今シーズン最後を飾る、新日本フィルハーモニーによる演奏会へ出向いてきた。
今回は、日程の都合で本拠地トリフォニーではなく、サマーフェスタミューザへ参加した上岡/新日本フィルの方へ行って来た。プログラムは同一だが、トリフォニーの方は学生による演劇が上演されたようで、またとない機会だろうから少し残念。まあそれでも今は、いつも以上に想像を越えた内容に満足している。
ミューザ川崎シンフォニーホールでの新日本フィルはアントンKにとって初めてではないか・・今年でホール15周年を迎えたそうで、相変わらず月日の経つのは早いものだ。その間、あの大震災で一時期ホール閉鎖の期間があるなど、心配もさせられたが、今回久しぶりに会場に足を踏み入れてみて感じたことは、シューボックス型でないことは良いとして、やはり螺旋を描くように配列された座席は、未だに違和感があり、気持ちが落ち着かない。また今回階段がやたらと多いホールであることにも気が付いてしまった。聴衆の中では高齢者も多い中、移動がかなり大変な方々にも遭遇したのだ。確かに他に類を見ないコンサートホールだろうが、構造上、聴衆には優しくないと言わざるを得ない。音響が個人的には素晴らしい響きなだけに残念でならないのである。
今回の演奏会は、ロシアの名曲の2曲が並び、前半はラフマニノフのピアノ協奏曲第2番、そして後半にプロコフィエフのバレエ音楽「ロミオとジュリエット」と続く。総じてどちらも上岡色のさらに濃い、推し進めた解釈が聴けたが、どちらの楽曲にも共通することは、楽曲の印影が今までになく美しく描かれ、ちょっとしたフレージングの妙に息を飲み、透明度の生かされたキリっとした音楽表現は、今まで体験が無かったように思う。また「ロミオとジュリエット」について言えば、バレエ音楽としての域を越えてしまい、聴こえてくる音楽だけで景色が想像できるような、大胆かつ激烈な表現が嬉しく、終始聴き入ってしまった。もちろん新日本フィルの各パートのトップ奏者達も冴えわたり、美しいメロディだけに流されず、響きのなかに真実の愛があった。コンマスの崔文洙氏の響きも最高で、いつもとは位置が違う2階L席でも、それとわかる豊満な音色に癒されたが、今回はVlaトップの井上氏、Vcの長谷川氏そして木管楽器群にまで広がりを見せ、この辺の細かな臨場感は、まさに上岡敏之の世界観なのだと思っている。想像するに、前日演劇付きで演奏された内容とは、かなり違った表情を見せたのではないか。視覚的要素が加わる分、音楽の流れが見えにくくなるのではと考えさせられたのだ。
さて次シーズンに向けて期待の高まる上岡/新日本フィルだが、そのトップは、はたまたブルックナーが聴ける。今度は第7交響曲であり、過去ウッパタール響で聴いた演奏からどう変化しているのか今から楽しみでならないのだ。
フェスタサマーミューザ2019
ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 OP18
プロコフィエフ バレエ音楽「ロミオとジュリエット」組曲から
アンコール
ラフマニノフ 練習曲 OP39-1
指揮 上岡 敏之
ピアノ 小川 典子
コンマス 崔 文洙
新日本フィルハーモニー交響楽団
2019年7月28日 18:00
ミューザ川崎シンフォニーホール