
高野辰之の“朧月夜”は教科書にも載っているので、皆さんご存知ですよね?
菜の花畑に 入日薄れ
見渡す山の端 霞ふかし
春風そよふく 空をみれば
夕月かかりて 匂い淡し
懐かしいような切ないような情景、この唱歌を思い浮かべてしまいました。
滲んで見えるのは花霞みか、潤んだ瞳のせいか…
と、こんな心の風景の滲みは、“洗い流し”という技法を使っています。
一度しっかり細部まで描いた後、水をたっぷり含ませた筆でゴシゴシと擦り、滲ませるというよりは洗い流して、雰囲気を出します。
その後乾かぬ内に大きくぼんやりとまた色を重ね、色調を整えます。
消してしまうなら最初から細部は描かなければいいと思われますが、この無駄に見える描き込みこそ、深い味わいに繋がるのです。
松岡さんの風景画から醸し出される味わい、どうぞ噛みしめて見つめて下さい。 オバラ