アントンK「趣味の履歴簿」

趣味としている音楽・鉄道を中心に気ままに綴る独断と偏見のブログです。

佐渡 裕のマーラー演奏

2025-01-27 14:10:00 | 音楽/芸術
 先日テツ仲間からお誘いを頂き、マーラーの演奏会に行ってきた。
 鉄道撮影の仲間内だから、いつもは線路端でカメラを持ちながら撮影を楽しむ間柄なのだが、アントンKと同じように音楽鑑賞にも日頃親しみをもち、趣味として楽しんでいるお仲間からのお誘いは、何にも増して嬉しいものだ。鉄道撮影のお誘いより心弾むような気がしている。お互い同じような趣味の中でも、別次元の話ができ、新たな発見にも気づかせられることも多く楽しい時間なのである。
 今回のオーケストラは長年集中して鑑賞してきた新日本フィルだが、ここのところ、ちょっとご無沙汰が続いてしまっていた。コロナ禍の大変な時期を越し、昨年から音楽監督に佐渡裕氏を迎えた同オケだが、アントンKにとって、佐渡氏の作り出す音楽が経験上あまり好まなかったこともあり、少しだけ足が遠のいていた。アントンKにとっては、尊敬すべき演奏家であるコンマスの崔 文洙氏が君臨するオケゆえ、常に気になっていたことは確かで、当日も久しぶりに彼のソロパートの響きに感銘を受け、相変わらずの舞台姿に勇気をもらったのである。
 この日は、マーラー第9交響曲1曲というプログラムで、指揮者佐渡氏にとっても、プレトークによると思い入れのある楽曲らしく、どんな演奏になるのか楽しみだった。この演奏、今まで感じてきたようなエネルギッシュな煽りや力づくの要求は影を潜め、ハーモニーを感じて音楽を作り上げ、決してフォルテがうるさくならない内容で、ハッとするほどそれまでとは変化していたように思う。全体的にたっぷりとした情感ある響きがホールを包み込み、とても満足した演奏会だった。木簡パートは相変わらず素晴らしく、特にClなどは冴えわたっていた印象だが、アントンKにとっては、何と言ってもアダージョ楽章の深く高貴な響きに心打たれたのである。このアダージョを聴きに来たと言っても過言ではないくらい、今思い返しても素晴らしい内容だった。出の弦合奏の音色がホールに響き渡ったところから、アントンKはすぅーと音楽に引き込まれてしまった感覚で集中でき、コンマス崔氏率いるVn郡の切ない音色に自然と涙があふれてしまった。この楽章は、息を引き取るように静かに、細く長く消えていくが、その最後の数小節の最弱音は、ピンと張りつめたホールの隅々まで染み渡り、この日の感動を決定づけたのである。

新日本フィルハーモニー交響楽団1月定期演奏会
マーラー 交響曲第9番 ニ長調
指揮    佐渡 裕
コンマス  崔 文洙
      立上 舞

2025年1月25日 すみだトリフォニーホール