先日スクロヴァチャフスキのブルックナーを聴きに行ってきた。オーケストラが、ザールブリュッケン・カイザースラウテウン・ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団ととんでもなく長い名前のオケ。つまり、もとのザールブリュッケン放送響が、もうひとつを合併してこうなったらしい。いずれにしろ、新たなメンバーを迎えて技術的にもより良くなれば全く良いことなのだが、果たしてどうなっているか興味深々で会場のオペラシティホールに向かった。
今日の指揮者であるスクロヴァチャフスキは、自分でもここ10年くらいは、聴いてきているつもりだが、演奏会は少し久しぶりになってしまった。90年代に彼のブルックナーの交響曲のCDが連番で発売になり、聴いているうちに虜になり、その後、読響での演奏会での、ブルックナーの第9を聴き決定的になった。当時からその演奏内容は、話題になっていたようだが、聴くたびに新しい発見が数々見られて大変面白いのだ。確かに色々オケに指示するから、時に音楽が小さくまとまり、小さなブルックナーのイメージになりやすいが、彼の演奏で、9番を筆頭に後期のシンフォニーはある意味絶品である。そんな期待を胸に会場に急いだわけだ。
演奏会の前半は、シューマンの4番が演奏され、休憩をはさんでブルックナーの9番へ流れる。行く前は、シューマンの前座はいらず、ブル9番のみで十分なんて意気込んでいたのだが、いざシューマンが始まると、とんでもない内容にびっくり。ここでも随所にスパイスが効いており、実に面白く聴けたのだ。オケの各声部のバランスとニュアンスは絶妙で、とても88歳の老指揮者とは感じられなかった。実に若々しいのである。さて、メインのブルックナーであるが、過去に聴いた彼の演奏よりさらに浄化されており、今回はメリハリが効いていて心地よい。そして例によって今まで聴いたことのない和声が飛び込んできて、思わずニンマリしてしまうのだ。「やるなぁ~」っと心で叫びアダージョを迎え無心の境地に追いやられたのである。10年以上前、このホールで同じ楽曲を聴いて涙したときのことを思い出してしまった。今は亡きヴァントの演奏会のことだ。永遠に続いてほしいと思わせる最後の和音が会場から消えても、今日の聴衆は、その余韻を楽しみ、拍手がない。指揮者が手を下しようやくほっと我に返った時、嵐のような拍手が湧き起こった。15分は続いただろうか、オケの団員が楽屋に去った後も、拍手は鳴り止まず指揮者を再度舞台へ誘う。私も何年か振りに我慢できず、感謝の気持ちを込めて叫んでいた。
2011-10-20 オペラシティホールにて