杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ

2017年04月22日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2016年8月6日公開 フランス 105分

貧困層が暮らすパリ郊外のレオン・ブルム高校の新学期。様々な人種の生徒たちが集められた落ちこぼれクラスに、厳格な歴史教師アンヌ・ゲゲン(アリアンヌ・アスカリッド)が赴任してくる。
「教員歴20年。教えることが大好きで退屈な授業はしないつもり」と言う情熱的な彼女は、歴史の裏に隠された真実、立場による物事の見え方の違い、学ぶことの楽しさについて教えようとする。だが生徒達は相変わらず問題ばかり起こしていた。ある日、アンヌ先生は、生徒たちを全国歴史コンクールに参加するように促すが、「アウシュヴィッツ」という難しいテーマに彼らは反発する。ある日、アンヌ先生は、強制収容所の生存者レオン・ズィゲルという人物を授業に招待する。大量虐殺が行われた強制収容所から逃げ出すことができた数少ない生き証人の悲惨な状況を知った生徒たちは、この日を境に変わっていく―。 (公式HPより)

 

中心となる生徒の一人マリック役のアハメッド・ドゥラメ自身の体験をもとに、学校から見放された問題児たちの集まるクラスが、ベテラン教師の情熱によって次第に変化していく様を描いた作品です。

フランスは多種の移民が暮らしているという社会背景があります。落ちこぼれクラスが舞台なので、劣等生たちの学校や社会に対するやり場のない怒りの他に、生徒同士の民族・宗教的対立も描かれます。そんなまとまりのないクラスをアンヌ先生は全国歴史コンクールの入賞という目的に向かって結束させていくのです。

最初は課題の「アウシュヴィッツ」というテーマ(ナチス政権下のユダヤ人やロマ族の弾圧)は難しすぎると生徒から不満が噴出します。けれどネットや本、強制収容所の記録が保存してあるミュージアムの見学を通して、茶化した言動も影を潜め、彼らの中でどんどん学習意欲が高まっていきます。その最大のきっかけは強制収容所の生き残りのレオン・ズィゲルの証言です。彼の話す恐怖と希望の体験、ホロコーストの記憶は生徒たちの人生をひっくり返すインパクトがありました。バラバラだった彼らが、自主的に情報を集めてまとめあげるためのグループ分けをしたり、コンクールが終わったら犠牲者への追悼の白い風船を飛ばそうと発案するあたりはかなり感動的です。

歴史を学ぶということは真実を知るということであり、自らの意思で考えることの大切さを教えることこそが教育なのだとこの映画は突きつけてきます。自国の歴史に蓋をして無かったことにするのではなく、その汚点をしっかり見つめて未来に過ちを繰り返さないという強い意志を持つことこそが平和への道だと思うのだけど・・・翻って私たちは彼らに胸を張れる教育を受けてきたかしら?


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

グランドフィナーレ

2017年04月22日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2016年4月16日公開 イタリア・フランス・スイス・イギリス合作 124分

世界的にその名を知られる、英国人音楽家フレッド(マイケル・ケイン)。今では作曲も指揮も引退し、ハリウッドスターやセレブが宿泊するアルプスの高級ホテルで優雅なバカンスを送っている。長年の親友で映画監督のミック(ハーヴェイ・カイテル)も一緒だが、現役にこだわり続ける彼は、若いスタッフたちと新作の構想に没頭中だ。そんな中、英国女王から出演依頼が舞い込むが、なぜか頑なに断るフレッド。その理由は、娘のレナ(レイチェル・ワイズ)にも隠している、妻とのある秘密にあった──。

 

アルプスの高級ホテルを舞台に、老境のイギリス人作曲家の再生を描いたドラマですが・・・この手の作品は好き嫌いが分かれるところかな。私は×でした。 そもそも音楽に造詣の浅い身に、その世界観は遠すぎた~~

ただ、映像は美しかったです。撮影の場はスイス、ヴェネチア、ロンドン、ローマで、そのうち大部分がアルプス山脈のふもとのサナトリウムを改築した古いホテルが舞台となっています。優雅でゆったりした時間の流れが感じられ、人生の終末にこんな場所でのんびり過ごせるのは至福だろうな

タイトルの「フィナーレ」は人生最後という意味ではなく、歳を重ねてもなお先に進むことが出来るという人生賛歌なのです。

女王の依頼を頑なに拒むフレッドですが、ホテルに滞在するジミー(ポール・ダノ)や少年など様々な人との出会いを通して自らの過去を振り返り、現実を悩み、明日への希望を見出していくのね。

女優役でジェーン・フォンダも出演しているのが感慨深いです


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする