モノ作り・自分作り

東横線 元住吉 にある 絵画教室 アトリエ・ミオス の授業をご紹介します。
美術スタッフが、徒然に日記を書いています。

こどもの絵はメッセージ

2008-08-14 20:31:46 | スタッフ講師
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今年になって幼児クラスでは、年齢の小さいお子さんが見学にいらしたり入会する事が多くなり、3歳くらいのお子さんのお母様方からよく心配そうな声を聞きます。「同じ色のクレヨンばかり使うのですが・・・」「なぐり描きでどんどん重ねて描いてしまうので汚くなってしまいます」「絵の具や糊を手につけて遊んでしまいます」「いつ頃になったら人の形が描けるようになりますか」などなど、大人の目から見て何かの形に見えるような作品ができるまでは不安がつきないようですね。

でも、このいわゆるなぐりがきの時期や丸や線で表現する時こそ、幼児期のスタートラインとしてとっても大事だと思っています。絵にも発達の段階があって、さらに個人差もあるので、この時期をゆっくりと受け止めてあげてほしいです。

たとえば、絵画とクレヨンを食事とスプーンに置き換えて考えて、こどもが一人で食事ができるようになるまでの過程を思い起こせば納得できるかもしれません。スプーンを持たせても、ごはんを手づかみでぐちゃぐちゃにしたり、お茶を指で机にこすりつけびしょびしょにしたり・・・。しかもとても夢中になって真剣にやってますよね。つい、大人は怒ってしまうようなこの行為こそこどもの楽しみであって、手に感じた感触や物の変化が面白いのです。
そんな過程を経て次第に上手にご飯が食べられるようになっていく。クレヨンや様々な素材の感触を楽しむことからスタートして、その後なぐり描きの中にもよく見るといくつか丸が描ける様になってきたり、きれいな丸が描ける様になると丸と丸を組み合わせたり、丸と線で人を表現したり・・・・と絵の表現方法が変わってくるのです。このプロセスを飛ばさずに、ひとつひとつを楽しんでこども自身が納得していくことが大切だと思います。

このゆっくりとした段階をあせらずにその子のペースで思う存分描かせてあげて、ご家庭でもたくさん褒めてあげましょう。思い切り描いた経験のある子は、きっと自分の描きたいものをしっかりと描けるようになります。私は幼児クラスでは、こども達が頑張った過程やこだわった事、面白いアイデアなどを見逃さないように、見つけたらたくさん声をかけるようにしています。こども一人ひとり違う心のメッセージが作品に現れた時、一緒に共感できることは私にとっても非常にうれしいことです。

心も体も成長して、こどもの言葉が豊富な時期になってくると、絵の表現も随分変わってきます。
自分が見た事、経験した事を自ら「描きたい!」と思うようになってきます。
画用紙いっぱいに丸ばかり描いて、「これはお母さん」「こっちはりんご!」などと、一見どれも同じに見えるけど描いた本人にとってはひとつひとつ違うようですね。もしかしたら、その都度思いついたものを言ってるだけかもしれないし、隣り合う物同士関係のないものだったりするかもしれない。この「描けたよ!」というこどもの喜びが受け止められると、次の描きたいという気持ちにつながりどんどん絵が好きな子になります。

ある女の子は、画面の同じ場所に重ねて違う絵を描く時期がありました。よく話を聞くと、重ねて描く絵がちゃんと物語になっていました。仕上がりは色が重なって少々濁ったようになってしまったけれど、そこには描いた子の気持ちがたくさん詰まっていました。そんな時期が懐かしく、今では自分が描きたいものをひとつひとつ描けるようになりました。

工作でボンドを使う時、まるで手にクリームを塗っているかのように手がボンドだらけでその感触をひたすら楽しんでいるお子さんがいますが、きっと工作好きになりますよ!そういえば先週絵の具でスタンプした時、誰よりも手や足に絵の具がべったりついていましたっけ?!今後の作品が楽しみですね。

今日はものづくりのスタートラインに立ったお子さんの話が中心となりましたが、年長さんくらいになると、自分や家族といった人物がしっかりと描けるようになったり、物と物の大きさ関係を理解したり、また自分をとりまく周囲の環境まで表現できるようになってきます。(この時期の話はまた別の機会に・・・。)
こども達の絵を見ていると不思議とその子の気持ちを感じる事があります。絵を描きながら自分の世界をつくり、そこからイメージをどんどん広げていく力を持っています。工作だって同じです。このパワーが存分に発揮できるように、ものづくりの楽しさを知る第一歩を大事にしていきましょう!  伊藤



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