時間は月の運行にしたがって規則的に決定されている。よって、切り取られる映像は毎日1時間ほど後ろへズレてゆく。月の一巡りごとに英文タイプのようなテロップが出て、時系列の現在位置を示す。そして、12月31日まで辿り着いたところで、今度は一挙に映像が巻き戻される。
 システマチックに並ぶ映像は、いっけんランダムだけれど、時間の規則性のため不思議なリズム感と一体感を醸し出していたように感じます。究極のドキュメンタリーであり、かつ、科学の実験をしているかのようなストイック性もあり、かつ、どこか詩的。96分間もあるのに、不思議と飽きることはありませんでした。
いちばん印象的だったのが最後の巻き戻し。たった15秒、しかも366シーンもあるのに、巻き戻しの一瞬一瞬でぱっと『あのシーンだ!』とわかる。13昼夜に圧縮された時間。とてつもなく美しく感じられました。
 ちなみにこの作品、撮影現場の多くが岐阜(大垣)だったので、岐阜大学出身のわたくし、のけぞりました(笑)。まさかこんなところで岐阜の風景を見ることになろうとは、びっくりです。十六銀行が懐かしい・・・。
・プログラムE 池田泰敦「7×7」(セブン・バイ・セブン)
 1日49秒の映像を49日間づつ繋いだ作品。撮影するのは任意の49秒。さらに儀式のように、7日ごとにひとつ、左耳にピアスを入れてゆく。1日1日を区切る日付けのテロップ。淡々と増えてゆく数字。そして49日目。洞窟から静かな破壊が映し出される。
 奇しくも「日々」と類似のコンセプトで作られた作品です。しかし、方向性としては180°違った手法が採用されていたように思います。「日々」が決められた時間帯を撮影していたのに対し、こちらは撮影する時間帯はとくに決まっていません。よって、より恣意的な選択性がはたらくので、撮影者の主観や人間性・個人性がよりクローズアップされたものになっていたように感じられました。作中で印象的だったのが、駐車場の収納式ポールを引っぱり出して遊ぶ子供の姿、不審そうにチラチラこちらを見る警察官、誰かの遺影。
 49日という数字と遺影、そして最後の映像から、私は何となくこの作品は弔いなのではないか、と感じました。
 さて、この池田氏、じつは終日上映会に参加されていたようです。上映後に学芸員さんが池田氏を紹介し、『今日はずっとこちらにいますので、質問のある方は直接聞いてみてください』とおっしゃいました。
そこでわたくし、帰りぎわにフロアでお見かけした際に作品に関する質問をしてみましたところ、とても丁寧に応えていただけました。
まず、『あれは弔いなのですか?』との私の疑問に『弔いはひとつの要素ではあるが、作品そのものを弔いのために作ったわけではない』との答え。
他にもいろいろと有意義な対話をさせていただきましたが、興味深かったのが、プログラムDとの偶然の関連性を教えていただいたこと。Dの前田氏の作品「日々」は前述のとおり2004年の1月1日から12月31日までの毎日15秒間をつないだ作品。いっぽう「7×7」は49日間を毎日49秒づつつないだ作品。じつは「7×7」では2004年の1月1日がラストシーンの日付だったそうで、池田氏曰く『今日あのふたつの作品をご覧になった方は、2003年の11月からはじまる414日間をつづけて見たことになるんですよね。僕も前田さんの作品は今回はじめて見たので面白いなあと思って。』とのこと。それを聞いて私も妙に感慨深かったです。
池田氏は『コンテを書いてきっちりシナリオを作ってから撮る映像も面白いけれど、まだ起こることがわかっていなくてこれから起こる面白いことを集めたら面白いんじゃないかと思って。でも、そういうことってあまりやられていないのでこういうのを作ってみました』ともおっしゃっていました。
たしかに、今回の作品のおかげで、パーソナルなインタレストを繋ぐと独特の面白さが生まれるのだと気付きました。個人と普遍をつなぐ掛け橋のようで非常に興味深いです。
さて、池田氏にお礼を込めてちょっと宣伝。ご本人に聞いた話なのですが、池田氏は今年の4月にSOL CHORDというDVDレーベルから個人作品をリリースするそうです。『ひとりで部屋で見たら面白いんじゃないかなっていう作品です』とのことですので、興味のある方はお求めになってはいかがでしょう。
SOL CHORDのサイトは→こちら


