杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ゆめつげ

2008年08月17日 | 
畠中恵 著   角川書店 発行

江戸は上野の小さな神社で神官を務める、のんびり屋の兄・弓月としっかり者の弟・信行。夢に入って過去や未来を見る「夢告」が得意な弓月だが、迷い猫を捜せば、とっくに死んで骨になった猫を見つけるという具合で、全く役に立たないしろもの。が、何を見込まれたか、大店の一人息子の行方を見てほしいという依頼が!礼金に目が眩み弟をお供に出かけたものの、事態は思わぬ方向に転がって・・・・・・。大江戸・不思議・騒動記!

「しゃばけ」シリーズがすっかり気に入って、一通り読み終えた後で、もっと何かないかと探したのがこの作品。

時代は江戸末期、文明開化の前夜の混沌の時代をまもなく迎えようとする頃。
商家の息子だった若だんなと違って、神官という特殊な家に生まれた弓月さんには妖の知り合いはいないけれど、夢告という不思議な能力を持っています。
いわば、予知能力・透視能力の類なのでしょうかね。

大火の際に行方不明となった大札差の息子の真贋を占うという仕事の裏には、倒幕の浪人たちの企みや、神社の行く末までが関わっていた、というお話。

平和な世が続くようにみえて、その実は変動の波をまともに受けようとしていた幕末のきな臭いにおいが、小説の中にもちゃんと加味されています。

一見ひ弱でとらえどころがないように見えて、芯はしっかりしている弓月兄さんは、若だんなと同じニオイがして、何だか一太郎の別バージョンのような親近感を覚えてしまいました。そしてしっかりものの手代の代わりを務めるのは弟の信行です。兄弟ならではの遠慮のない物言いにニヤっと笑いたくなる箇所も。

夢告をするたびに体が弱っていく弓月さんにも母性本能を掻き立てられます。
小説の冒頭の落語の笑い話のような家系話が山場では重要な意味持ってくることや、何だか続編が出来そうな終わり方に、早くも先を期待しちゃいます。

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