2017年4月7日公開 オーストラリア 119分
1986年、インドのスラム街で暮らす5歳の少年サルーは、兄と仕事を探しにでかけた先で停車中の電車で眠り込んでしまい、家から遠く離れた大都市カルカッタ(コルカタ)まで来てしまう。そのまま迷子になったサルーは、やがて養子に出されオーストラリアで成長。25年後、友人のひとりから、Google Earthなら地球上のどこへでも行くことができると教えられたサルーは、おぼろげな記憶とGoogle Earthを頼りに、本当の母や兄が暮らす故郷を探しはじめる。
インドで迷子になった5歳の少年が、25年後にGoogle Earthで故郷を探し出したという実話の映画化です。
とにかく5歳のサル―の可愛いことったら
兄ちゃんの手伝いをして貨車に積まれた石炭を盗んで売ったお金で牛乳を買うような貧しい生活ながら、大好きな母ちゃんの愛に包まれて幸せに暮らしていたサル―ですが、 ある時、兄ちゃんの仕事探し(電車の車両の椅子の下に落ちている小銭を拾う?)に無理やりくっついていきます。それは彼なりにお手伝いをしたかったから。でも幼いサル―は眠くなってしまい、困った兄ちゃんは駅のベンチで待っているように言います。夜更けても戻ってこない兄ちゃんを待って停車中の車両で眠り込んでしまったサル―は遠く離れたカルカッタまで運ばれてしまうの。
幼いサル―は家族の名前も生まれた街の名も言えず、言葉も通じません。(最後に明かされますが、彼は自分の名前さえ間違って覚えていました。)浮浪児狩りや、親切にしてくれた女性に売られそうになるなどの危機をくぐり抜けた彼はやがて施設に収容され、そこからオーストリア人夫婦の元に養子に出されます。インドで親の無い子供は多く存在し、悲惨な人生を歩む者も多い中、彼はとても恵まれていたと言えます。
養母のスー(ニコール・キッドマン)と養父のジョン(デビッド・ウェンハム)はとても良い人たちで、申し分のない両親となり、愛情いっぱいにサル―を育ててくれました。後に迎えた弟(もう一人の養子)も同じ茶色の肌のインドの子でしたが、精神状態が不安定で自傷行為を繰り返し養母を困らせます。
やがて成長し、大学に進み恋人ルーシー(ルーニー・マーラ)を得て幸せな生活を送るサル―(デヴ・パテル)でしたが、ある時友人からGoogle Earthを使って故郷を探せることを教えられ、インドの家族への想いに駆られます。
仕事も投げ出し、記憶に残る駅の給水塔を頼りにPCに没頭するサル―。自分が幸せな生活を送るほどに募るインドの家族への想いに押し潰されて行く姿が切ないけれど、彼にとって、人生を取り戻して未来への一歩を踏み出すためにどうしても必要なことなのですね。
遂に記憶に残るあの給水塔を見つけたサル―は養父母にも話して、ようやく25年ぶりに故郷に足を踏み入れます。懐かしい情景が目の前に現れますが、家は朽ち果て人の住んでいる気配はありません。失望する彼の前に一人の老人が現れ・・・
実は兄はあの夜別の列車に撥ねられて亡くなっていました。でも母は何年もサル―を探し続け希望を捨てていませんでした。あの日言えなかった「ただいま」をサル―はようやく告げることができたのですね。