こちらが最近の椿の絵。
葉が薄墨になり、花の形もかなり変わって、
自分では、少し大人の感じがしていると思っている。
元々の一閑張りには絵は普通入らない。
古文書などの墨文字に柿渋が塗られているだけだ。
でも、文字だけではつまらないし、まず楽しくない。
そこで、最初は絵手紙風に文字と絵をからめて入れてみた。
それがけっこう楽しくて、あんがい好評だった。
問題は柿渋だった。
和紙だけでは水気に弱いため、丈夫にするために柿渋を塗る。
柿渋は、年月を経るごとに濃く変色するのが特徴だ。
そのため、せっかくのきれいな絵が見えなくなってしまうのだ。
まあ、それが本来の一閑張りの姿と思えば良いのだが、
そんな中でも、この赤い椿は頑張ってくれるのが嬉しい。
残念に思うのは、一閑張りを飾り物と思っている人が多いことだ。
飾られたままで、埃をかぶった一閑張りを見るのは悲しいものだ。
蔓(ツル)のカゴを編む職人さんが言っていた言葉を思い出す。
「高価なものだから大切にしたいのは解るが、
ビニールで包んで、押し入れに仕舞っている方が多いのが残念だ。
あれでは蔓は育たない。カビが出たり、乾燥して朽ちてしまう。
毎日使って手で撫でられることで、脂がつき艶と粘りが増す。
一番良い色と艶が出るのは20年程先になる。
そこまで使って育てて欲しいのだが・・・。」
一閑張りも同じことが言えそうだ。
本来は道具であるから、いろんなモノを入れて使って欲しい。
そして、折に触れ手で撫で愛でて欲しいのだ。
それによってより艶も出るし風格も増す、つまり育つのだ。
20年とは言わない。5年先を楽しみにして欲しい。
破れたり傷がついたりもするだろうが、
それを直すのも一閑張りの楽しみの一つだ。
数年すると柿渋も色褪せてくる。
そこで、補修し塗り直すことで生気を取り戻す。
それが出来て、本当のプロと言えるのかも知れない。