土狸庵ゆめ日記

土タヌキおやじのひとりごと。

一閑楽座考8

2013年12月06日 02時55分47秒 | 一閑張り考


こちらが最近の椿の絵。
葉が薄墨になり、花の形もかなり変わって、
自分では、少し大人の感じがしていると思っている。

元々の一閑張りには絵は普通入らない。
古文書などの墨文字に柿渋が塗られているだけだ。

でも、文字だけではつまらないし、まず楽しくない。
そこで、最初は絵手紙風に文字と絵をからめて入れてみた。
それがけっこう楽しくて、あんがい好評だった。

問題は柿渋だった。
和紙だけでは水気に弱いため、丈夫にするために柿渋を塗る。
柿渋は、年月を経るごとに濃く変色するのが特徴だ。
そのため、せっかくのきれいな絵が見えなくなってしまうのだ。

まあ、それが本来の一閑張りの姿と思えば良いのだが、
そんな中でも、この赤い椿は頑張ってくれるのが嬉しい。



残念に思うのは、一閑張りを飾り物と思っている人が多いことだ。
飾られたままで、埃をかぶった一閑張りを見るのは悲しいものだ。

蔓(ツル)のカゴを編む職人さんが言っていた言葉を思い出す。
「高価なものだから大切にしたいのは解るが、
 ビニールで包んで、押し入れに仕舞っている方が多いのが残念だ。
 あれでは蔓は育たない。カビが出たり、乾燥して朽ちてしまう。
 毎日使って手で撫でられることで、脂がつき艶と粘りが増す。
 一番良い色と艶が出るのは20年程先になる。
 そこまで使って育てて欲しいのだが・・・。」

一閑張りも同じことが言えそうだ。
本来は道具であるから、いろんなモノを入れて使って欲しい。
そして、折に触れ手で撫で愛でて欲しいのだ。
それによってより艶も出るし風格も増す、つまり育つのだ。

20年とは言わない。5年先を楽しみにして欲しい。
破れたり傷がついたりもするだろうが、
それを直すのも一閑張りの楽しみの一つだ。

数年すると柿渋も色褪せてくる。
そこで、補修し塗り直すことで生気を取り戻す。
それが出来て、本当のプロと言えるのかも知れない。