台所栽培

 人参や大根の切り取ったヘタを水につけて、若葉を生やしている。そうやって台所で育てておいたベビーリーフを、ちょっとサラダに添えたり味噌汁に入れたりすると便利だと、インターネットのどこかのサイトで読んだからで、大根はどんどん伸びてつぼみができ、花が咲くかと思ったらその前に折れてしおれてしまったけれど、人参はきれいなぎざぎざの若葉がすくすく伸びてきた。見た目にも可愛いのでまだ食べずにいる。
 2月の終わりに、間引いたような小さなかぶに可愛い葉っぱがついているのを、スーパーで束ねて売っていたから、一つ残してかぶのスープにして、その残しておいたひとつをお猪口に水と入れておいた。ぴったりの大きさで、小かぶがお風呂に入っているみたいであったが、もともと生えていた可愛いクローバーみたいな形の葉っぱが出ると期待していたら、全然違った太い茎と葉が生えてきた。どうなるかしら、大根みたいにまたつぼみが出るかと思って毎日見ていたら、一ヶ月ほど経った頃、猪口のお風呂のまわりに、なにやら細かい白いものがぽつぽつ落ちている。よく見てみると、かさかさしていて足のようなものがたくさんついていて、小さな虫の抜け殻である。いつのまにか、かぶの葉っぱに何匹ものアブラムシがついていた。
 ずっと部屋の中に置いているから、どこかから入ってきたとは思えず、買って来たときに、洗ったはずが、卵でも残っていて、それがひと月のうちにどんどん増えたのだろう。
 さてどうしようか、はじめはすぐ庭に捨ててしまおうと思ったけれど、庭のほかの植物までがアブラムシだらけになったら困るので思いとどまった。どこかで天道虫を捕まえて、ちょっと来てもらおうか、それとももうかぶは諦めて、ごみに捨ててしまっても構わないけれど。
 大きいのや小さいのがいる。どんどん抜け殻が落ちてくるから、小さいのが脱皮して、すぐ大きくなるのだろう。どのくらいのサイクルで増えるのかしら。うえのほうの葉っぱの表面にいるやつは、偉そうに両側の触覚を右左に動かしている。
 あんまり観察すると情が移ってはいけないと思ったが、放っておいたらどんどん数が増えていって、かぶの葉っぱがみるみるアブラムシだらけになり、恐ろしい感じになってきて、そうも言っていられなくなり、水でじゃばじゃば洗い流してしまった。
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )