畠中恵(著) 文藝春秋(発行)
「まんまこと」シリーズ第四弾
女房のお寿ずと娘のお咲を亡くし、しばらくは魂が抜けたようだった麻之助だが、町名主・高橋家の跡取りとして、もめごとの裁定の仕事は待ったなし。幼馴染で親友の八木清十郎と相馬吉五郎の助けもあり、少しずつ回復していく・・・。
・朝を覚えず
妻のお寿ずを亡くして一年経ち、それなりに日々を送ってはいるが、本来の姿には程遠い麻之助。そんなある日、清十郎から眠り薬をめぐる騒ぎの相談を受ける。太源という若い医者が処方した薬の効能が、飲んだ人間によっておそろしく違うその理由を知るため、麻之助は、我が身で試すことにしたのだが・・・。
薬の効能を貧乏人で試すというその不届きな行為を「人が人を大事だって思う気持ちにつけ込んで、下司なことをするんじゃねえよ」と啖呵を切る麻之助にスカッとしますが、自分で試しちゃダメでしょ
・たからづくし
町名主としての職と立場と責任のすべてを放り出し、突然姿を消した清十郎を捜す麻之助と吉五郎だが、吉五郎は盗賊の追跡でも忙しく、清十郎を探すことに専念できない。加えて両国の貞から、仲間の男たちを袖にする謎の武家娘の事情を探ってほしいと頼まれた麻之助は、清十郎が遺した書き損じから、あることをひらめく。
吉五郎の追う事件と清十郎の失踪には繋がりがありました
いつも女の方から惚れられるばかりの清十郎が珍しく自分から惚れてしまった女性は、美しい武家の娘でした。町名主の妻としては美しさは逆に騒動の元となり、まして身分高い旗本に嫁ぐことになる娘とは縁が結ばれることもないとわかっていても・・辛いよねぇ清十郎。
・きんこんかん
両国の貞が三人の手下を連れて相談ごとにやってきた。両国橋詰めの盛り場で最近小さな店をそれぞれ開いた三人の娘(おきん・お紺・お寛=きんこんかん)が、ただ一人の同心だけに秋波を送っているその相手が吉五郎だという。しかし吉五郎にはまったく身に覚えがなくて・・・。
突然三人の娘から好意を寄せられて困惑する堅物の吉五郎ですが、娘たちは店を持たせてもらうために吉五郎の歓心(といっても恋じゃなくて誰のお菓子が美味しいかの判定)を買おうとしていたのでした。
勝手に吉五郎を使って商売しようと企み、あわよくば娘たちの誰かを妾にしようとした島松屋を懲らしめようと、友思いの麻之助が一計を案じます
島松屋以外が得をしたこの顛末は愉快
吉五郎のお舅さんになる相馬様って一筋縄でいかないキャラですねぇ
・すこたん
菓子を食べるとき大切なのは、皿か、それとも茶か? 瀬戸物問屋と茶問屋の跡取り息子同士の、なんとも下らない裁定をすることになった麻之助。調べると背後にはある茶屋娘を巡る恋の争いがあった。二人によくよく因果を含め、争いを終わらせた麻之助だが、しばらくすると二人の間にはまた争いごとが起きてしまった。今度の諍いにはいわくつきの娘「緒すな」との縁談と高額の持参金をめぐる複雑な事情が絡んでいた。今度の裁定は前回のように簡単にはいかず、さらに「緒すな」本人が麻之助の屋敷に直接やって来て――争いの結末はいかに?
仲が良かった二つのお店が、同じ町内になった途端に関係が悪化。近所になったことで自分の方が色んな意味で上だと思いたい主人どうしの鍔迫り合いが始まった。息子どうしが始めた恋の争いは麻之助の裁定で収まったものの、今度は大店の我儘娘の嫁入り話と化けてしまってさぁ大変。あまりの我儘ぶりに戦々恐々となる両家の息子たちは互いに譲り合う始末ですが、そんな中であっさり娘のハートを射止めたのは、普段何の役にも立たない別の傾きかけた商家の跡取り息子だったという
