杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ハッピーエンド

2018年11月17日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2018年3月3日公開 フランス=ドイツ=オーストリア 107分

カレーに住むブルジョワジーのロラン家は、瀟洒な邸宅に3世帯が暮らす。その家⻑は、建築業を営んでいたジョルジュ(ジャン=ルイ・トランティニャン)だが、⾼齢の彼はすでに引退している。娘アンヌ(イザベル・ユペール)が家業を継ぎ、取引先銀⾏の顧問弁護⼠を恋⼈に、ビジネスで辣腕を振るっている。専務職を任されたアンヌの息⼦ピエール(フランツ・ロゴフスキ)はビジネスマンに徹しきれない。使⽤⼈や移⺠労働者の扱いに関しても、祖⽗や⺟の世代への反撥があるものの、⼦供染みた反抗しかできないナイーヴな⻘年だ。またアンヌの弟トマ(マチュー・カソヴィッツ)は家業を継がず、医師として働き、再婚した若い妻アナイス(ローラ・ファーリンデン)との間に幼い息子ポールがいる。その他、幼い娘のいるモロッコ⼈のラシッドと妻ジャミラが住み込みで⼀家に仕えている。一家は、同じテーブルを囲み、⾷事をしても、それぞれの思いには無関⼼。SNSやメールに個々の秘密や鬱憤を打ち込むだけ。ましてや使⽤⼈や移⺠のことなど眼中にない。そんな家族の中、ハネケは祖⽗ジョルジュと疎遠だった孫娘エヴ(ファンティーヌ・アルドゥアン)の再会に光を当てる。⽼いた祖⽗は、意に添わぬ場⾯ではボケたふりをして周囲を煙に巻きながら、死の影を纏うエヴのことも実はちゃんとお⾒通し。⼀⽅、幼い頃に⽗に捨てられ、愛に飢え、死に取り憑かれたエヴもまた醒めた⽬で世界を⾒つめている。秘密を抱えた⼆⼈の緊張感漲る対峙。ジョルジュの衝撃の告⽩は、エヴの閉ざされた扉をこじ開ける―――(公式HPより)

 

ミヒャエル・ハネケ監督作。難民が多く暮らすフランス北部の町カレーを舞台に、不倫や裏切りなどそれぞれに秘密を抱えた3世代の家族の姿を描いた人間ドラマということですが・・・

冒頭、スマホの録画画面が映されますが、これはエヴの心の闇を表しているんですね。母親が薬の過剰摂取で入院(後に死亡)したことでエヴは父親の家に引き取られることになるのですが、愛に飢えたエヴを父は満足させてはくれません。そもそも母親のことにしたって、エヴが絡んでいるのは確実でしょう エヴは父が誰も本当には愛せない人間であると見抜きます。PCののぞき見や電話の会話に聞き耳を立てる姿はおよそ子供らしさのかけらもありませんが、幼い頃から十分愛されて来なかった者の切迫した感情の発露と見れば何だか切ない気がします。

ロラン家の面々も、それぞれが秘密を抱えていて互いに無関心です。惚けていると思われていた祖父が、実はフリをしていただけで、自由の利かない身を持てあまし、自殺願望を持っているんですね 彼とエヴの間に交わされた会話もかなり衝撃的です。祖父はエヴの暗い闇に気付いていました。彼らの間に同志のような感覚が芽ばえるきっかけの場面でもあります。(公式さんでは「孤独な魂の会合が断絶した絆に血が通う瞬間」と表現されています。)

アンヌの息子のピエールの行動もイマイチよくわからなかった 次期社長の期待に応えられず能力不足を自覚している彼が、その矛先を移民問題にすり替えるかのような行動には、未熟さしか感じられなかったなぁ。 

ラストシーンで海に入っていく祖父をスマホで録画するエヴと、事態に気付いて駆けつける大人たちの対比が見事です。おそらくは失敗したであろう祖父の企みは、二人にとってどのような「明日」を運んでくるのかしら?

映画では住み込みの移民一家が登場しますが、彼らとロラン家の関係について根底にあるものは、社会背景を含めて当方理解不足です。

何故これが「ハッピーエンド」なのか・・・単純な思考回路の人間には難解な作品でした。


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