ここ数日の急激な冷え込みと強風で、道路の木々は葉を落とし、
公園の紅葉も色褪せ、数日前までの美しさを失なってしまった。
寒がりの私は、寒いときは家に引きこもりと決めている。
そんな事で、この数日は久しぶりにハンカチを出して染めていた。
「花咲絞り染」
冬には似つかない名前だが、少しは暖かくなりそうな名前でしょう。
簡単に染め方を紹介します。
ハンカチを2色のグラデーションに染める。
シリアス染料を使用したので、色止めと蒸しの処理をしておく。
6等分に屏風たたみに折る。
両側から不織布あて、輪ゴムをかける。
輪ゴムのかけ方で、模様の出方が違ってくるのも面白い。
スレン染料で染める。
以上、文字にすると簡単
だが、結構コツが必要な染め方で、
簡単なのに、手こずった。
なんでもそうだが、自分のものにするには、それなりの失敗や苦労が必要で、
特に、染めのような経験が必要なものは、簡単に真似できるものでもない。
まだまだ、失敗をしないと、自分らしいいい作品にはならないようだ。
15年間、この駅で降り、この駅から電車に乗っていた。
19年前の震災で、会社は倒壊し、勤めていた会社は無くなり、
この駅に降りる事も無くなった。
久しぶりに降りた、香枦園の駅舎は、新しく建て替えられ、
街並みも、昔とはすっかり様子が違っている。
それでも、この駅に降りると、19年前の昔を思い出し、
少々感傷的になってしまう。
通勤時には、春になると、ここから満開の桜が見られた。
香枦園駅は、夙川の川の上にあり、桜は川の両側から水面に覆い被さるように咲いた。
その桜が、秋になると、真っ赤に葉を染め、春とは違う景色を見せてくれる。
今日は、昔の同僚と待ち合わせ、久しぶりに夙川沿いの遊歩道を紅葉を見ながら歩いた。
2~3日前の寒さも和らぎ、平年並みの暖かさが戻り、
ぶらぶら歩くのには絶好の天気となった。
なんて運が良いのだろう!
それはお天気だけではなく、今が見頃の紅葉に会えた。
真っ赤な紅葉は、秋晴れの青い空に一層、鮮やかに燃え上がり、
川沿いの紅葉は、赤や黄色の葉を水面に落とし、
そこにも色鮮やかな絵を書いた。
久しぶりの気の置けない同僚との再会に、穏やかな日差しも有って、
私は、昔より饒舌になっていた。
あの頃のように若くは無い。
話題は、もっぱら健康の事と、孫の事。
香枦園から苦楽園まで歩いた。
まだ、口と同じくらい足も元気だった。
2週間ぶりに帰ってくると、我が家の周りも、すっかり秋色に染まっていた。
ベランダから見える公園の桜の木は、真っ赤に色づき、
ほかの木々の中でも、一際目立って見える。
道路のイチョウの木は、黄色い帽子を着て道の両脇に並んで立っている。
その道を辿ると、海が見える。
久しぶりの海も空も、穏やかな顔をして「お帰り」と迎えてくれるのが嬉しい!
気温は一気に下がり、ベランダのモーニングタイムは無理になったが、
暖かい日差しの日は、まだランチタイムと、ここからの景色を、惜しみながら楽しんでいる。
島根のフクロウの楊枝入れは、
完璧なスケジュールを組んで、田舎に持ち帰ったが、
結局、スケジュール通りには行かなかった。(いつもの事だけどね)
お腹の部分の彫りは、帰り際になって焦って彫ったが、
サンドペーパーは帰って来てからの仕事になった。
一昨日は、下塗りをして、昨日は、ニスを2回塗り、
今日は3回目のニスを塗って仕上げた。
これで、気になっていた宿題が一つ片付いた。(バンザーイ)
これは、クリスマスのプレゼント用に制作を依頼されたものだが、
今年も後40日余りになっている。
速いなぁ~~~
歳を取ると、1年が速いと言うが、やっぱりそうだなぁ~~
実感!実感!
