モノ作り・自分作り

東横線 元住吉 にある 絵画教室 アトリエ・ミオス の授業をご紹介します。
美術スタッフが、徒然に日記を書いています。

持ち主の人柄まで感じる絵

2024-02-09 20:53:13 | 大人 パステル・色鉛筆・他


近藤 色鉛筆

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、近藤さんの色鉛筆作品です。アトリエに長年置いてあるエンジニアブーツですので、今まで沢山の方が描かれています。その殆どが鉛筆デッサンでしたが、近藤さんは敢えてモノクロのモチーフを色鉛筆でトライしています。

色鉛筆の筆跡が見えなくなる程塗られた黒は、皮のしっとりとした質感や艶をよく表現しています。年季が入ったモノですので、使用感を出すために細かなシワや傷まで丁寧に描写されており、作者のこだわりが感じられます。私も学生の頃、運動靴のデッサンをした事がありますが、観察してみると使い古された靴に出来やすいシワの場所や、擦り切れやすい部分があり面白く感じたことを覚えています。なので、こちらの作品の光やシワの入れ方にとても共感してしまいます。
それぞれの素材の描き分けもお見事ですね。金属の明暗のメリハリや、茶色いラバー製ミッドソールの重量感もよく表現されています。色鉛筆は油彩や水彩に比べるとどうしても弱い印象になってしまいがちですが、紙の凹凸が見えなくなるほど描き込まれ、色鉛筆特有の繊細で柔らかな風合いが合わさり、目を離せない存在感が生まれました。作者の丁寧に制作に向かう姿勢が反映されている為か、このブーツを履いていた人の人柄までもを想像させてくれるようです。

ちなみに前回ご紹介した色鉛筆画はこちらです。前作のご自身の持ち物である思い入れのあるバイクや風景と違い、アトリエのモチーフを描かれていたので、冷静な目線で描かれている様に思います。是非様々な物に目を向けて、制作を楽しんで行って頂けたらと思います。

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あざやかな色が持つ力

2024-02-08 22:17:37 | 大人 油絵・アクリル


赤松 左-アクリル/ 右-油彩

寒さにかまけて寝てばかりでは体に悪いと、散歩するようになりました。マユカです!歩いているだけでも絵の題材になりそうなものは見つかるものですね。さて今回は赤松さんの作品をご紹介していきたいと思います!

今回紹介する2枚は、共に鮮やかな色彩が印象的でありながら非常に立体的、奥行きを感じます。ビビットな色合いに影をつけようとすると濁って見えてしまうことがしばしばあるものですが、鮮やかな部分の周りに落ち着いた色を持ってきたり、がっつりと暗い色をのせることで、更にその鮮やかさを引き立てています。

左の絵ではその相乗効果を使い、色とりどりな布で着飾った象たちがメインであることが一目でわかりますね。像使いの人間も目立ちはしますが、全員が同じ色をしていたり、奥に見える城は細かく描かれているものの強い日差しに照らされて煌々と輝いているため、神々しい様子を持たせつつ目立ちすぎないように抑えられています。明度がくっきりとわかりやすく手数の多さからも、自然と象たちへと視線が吸い込まれていくのでしょう。

また、右の室内の絵の方も同じように、床にはライムグリーン、傍には赤、天井付近にレモンイエローを配置することで、ビビットな色面の多い床から天井へと視線が移っていきます。誘導されることにより、平面に描かれた空間の広さを感じさせ、長く見ていても飽きの来ない作品になっているように思います。

今までアクリルや色鉛筆で制作されていた赤松さん。左のインドの絵はパネルに水貼りした紙にアクリルで手慣れた制作の印象ですが、右は麻のキャンバスに初めての油彩です。勝手が違うので、少々画材に翻弄されたようにも見えました。
昭和の白黒写真を元に、自由に色を想像して乗せられました。白黒写真に想像で色を付けてここまで立体的かつモダンな雰囲気を感じるのは、赤松さんの色遣いや元の写真の家具や柱の配置にモンドリアンのようなセパレートがあるからでしょうか。
思い切った色をのせるとやはり画面が映えますね。はっと目が覚めるような色彩は扱いが難しいですが印象にも残りやすく、華やかな印象を与えてくれるものです。差し色に使ってみたり、輪郭の隙間にチラリとのぞかせてみるだけでも大分印象が変わるため、皆様も作品制作中に「全体的な色味が地味かもしれない」と悩んだ際にはぜひ、ビビットカラーやビタミンカラー・ネオンカラーを使ってみてくださいね。

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自分から見た景色

2024-02-07 23:59:29 | 大人 油絵・アクリル


香月 油彩

昨日、久しぶりの雪にはしゃいで手のひらサイズの雪だるまを作りました。ナツメです。本日は土曜大人クラスより香月さんの作品を2つご紹介します!

