2016年8月6日公開 フランス 105分
貧困層が暮らすパリ郊外のレオン・ブルム高校の新学期。様々な人種の生徒たちが集められた落ちこぼれクラスに、厳格な歴史教師アンヌ・ゲゲン(アリアンヌ・アスカリッド)が赴任してくる。
「教員歴20年。教えることが大好きで退屈な授業はしないつもり」と言う情熱的な彼女は、歴史の裏に隠された真実、立場による物事の見え方の違い、学ぶことの楽しさについて教えようとする。だが生徒達は相変わらず問題ばかり起こしていた。ある日、アンヌ先生は、生徒たちを全国歴史コンクールに参加するように促すが、「アウシュヴィッツ」という難しいテーマに彼らは反発する。ある日、アンヌ先生は、強制収容所の生存者レオン・ズィゲルという人物を授業に招待する。大量虐殺が行われた強制収容所から逃げ出すことができた数少ない生き証人の悲惨な状況を知った生徒たちは、この日を境に変わっていく―。 (公式HPより)
中心となる生徒の一人マリック役のアハメッド・ドゥラメ自身の体験をもとに、学校から見放された問題児たちの集まるクラスが、ベテラン教師の情熱によって次第に変化していく様を描いた作品です。
フランスは多種の移民が暮らしているという社会背景があります。落ちこぼれクラスが舞台なので、劣等生たちの学校や社会に対するやり場のない怒りの他に、生徒同士の民族・宗教的対立も描かれます。そんなまとまりのないクラスをアンヌ先生は全国歴史コンクールの入賞という目的に向かって結束させていくのです。
最初は課題の「アウシュヴィッツ」というテーマ(ナチス政権下のユダヤ人やロマ族の弾圧)は難しすぎると生徒から不満が噴出します。けれどネットや本、強制収容所の記録が保存してあるミュージアムの見学を通して、茶化した言動も影を潜め、彼らの中でどんどん学習意欲が高まっていきます。その最大のきっかけは強制収容所の生き残りのレオン・ズィゲルの証言です。彼の話す恐怖と希望の体験、ホロコーストの記憶は生徒たちの人生をひっくり返すインパクトがありました。バラバラだった彼らが、自主的に情報を集めてまとめあげるためのグループ分けをしたり、コンクールが終わったら犠牲者への追悼の白い風船を飛ばそうと発案するあたりはかなり感動的です。
歴史を学ぶということは真実を知るということであり、自らの意思で考えることの大切さを教えることこそが教育なのだとこの映画は突きつけてきます。自国の歴史に蓋をして無かったことにするのではなく、その汚点をしっかり見つめて未来に過ちを繰り返さないという強い意志を持つことこそが平和への道だと思うのだけど・・・翻って私たちは彼らに胸を張れる教育を受けてきたかしら?