最後の最後まで迷ったが、やはり行って来てしまった・・・
それは、ケント・ナガノがバイエルン国立管弦楽団をもっての特別演奏会のこと。曲目も、ブルックナーの第9番と、テ・デウムの2曲で、すごぶる気合いの入るプロ。震災の影響か、出演者が最後まで入れ替わり、オケの中を見渡すと、日本人の顔もチラホラ見られたし、コンディションはさほど期待できなかったので、直前まで出向くのを迷ってしまったのだ。
久しぶりの文化会館。やはり、リフレッシュしたとはいえ、古さは否めないが、やはり私にとっては、数々の思い出多いホールである。この大ホールに身を置くと、なぜか気分が高鳴ってくる。今晩はブルックナーとなれば尚更だ。会場には、本日は休憩が無いと、注意書きがされていた。ということは、9番のアダージョの後、続けてテ・デウムが演奏され、これは、指揮者ケント・ナガノの意向だという。確かに、ブルックナー自身が生前のころ、9番作曲中に、弟子たちにこのことを話していたらしいことを、どこかで読んだことがあるが、実際の演奏は初めてであり、これまた楽しみであった。
思いのほか、会場いっぱいの聴衆を前に第1楽章が悠然と開始された。この序奏部は、かなり遅いテンポであり、このあといったいどうなるのかと思ってしまったが、第1主題までで速度を速めていく解釈で、ffの第1主題は、巨大ではなかった。むしろ控えめな和音とでもいうべきものだった。私の席からでは、(1回L10列)弦と管のバランスが悪く、多少の縦の線のズレは我慢できるのだが、どうも弦楽器が粗雑に聴こえてしまった。しかし、スケルツォ、そしてアダージョと楽曲が進むに連れて、そんな内容も気にならなくはなったが、全体的に管の鳴りが悪く思えてしまい、最後までバランスの悪さを露呈してしまったようだ。確かに、指揮者の細かな解釈は、個々に分かるのであるが、どうも成功しているようには思えない。
アダージョ後、そのままテ・デウムへ流れ込む。う~ん・・アダージョの最後の和音がまだ私の頭から消えないまま、いきなりハ長調のテ・デウムへ、これはやはり違和感がどうしても残る。合唱団の特に弱音部の美しさや、ソリストたちの活躍は素晴らしかっただけに、どうも、このスタイルは、勿体ない気がした。
指揮者ケント・ナガノは、それまで、いくつかのCD(No.3 No.4 No.6・・)やDVDの演奏内容を聴いて、新しい時代のブルックナー解釈なんて、一人期待はしていたのだが、実演となると話は別なのか?ちょっと残念な思いで会場を後にした。