左の絵はお孫さんたち、右は奥様のいる風景を描かれました。どちらもその場所でのやり取りやご家族の感情までもが浮かんでくるような、香月さんが描くからこその臨場感のある作品になっています。

まずは左の作品。空や木々、そして隙間なく咲いているヒマワリの鮮やかな色が夏を感じさせます。お孫さんたちのコントラストが強く真夏の眩しい日差しを感じる一方で、奥の風景にはあまり明暗の差をつけないことで遠近感も出ています。私は花畑に行ったことがないのですが、これほど一面を埋め尽くすようにヒマワリが咲いている様子はさぞ壮観なのでしょう。背が高い植物なので、小さい子供から見たら余計に印象に残る風景になったのだと思います。そんなお孫さんたちの感銘まで背中から伝わってきます!

そして右の奥様を描かれた作品は、打って変わって少し大人びた色合いになっています。先ほどの作品では色遣いから夏の日差しや子供ならではのパワフルさも感じさせましたが、こちらは奥様の落ち着いた雰囲気が描かれていますね。どちらも晴天、花畑というシチュエーションですがこうも印象が違うのは、元の写真がそうだったからというだけではなく香月さんが描く対象に合わせてコントロールもなさっているのでしょう。ドアのパースも綺麗に取れており、自然物に囲まれた中で更に直線が効果的になっています。

どちらの作品にも、まるで私も一緒にこの場へ行ったかのように錯覚させるほどのリアルさがあります。制作中も、見た景色やそこに行くまでの道のり、ご家族との会話などを思い出されたのでしょう。愛がなければ描けない作品というのはこういうものなのだなあと、香月さんの記憶一つ一つを大切にされる心に、思いを馳せました。

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表情豊かな風景

2024-02-06 22:05:50 | 大人 水彩


釘宮 透明水彩

関東でも大雪になる程の突然の寒さに驚いています。サヤカです!

さて、今回は大人クラスの釘宮さんの作品を紹介します。いつも季節に沿った風景を選ばれていますが、こちらは12月に入る前に完成された秋の清水寺です。これまでも四季折々の自然と日本ならではの建築物を描いてこられましたが、今回は秋がテーマということで、鮮やかな紅葉と存在感ある清水寺が印象的な一枚ですね!修学旅行で訪れた秋の清水寺の美しさに胸を打たれた思い出をふと思い出しました。

崖の上に建てられた清水寺は、何百本の欅の柱に支えられ、木々の中から堂々と本堂が現れるというような清水寺ならではの魅力を持っています。その魅力を最大限に活かし、木々をアバウトに描くことで、清水寺に目が向くようになっています。陰影もかなりしっかり描かれていて、正面からの画角にも関わらず奥行きを感じられます。以前のナツメ先生がブログで、釘宮さんのことを「緑色の専門家」と呼ばれていましたが、今回の作品も緑の使い方がさすがです!清水寺の背後の木々は、清水寺を引き立たせるためにぼんやりと描かれていますが、紅葉の赤色をアクセントに使い、表情豊かな山が表現されています。

釘宮さんは、現在菜の花畑の広がる春の絵を制作されています。次回も日本の四季を感じられる美しい作品を楽しみにしています!

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30周年記念制作

2024-02-05 20:44:08 | 小学生 工作

オバラです。お陰様でミオスは6月に30周年を迎えます。そこで小学生に、おねだりしました。

「皆からお祝いの花輪が欲しいです!カラフルな紙で周りの葉のような飾りを、中央の花はカラーセロファンで作り、モールを巻き付け、ミニイーゼルに飾りましょう。どうぞド派手にお願いします!
花輪は2月中の1ヶ月間、外の踊り場・階段に飾り、道行く人に自慢させてください!3月に返却します。」

できた花輪はこちら。今時パチンコ屋さんでも見掛けませんが、ちょっと楽しいでしょう?外に置いても大丈夫なように、水に強い素材を使いました。
返却する時は無地のプレートをあげますので、家族のお祝い事に使うと喜ばれるかも?(私も知り合いの店の10周年と60周年記念に差し上げましたが、爆笑でもらって飾って頂けました。)

絢爛豪華(と言うより数で勝負?130個!)な花輪に、商店街を歩く人がみんな足を止めて見ています。入口前の道路を掃除していると、見ず知らずの方からお祝いの言葉を頂くこともしばしば。もうしばらく見せびらかすつもりですので、ぜひ生で見てくださいネ!