な~~んも考えずにありのままを見る方が幸せを掴むのかもね
・ともすぎ
悪名高い高利貸し・丸三が高橋家にやって来た。聞けば最近の吉五郎の様子がどうもおかしいという。調べると吉五郎は舟に乗り、足繁く市谷御門へ通っているらしい。麻之助と清十郎、丸三も市谷御門へ赴くが、そこは武家屋敷の塀が延々と並ぶばかりの武家地。途方に暮れる三人を吉五郎に引き合わせたのは村井新左衛門という武家だった。吉五郎がここに通う理由を新左衛門から聞かされた三人は、考え違いに恐縮する。その後丸三は吉五郎のためにある賄賂事件を調べ始めるが、そのさなかに行方知れずになってしまう。丸三はどこに消えた?
高利貸しと恐れられ、これまで友の一人もいなかった丸三にとって、麻之助たちは初めてできた大事な大事なお友達。「たからづくし」では清十郎のことを親身になって世話したけれど、今回は吉五郎のために奔走します。ところが自分の身内に賄賂事件に関わる者がいて、命の危険に曝されてしまうの。彼を救ったのも麻之助たち。友情に年は関係ないね
・ときぐすり
高い木から降りられなくなった高橋家の飼い猫・ふに。それを助けたのは北国から江戸にやって来たばかりの十四歳の滝助だった。滝助はこれからどうやって暮らせばいいか麻之助に訊くが、これまで盗賊の手下だったという滝助が簡単に仕事につけるはずがない。そして本当に滝助は盗賊と切れているのか? とりあえず麻之助は滝助を糊売りの老婆・むめに預け、袋物師の数吉親方の世話をさせることに。ときが過ぎる中、いつしか支えあうようになるむめ婆・滝助・数吉親方。しかしある夜、盗賊の若頭が滝助のもとにやって来て――どうする滝助!
時薬(じやく)とはお坊さんが午前中に食べて良いものの意だそうですが、滝助は時が薬になるという意味に解釈し、間違いだと分かった後もその考えが気に入っていたと話します。その言葉に連れ合いや息子を亡くしたむめや数吉、最愛のお寿々を亡くした麻之助の心に浸みていくのです
滝助は盗賊たちの飯炊きに過ぎず、悪事は働いていなかったのですが、盗賊と関わりのあった者を世話するというのはなかなかに気を遣う厄介事の筈。でも麻之助にかかると、これが何だか妙に穏やかな結末に導かれるのが
です。敢えて盗賊たちを長屋に呼び寄せたことで、長屋の住人たちにも滝助は使い走りで罪びとではないと周知させることになるあたりは細やかな気配りの賜物ですもの
捕り物では吉五郎の颯爽とした姿が描かれていて、この三人、日頃は飲み食い喧嘩に明け暮れているようで、やるときはやる!!って感じね
麻之助のお寿々を亡くした心の痛みも、ようよう癒え始めたのかもしれませんね
「まんまこと」シリーズ第四弾
女房のお寿ずと娘のお咲を亡くし、しばらくは魂が抜けたようだった麻之助だが、町名主・高橋家の跡取りとして、もめごとの裁定の仕事は待ったなし。幼馴染で親友の八木清十郎と相馬吉五郎の助けもあり、少しずつ回復していく・・・。
・朝を覚えず
妻のお寿ずを亡くして一年経ち、それなりに日々を送ってはいるが、本来の姿には程遠い麻之助。そんなある日、清十郎から眠り薬をめぐる騒ぎの相談を受ける。太源という若い医者が処方した薬の効能が、飲んだ人間によっておそろしく違うその理由を知るため、麻之助は、我が身で試すことにしたのだが・・・。
薬の効能を貧乏人で試すというその不届きな行為を「人が人を大事だって思う気持ちにつけ込んで、下司なことをするんじゃねえよ」と啖呵を切る麻之助にスカッとしますが、自分で試しちゃダメでしょ