・プログラムA teevee graphics (ゲスト 小島淳二氏と谷篤氏の解説つき)
 11日と同様の上映内容でしたが、学芸員の大原氏とゲストの小島淳二氏&谷篤氏の解説つき。
 ジャンルカテゴリーごとに上映し、まとめてコメントを加える形式でした。
 昨日は面倒でサボったので今回はきちんと上映作品を列挙してみます。
 【テレビコマーシャル】 DoCoMo「iD」、canon「技術広告」、KIRIN「豊潤」、KDDI「INFOBAR」、globe「FREEDOM」、資生堂「dプログラム」、CCJC「シノア」
 【ミュージックビデオ】 砂原良徳「LOVE BEAT」、audio active「PSYCOBUDS」、BENNIE K「Dreamland」、RIP SLYME「UNDER THE SUN」、FPM「Tell Me」、YUKI「The end of shite」、KEN ISHII「Strobe Enhanced」、L'Arc~en~ciel「叙情詩」
 【テレビオープニング】 TBS金曜ドラマ「QUIZ」、日本テレビ「ナイナイサイズ」
 【ショートフィルム】 「Sleeper's Rag」、「Voices」、「The Japanese Tradition -Dogeza-」、「Buisiness Card」、「Bath Jack」、「Sakura Wonderful Jet」
 なんだかお二人とも少しお疲れのご様子でした。特に谷氏。徹夜明けなのでしょうか、元々シャイでもの静かな若者なのかな、という印象の方ではありますが、それだけではなさそうなほど無口でらっしゃいました。昨日の児玉氏などと比較しても、かなり言葉少なだったように思いますが、ひょっとすると学芸員さんの司会に左右される部分もあったかもしれません。
 谷氏の言葉で印象的だったのが、クリエイターを目指す若者に向けた『好きなことをとことん突き詰めてやるのがいいんじゃないでしょうか』というメッセージ。
 『これをこうやったらきっと面白いのになんで誰もやらないんだろう?』ということを真摯にやっている方が、やはりその道で注目されるクリエイターになるのだなあと感じました。
 なお、NAMIKIBASHIではJapanese Tradition シリーズ新作を発表予定だそうです。タイトルはまだ秘密とのこと。発表媒体もまだメドがたっていないので公表待ちになる模様ですが、楽しみですね。
 ところでわたくし、NAMIKIBASHI作品も好きなのですが、どうやら『砂原良徳「LOVE BEAT」』や『KEN ISHII「Strobe Enhanced」』のような映像のほうがむしろ好きだと気付きました。いや、「VIDEO VICTIM」を購入したときから薄々感じてはいたのです。が、今回それが確信に変わりました(笑)。幾何学的な形が音とシンクロする、その動きがもう、何度見てもクラクラきてしまいます。そのクラクラ感がミュージックビデオだと特に顕著なのです。そしてじつは、これらの動きを担当していたのが谷篤氏なのだそうで、谷氏の仕事にもこれから個人的に目が離せなくなってしまいそうです。今まであまり意識していなかっただけに恥じ入りつつも「VIDEO VICTIM」の担当欄をさっそく確認してみようと心に誓いました。
 ところで、上映後にフロアがミニサイン会のようになっていたので、機に乗じてお二人のサインをいただき、念のため持っていったNAMIKIBASHIハンコ(ブリッジ型)を小島氏にお渡ししました。今になって「あれも聞けば良かった、これも聞けば良かった」という質問事項がいろいろ浮かんで歯がみしていますが、とりあえずハンコをお渡しできたので満足です。
 なお、谷氏によれば「iD」の手は手タレさんの手だそうです(笑)。
 上映会の模様はまた改めて。とりあえず、今日はここまで。



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7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
詳細なご報告、ありがとうございます。 (あきあかね)
2006-02-13 23:44:56
詳細なご報告、ありがとうございます。

「iD」の手は手タレさんの手…何だかすっきりいたしました。
賢太郎さんの手ではないかしらという噂もあって、
でも、ペンの持ち方にとても特徴がありますよね、彼は。
人差し指と中指の両方が揃ってペンの上に乗ってしまう。
中指を曲げてペンを支えるという、
小学校で正しい鉛筆の持ち方として教わったものじゃないと記憶していましたので、
あれは違うんじゃないかなぁ。自信はないけれど、密かに思っておりました。
うーーーん、気持スッキリ!

