近藤 色鉛筆
大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、近藤さんの色鉛筆作品です。アトリエに長年置いてあるエンジニアブーツですので、今まで沢山の方が描かれています。その殆どが鉛筆デッサンでしたが、近藤さんは敢えてモノクロのモチーフを色鉛筆でトライしています。
色鉛筆の筆跡が見えなくなる程塗られた黒は、皮のしっとりとした質感や艶をよく表現しています。年季が入ったモノですので、使用感を出すために細かなシワや傷まで丁寧に描写されており、作者のこだわりが感じられます。私も学生の頃、運動靴のデッサンをした事がありますが、観察してみると使い古された靴に出来やすいシワの場所や、擦り切れやすい部分があり面白く感じたことを覚えています。なので、こちらの作品の光やシワの入れ方にとても共感してしまいます。
それぞれの素材の描き分けもお見事ですね。金属の明暗のメリハリや、茶色いラバー製ミッドソールの重量感もよく表現されています。色鉛筆は油彩や水彩に比べるとどうしても弱い印象になってしまいがちですが、紙の凹凸が見えなくなるほど描き込まれ、色鉛筆特有の繊細で柔らかな風合いが合わさり、目を離せない存在感が生まれました。作者の丁寧に制作に向かう姿勢が反映されている為か、このブーツを履いていた人の人柄までもを想像させてくれるようです。
ちなみに前回ご紹介した色鉛筆画はこちらです。前作のご自身の持ち物である思い入れのあるバイクや風景と違い、アトリエのモチーフを描かれていたので、冷静な目線で描かれている様に思います。是非様々な物に目を向けて、制作を楽しんで行って頂けたらと思います。