・たからづくし
町名主としての職と立場と責任のすべてを放り出し、突然姿を消した清十郎を捜す麻之助と吉五郎だが、吉五郎は盗賊の追跡でも忙しく、清十郎を探すことに専念できない。加えて両国の貞から、仲間の男たちを袖にする謎の武家娘の事情を探ってほしいと頼まれた麻之助は、清十郎が遺した書き損じから、あることをひらめく。
吉五郎の追う事件と清十郎の失踪には繋がりがありました

いつも女の方から惚れられるばかりの清十郎が珍しく自分から惚れてしまった女性は、美しい武家の娘でした。町名主の妻としては美しさは逆に騒動の元となり、まして身分高い旗本に嫁ぐことになる娘とは縁が結ばれることもないとわかっていても・・辛いよねぇ清十郎。

・きんこんかん
両国の貞が三人の手下を連れて相談ごとにやってきた。両国橋詰めの盛り場で最近小さな店をそれぞれ開いた三人の娘(おきん・お紺・お寛=きんこんかん)が、ただ一人の同心だけに秋波を送っているその相手が吉五郎だという。しかし吉五郎にはまったく身に覚えがなくて・・・。
突然三人の娘から好意を寄せられて困惑する堅物の吉五郎ですが、娘たちは店を持たせてもらうために吉五郎の歓心(といっても恋じゃなくて誰のお菓子が美味しいかの判定)を買おうとしていたのでした。



吉五郎のお舅さんになる相馬様って一筋縄でいかないキャラですねぇ

・すこたん
菓子を食べるとき大切なのは、皿か、それとも茶か? 瀬戸物問屋と茶問屋の跡取り息子同士の、なんとも下らない裁定をすることになった麻之助。調べると背後にはある茶屋娘を巡る恋の争いがあった。二人によくよく因果を含め、争いを終わらせた麻之助だが、しばらくすると二人の間にはまた争いごとが起きてしまった。今度の諍いにはいわくつきの娘「緒すな」との縁談と高額の持参金をめぐる複雑な事情が絡んでいた。今度の裁定は前回のように簡単にはいかず、さらに「緒すな」本人が麻之助の屋敷に直接やって来て――争いの結末はいかに?
仲が良かった二つのお店が、同じ町内になった途端に関係が悪化。近所になったことで自分の方が色んな意味で上だと思いたい主人どうしの鍔迫り合いが始まった。息子どうしが始めた恋の争いは麻之助の裁定で収まったものの、今度は大店の我儘娘の嫁入り話と化けてしまってさぁ大変。あまりの我儘ぶりに戦々恐々となる両家の息子たちは互いに譲り合う始末ですが、そんな中であっさり娘のハートを射止めたのは、普段何の役にも立たない別の傾きかけた商家の跡取り息子だったという


・ともすぎ
悪名高い高利貸し・丸三が高橋家にやって来た。聞けば最近の吉五郎の様子がどうもおかしいという。調べると吉五郎は舟に乗り、足繁く市谷御門へ通っているらしい。麻之助と清十郎、丸三も市谷御門へ赴くが、そこは武家屋敷の塀が延々と並ぶばかりの武家地。途方に暮れる三人を吉五郎に引き合わせたのは村井新左衛門という武家だった。吉五郎がここに通う理由を新左衛門から聞かされた三人は、考え違いに恐縮する。その後丸三は吉五郎のためにある賄賂事件を調べ始めるが、そのさなかに行方知れずになってしまう。丸三はどこに消えた?
高利貸しと恐れられ、これまで友の一人もいなかった丸三にとって、麻之助たちは初めてできた大事な大事なお友達。「たからづくし」では清十郎のことを親身になって世話したけれど、今回は吉五郎のために奔走します。ところが自分の身内に賄賂事件に関わる者がいて、命の危険に曝されてしまうの。彼を救ったのも麻之助たち。友情に年は関係ないね

・ときぐすり
高い木から降りられなくなった高橋家の飼い猫・ふに。それを助けたのは北国から江戸にやって来たばかりの十四歳の滝助だった。滝助はこれからどうやって暮らせばいいか麻之助に訊くが、これまで盗賊の手下だったという滝助が簡単に仕事につけるはずがない。そして本当に滝助は盗賊と切れているのか? とりあえず麻之助は滝助を糊売りの老婆・むめに預け、袋物師の数吉親方の世話をさせることに。ときが過ぎる中、いつしか支えあうようになるむめ婆・滝助・数吉親方。しかしある夜、盗賊の若頭が滝助のもとにやって来て――どうする滝助!
時薬(じやく)とはお坊さんが午前中に食べて良いものの意だそうですが、滝助は時が薬になるという意味に解釈し、間違いだと分かった後もその考えが気に入っていたと話します。その言葉に連れ合いや息子を亡くしたむめや数吉、最愛のお寿々を亡くした麻之助の心に浸みていくのです

滝助は盗賊たちの飯炊きに過ぎず、悪事は働いていなかったのですが、盗賊と関わりのあった者を世話するというのはなかなかに気を遣う厄介事の筈。でも麻之助にかかると、これが何だか妙に穏やかな結末に導かれるのが



麻之助のお寿々を亡くした心の痛みも、ようよう癒え始めたのかもしれませんね
