前日まで行こうか迷って、結局行ってきたので掲載しておく。
このヤノフスキという指揮者、近年名前を聞くようになってきたが、ドイツの指揮者でやはりお国物の作品がレパートリーーに並んでいる。当然ブルックナーについても全曲レコーディングが進行中であり、アントンKもいくつかの演奏に触れた経験をもつ。まあどちらかといえば、自己主張の少ない間違いのない演奏で、教科書的ともいえるだろうか。そんな印象をもっていた。しかしそんな彼も70代半ばというから、かなり音楽の中身も変わっているかもしれないという期待とともに会場に足を運んだという訳だ。
今日のオケは、ベリルン放送交響楽団。現在のヤノフスキの家族といえるオーケストラで、お互いに息のあったところも期待できる。空席の目立つホール内は、お馴染みの顔ぶれも散見できたが、やはり今ひとつの集客。これでは、演奏者、指揮者、そして我々聴衆も少しばかりテンションが下がってしまうというものだ。そんな心配をしながらの演奏会であったが、結論として、思った通りの演奏だったことを最初に書き留めておく。思った通りとは、今日のプロ、ブルックナーの第8番の魅力を引き出した良い演奏ということ。それは間違いのないところだ。早めのテンポ感を貫き、もたれることもなく、そよ風のように流れる心地よい音楽が披露されていた。新たな発見も無いことはない。アダージョにおける金管のコラール部の主題の強調などは、納得の演奏内容だった。
しかし、アントンKの好みからは、やはり遠いところにあった。大好きな楽曲だから、それだけ拘りも多くなるのは当たり前だし、そこのところは妥協できない。これが音楽鑑賞(特にクラシック音楽)の醍醐味だから仕方がないのである。
1mov.の出のところから、ピアニッシモが小さ過ぎて、低弦の主題も響かない。これは、全体に言えることで、分厚い低音が聴こえないから、音楽がこじんまりしてしまい小さく感じてしまう。「箱庭のブルックナー」といった感じか。中間部での木管のミスは、百歩譲るとしても、トロンボーンやベースを含め、低音の鳴りの弱さには、ちょっと異質なものを感じた。これは、指揮者ヤノフスキの指示なのかどうかはわからないが、音楽が広がらず、小さくまとまったイメージだったことは、全体通して変わらなかった。
先々月(1月)に、兵庫で井上道義のブル8を聴いたが、今回の演奏とは全く異なっていた。行く前からわかっていたと言えば、そうかもしれないが、やはり自分の耳で確かめたかった。そう思うと、今や日本のオーケストラも、技術的にも音響の面からも、海外のオーケストラに引けを取らなくなったということが改めてわかった気がしている。
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2015(H27)-03-18
ベルリン放送交響楽団2015年日本公演
指揮 マレク・ヤノフスキ
ブルックナー 交響曲第8番 ハ短調
サントリーホール