8:05分の高松行きの高速バスに乗り、高速志度で下車、
タクシーに乗り、石の民俗資料館に着いたのは、11時前。
私達も出展している“佐竹藍月と素敵な会員たち”の展示会に、
HMさんと二人で出かけた。
雨が降るとの予報に用意した折りたたみの傘も、
冷え込みを恐れて厚着した事も、無駄に思えるような、
暖かいお天気になった。
会場の準備から、受付まで佐竹先生の生徒さんに任せきっりで、
何もお手伝いをせず、
期間中に、1回行くだけでは、非常に肩身が狭い
少し、気兼ねしながら、挨拶を交わした。
今年は、佐竹藍月先生の“染色40周年記念展”も
ロビーに併設されている。
先生の初期の着物から、最近制作された着物まで、数十点と、
ソプラノ歌手の娘さんの華やかな舞台ドレスが、展示されていて、
40年間の先生の作品を1度に見られるのは、大いに勉強になる。
緻密に計算された絞りのデザインや、
佐竹ワールドと言える優しく暖かい色彩センス
次々と新しい技法を生み出す、発想力の豊かさ
どれも、真似したくても真似できない。
私など、まだまだだな・・・と
先生と比べて思うことさせ、恥ずかしく思える。
15日には、NHKの「ゆう6かがわ」に佐竹先生が出演され
すなご染や庵治んこ染が放送されたので、それを見て来館された方も有った。
15:47分のバスに乗るため、15時に会場を後にしたが、
バスの中で、来年の展示会には、何を作ろうか・・・・・。
すでに来年の展示会に向かってスタートを切ったが、
又、苦しみ、悩む1年になるだろう。
それを何年も経験しているのに、止めないのは、なぜ?
やっぱり、今日のこの日にあるのかな?
展示された自分の作品を、誇らしく思って見らるのは嬉しい。
過去に穴が有ったら入りたいと思うほど、恥ずかしい思いをしたことが有る。
誇らしく満足に思える作品は、そう簡単には作れない。
作れないから、止められない。
そして、佐竹先生の後姿に教えられた「継続は力なり」の言葉。
追っても追っても届かない後姿を、追い続ける。
見えない道のりは遠そうだが~~
届かないから、追い続けるしかない。
難しいから、悩み苦しみ挑戦するしかない。
簡単に出来るものは、すぐ飽きるし、興味はない。
我が家に帰る前日の朝、
朝刊の中に“手作り市”のチラシを見つけた。
こんな田舎の町で、手作り市が開催されるのは珍しい!と思い、チラシを手に取った。
場所は、隣の町にある市役所の隣、
阿波農村環境改善センターとなっている。
田舎では、自転車で行動できる2キロ以内が、私の行動範囲で、
2キロ以上は出掛ける事は無かった。
「ここ、自転車で行ける?」
父に聞いてみた。
「行けんことは無いが、遠いゾ!」との返事。
あぁ~~車さえあれば、すぐに行けるのに~~!
「見に行きたい!」と、「遠いゾ!」の二つの思いが、頭の中で押し相撲を始める。
やっぱり見に行こう!
父に描いてもらった地図と、スマホの地図を頼りに、知らない道を出掛けて行った。
幸い秋晴れのいい天気!
初めての道を走る不安を、少しは和らげてくれる。
田舎は目印になる建物が無いので、スマホの青い経路を辿りながら、
自転車で6キロ 45分掛けて到着した。
建物の入り口には、「木工市」の赤い旗が立っている。
会場に入ると、藍染め、着物のリメイク、木工、アクセサリー、陶芸、竹細工、ツル籠など
50人の作家さんの作品2,500点が展示販売されていた。
私は藍染めのチュニックやTシャツが気になり、見ていたら、作家さんが来られ説明してくれた。
気に入った作品を見ると、私は、その作品を作った作家さんに興味が湧く。
藍染めの、青と白のはっきりしたコントラストのデザインも、
自分で縫製される洋服のユニークなデザインも、
センスの良さと、技術の確かさが窺え知れる。
その作家さんは、やっぱり、ハツラツと元気な人だった。
話が弾み、「私も染をしている」と、柿渋バックの写真を見てもらうと、
「一緒に展示会をやりませんか?」と、誘っていただいた。
思いがけない展開!
出会いは、いつ、どこで有るか解らないものだ!
「私の方こそ、是非ご一緒にさせてください」
お互いの名刺を交換した。
6キロの道の先には、思いがけない素晴らしい出会いが有った。
この出会いが、6キロ先の遠い夢で終わらず、
6キロ先の近い正夢であってほしい!
帰り道の自転車は重かったが、心は反対に軽かった。
行く時に冷たく感じた秋風も、火照った頬には心地良かった。