年末になると、田舎の母から切り餅と一緒に“餡入りの芋餅”を送ってくれた。
芋餅は故郷の味であり、忘れられない母の味でもある。
10年前、いつも送ってもらう芋餅の作り方を教えて貰おう!と
年末近くになって、急に思いついて電話した。
勤めていた私が正月休みに帰るのを、材料を揃えて待っていてくれ、
手伝いながら作り方を教えて貰った。
まさか、その年の夏に母がなくなるとは思ってもいなかった。
芋餅は母に教えて貰った最後の母の味になってしまった。
作り方は教えて貰ったが、芋と餅粉の分量など、詳しい事は聞いていなかった。
次の年も、その次の年も、そしてそれから10年、
母の芋餅の味を追い求めながら、父と二人で、失敗しながら作り続けてきた。
兄弟たちは、もう要らないというが分量を半分にして、今年も作った。
材料は、徳島の鳴門金時、餅粉と上新粉
さつまいもは皮をむき、火が通りやすく薄く切って、
水にさらして灰汁を抜く。
蒸し器に入れ、やわらかくなるまで蒸す。
この蒸し器も、母がずっと使っていたもの。
蒸し上がると、芋に餅粉と上新粉を混ぜ、
砂糖と塩を加え潰す。
芋と粉が良く混ざって、しっとりしてきたら掌で軽く握り
餅つき機の中に隙間を空けながら、入れていく。
餅つき機のスイッチを入れ蒸し、つく。
この餅つき機も、母が使っていたもの。
一番に母の仏壇にお供えをした。
お母さん、今年の出来はどうですか?
まだまだ、合格点は貰えそうにないようだ。
芋餅は徳島の家庭では、自分たちの作り方や分量が有って
それぞれの家で、その家の味が有るのです。
ショウガの入った四角い切り餅の芋餅を頂いたことも有ります。