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純度が高い作品

2024-02-03 17:23:09 | 大人 油絵・アクリル


山田 アクリル

岩田です。本日は、山田さんの作品をご紹介します。

こちらは、前回描いたフクロウに続く第二弾。
前回のフクロウはとてもキュートな印象でしたが、今回は、落ち着いた大人のフクロウといった感じ。自然の側からこちらの人間達の営みを只耽々と見つめているといった印象。

何と言っても、私はこれを描きたくて描いている、ってのが素直に伝わってくるんですね。
緻密に描けば描くほど技巧的になりすぎて、そのテクニカルな面に目が行ってしまうのですが、山田さんの描く絵はそうした類のものちょっと違う気がします。
描いているのだけれど、表面的ではない、生き物が待つ霊性のようなものが滲み出てくるかのようです。
それは多分、このフクロウを見た時の最初の強烈な印象を絵を描き終えるまで、ずっと胸に留めたまま描き切ったからでしょう。

決して小難しいことは考えておらず、ズバっと直球で入ってくる感覚。
画面も理路整然としていて無駄がない。展覧会で出品された粘土のゴマアザラシもそうですが、自分の心に限りなく正直だからこそ、作品の純度が高いのです。

これからも、自身の意思に只々素直に。描きたいものを描いて下さい。

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古めかしくも美しい街

2024-02-02 20:56:37 | 大人 水彩


佐藤k 透明水彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは佐藤さんの水彩画です。ドイツのハイデルベルクの街を描いています。旧市街の奥には赤砂岩のハイデルベルク城が見えますね。ドラクエやゼルダの様な中世ファンタジーゲームで育った私はこの光景にとてもワクワクしてしまいます。笑
以前紹介したこちらの絵の、反対岸から描かれたものだと思います。ネッカー川に架かるカール・テオドール橋はドイツで最も古い橋の1つだそうです。また、ドイツで最も古い大学のハイデルベルク大学もこの街にあります。その下には長い輸送船が通っており、古都にいきなり現代が入り込む不思議な光景ですね。

バーントシェンナの屋根が並ぶ中、ウルトラマリンがアクセントに塗られています。(右側のウルトラマリンの屋根の建物は聖霊教会でしょうか)同じ角度から撮った写真を見ましたが、実際にここまで鮮やかな屋根は存在しなかったので、作者の工夫が入っているのでしょう。奥へと行くにつれ彩度を落とした絵の具を薄く塗っていく事で、空気の層を作り遠近感が作られています。作品の観る人の視線が、手前の橋から街へと渡り、ウルトラマリンの屋根を伝い、森の奥へと誘導されて最後に城へとたどり着く様に導かれていっていますね。

以前と作品と比べますと、より透明水彩の色合いを生かした透明感のある仕上がりとなっていると思います。太陽の光や澄んだ空気が感じられ、より画面の中の街の息遣いが伝わってくる様です。水彩絵の具は色を重ねすぎても濁ってしまうので、やめ時の見極めが難しいものですが、そのタイミングをマスターしてきているのではないでしょうか。次回も鮮やかな作品をお待ちしております。

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深みを増すための工夫

2024-02-01 22:55:40 | 大人 油絵・アクリル


置田 油彩

休みの日はいつにも増して布団から出られないマユカです!
本日は置田さんの作品をご紹介していきたいと思います。

前回1枚目の油絵からの成長が著しい2枚目の作品は、力強いまなざしをこちらに向ける男女。レコードジャケット?を見ながら描きましたが、そのままではなく、省いた部分やトリミングした場所(本当は二人の顔がきちんと入っていました)も多々あります。男性を思い切って見切ったことより、女性の顔が際立ち、強い光(白やペールトーンの色)を描かずとも影の濃さで、西洋の凹凸の多い顔が立体的に表現されました。女性のキッと見据えるような鋭い視線に、視線が吸い込まれていくようです。奥にいる男性も、身体が影で覆われるほど顔だけに強い光が当たっているように描かれているため、ホリの深さや鋭く力強いまなざしが強調されて見えてきます。
背景は黒のみではなく青緑をほのかに感じる色が混ざっており、単色には見えないところが素晴らしいですね。単色の背景はポスターのようになって圧迫感が出ることも多いのですが、置田さんの乗せた黒は手を差し込んで奥へ伸ばせそうな奥行きを感じます。シンプル故にメインの人物が引き立てられるような背景で、厚塗りによるリアルなタッチが際立ち、作品の魅力を更に増しているように思います。

写真と絵では、構図の作り方は似ているものの、色味や雰囲気といったものは、写真そのままに描き写すことがかなり難しく、色味や形にちょっとした差が必ず生まれてしまうものです。その差が温かみや奥行きを感じる深みのある雰囲気に繋がるのですが、全く同じような色を使うだけでは表現しきれないのが絵の難しい所ですね。意図して鮮やかな色を入れたり、反射光を作るなどすることで雰囲気を統一したり、ごちゃっとして見せないようにあえて省いたりと、全体の写真から絵に描きおこす為に、よりカッコいい・美しい・見栄えがする構成の絵作りが必要になってくるのです。

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