マニアックなところに食いついて、すみませーん。
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そうですか…賢太郎さんの手じゃないのか…はぁ~~... (ume)
2006-02-14 10:39:54
そうですか…賢太郎さんの手じゃないのか…はぁ~~(←何がそんなに残念なんだよ!(笑))
どういう経緯で「iDの手」という話題が出てきたのかが興めます。だれか質問でもしたのかしら?
返信する
ごめんなさい、ごめんなさい。。。 (あきあかね)
2006-02-14 18:40:38
ごめんなさい、ごめんなさい。。。
残念のため息…はぁ~~。
スッキリとか言ってしまったm(__)m

そうでした、umeさんのブログでも、この予想、読んだのでした。他のサイトでも2,3箇所で話題になっていて。
ペンの持ち方なんて、「こう持ってください。」って要請されれば難なくできてしまいそうな魔法の手を持っているお方なので、もしかすると賢太郎さんの手なのかなぁ。とも思っていました。

そうですねぇ、どんな話の流れからそんな話題に?aiwendilさん、教えていただけますか?
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>あきあかねさま、umeさま (aiwendil)
2006-02-14 20:42:33
>あきあかねさま、umeさま

あはは、食い付いてらっしゃいますね~(笑)。
手のことは、谷氏にサインをいただいた時、どさくさにまぎれて聞いてみました(^^;。
『iDに出てくる手はどなたの手なんですか?』
『ん?ああ、あれは手タレさんですね。』
こんな具合であっさりと。
ちなみに、谷氏の作る映像の動きが大好きだと伝えると、少し意外そうに『ありがとうございます?』と(笑)。
谷氏は、細身で子鹿のような雰囲気の若者でらっしゃいました。サインによれば肩書きはanimatorだそうです。
ずいぶんとお疲れの表情だったのが気になりましたが、お身体に気を付けて素晴らしい作品を生み出しつづけて欲しいものです。
がんばれ~。

そういえば、谷氏担当の映像を知りたくて作業分担を聞いたところ、『うちはみんな全部一通りのことができるので、誰が何を担当というのは決まってないです。作品ごとの作業担当はホームページを見ればたいていわかると思います。』だそうで、さらりと出たその言葉にteevee graphicsという集団の凄さを実感いたしました。
小島氏は人材育成にも秀でてらっしゃるようですね。

ところでumeさま、都こんぶはどなたに支払えばいいのでしょうね(笑)?
気になります。
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その勇気ある質問をされたのはaiwendilさんでした... (ume)
2006-02-15 00:31:36
その勇気ある質問をされたのはaiwendilさんでしたか・・・ご立派です。
都こんぶはざらえもんさんに。佐藤雅彦氏対談のときにでも(笑。
ただいま裏番長のおやつ部屋では視聴覚室にて反省会を開催中です(^^)

小島監督は大きい人だと私もお話を聞いて感じました。
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aiwendilさん、 (あきあかね)
2006-02-15 10:40:49
aiwendilさん、

お答えいただいて恐縮です。
そうですか、サインをいただくときにさりげなく質問…ですか。すばらしい!
返信する
>umeさま (aiwendil)
2006-02-18 18:41:22
>umeさま

うへへ、聞いてしまいましたよ(^^;。
そして、佐藤雅彦氏の対談参加予定がしっかりバレてますね~(笑)。
ええぜひに、東北産の都こんぶをお持ちしたいと思います。
反省会にものちほど顔を出しますね~。


>あきあかねさま

あまりさりげなくなかったかもしれませんが、とにかく聞けてすっきりしました(笑)。
広告紙などに載る時は、teevee graphicsと小島淳二氏の名前は出るのですが、谷氏の名前は出て来ないので、今回の気付きは大きな収穫でした(^^。
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