170311 高齢者の運転とサポート <認知症対策の改正道交法、Q&Aで確認>を読んで
今日は東日本大震災から6年目ということで、毎日記事では、震災記事が満載かと思ったら、南スーダン陸自撤収と森友学園問題が大きくクローズアップされ、複数面で取り扱われていました。
午前中は打合せと歯科医に行かないといけないし、午後もいろいろ予定があって、どうもブログを書く時間がとれそうもないと思い、合間を利用して、ちょっと気になっていた見出しのテーマを取り上げて簡潔に仕上げたいと思っています。
改正道路交通法は、明日3月12日に施行となっていますので、75歳以上の高齢者の方で日常的に運転している方は、免許更新時などで、場合によっては大変な状況になるかもしれません。
ところで、私自身はまだその年齢に達するには時間がありますが、ドライブに自信があるわけでもなく、体調不調の時は危険性を感じることもあります。そういう一方で、時折、ちょっと危ない運転を見かけることもあります。
最近の例では、たまたま前を走行している自動車、スピードが毎時50kmのところを40kmないし45kmくらいの少し遅めに運転していて、地方では時折あることなので、その後をのんびりとついていきました。ゆっくり運転すること自体は危険性が高まるわけでなく、自制心があるものと理解していますので、リスク回避としては望ましいのではと思っています。ところが、その車、センターラインを超えて右側の車線にかなり入り込んで運転するのです。割合広い道でしたので、対向車が軽自動車や普通車だと道路端を運転すればすり抜けが出来るので、特段の危険はありませんでしたが、やはり対向車としては驚くでしょう。
対向車が大型トラックのときはひやっとしました。そのときはセンターラインを少し超えた程度でしたが、トラックの方は道路幅一杯に近い状態でしたので、なんとかすれ違うことができたのですが、どうも前方車は自分が右側に寄って運転していること、ましてやセンターラインを超えていることを理解できていないのではと思うようになりました。途中で信号機で止まれば少し注意をしてあげようと思ったのですが、その機会もなく別の方向に分かれて走っていきました。
この運転手が認知症かどうかはわかりませんが、居眠り運転とかではないと思います。居眠り運転というか、一瞬眠気がさして運転しているような場合、右に寄れたり、左に寄れたりする走行を見ることがたまにあり、そういう場合はそうではないかと思うのです。しかし先の右に寄って走行する運転の場合はなにか認識機能に異常があるのではないかと思ってしまいます。いずれにしても医師に診てもらった上で運転してもらうのでないと、対向車としては危なくて仕方がないと思います。
それでなくても高齢者で認知症ないしその恐れのある方による運転事故が多発している状況は、改正道路交通法で一定の対応がされることになり、少し改善の方向が見えてきたのかと思うのです。
ただ、見出しの朝日記事では、<免許更新時などに受ける認知機能検査で「認知症のおそれ」と判定された75歳以上のドライバーは、医師の診断が義務づけられます。認知症と診断されたら、公安委員会が免許取り消し(停止)処分をします。>と掲載し、以下のようなQ&Aを用意して読者の期待に一定程度応えていますが、高齢者にとっては不安は残るようにも思います。
Q 医師の診断が必要となったら、受診の費用は誰が持つの?
Q 診断結果がでるまでは運転できるのだろうか。
Q 診断が微妙なボーダーラインの人は?
Q 診断による取り消し処分と自主返納との違いはあるの?
Q 医師の診断を受けなかったら?
Q 認知症の心配がある家族が運転を続けているといった免許に関する相談はどこにすればいい?
また、同記事では、<■運転にあらわれる認知機能低下「早期発見チェックリスト30」>として具体的な質問リストをあげ、<五つ以上にチェックが入った人は要注意。専門医の受診検討を!>と警告していて、それ自体は一つのリスク回避としては参考となります。ただ、改正法の手続きとどう関係するのか少しわかりにくい印象を持ちます。
で、この点は、「介護の123」というウェブ情報では、<改正道路法の「高齢者認知症のポイントを解説>でわかりやすく、具体的な検査内容が分かる資料も用意していますので、参考になると思います。
たとえば「講習予備検査(認知機能検査)検査用紙」(内容は場所によって変更があるようです)を見ると、長谷川式簡易知能評価スケールを参考にしたような内容の質問への答える方式ではないかと思います。
この検査の結果の点数に応じて、第1分類から第3分類に区分され、それぞれ49点未満、49点から76点未満、76点以上に分類され、第1分類だと臨時適性検査か主治医等の診断書提出の義務が発生します。
ところが、認知症の診断は専門医でも難しいとされていて、その問題を<道路交通法改正認知症診療担う医療現場の声は>で取り上げています。
<認知症の診断では、生活状況の聞き取りや脳の内部の画像診断、それに認知機能のテストなどを組み合わせ、1人当たり1時間半ほどかけて検査しています。このため、1日に検査できるのは4、5人程度で、認知機能のテストの予約は3か月待ちの状態だということです。>これは宮崎県国富町の病院に勤務する認知症の専門医、岡原一徳医師の話しです。
そのため医師の診断書が必要とされた場合1ヶ月以内に提出義務を定めているようですが、診断書を出すの3,4ヶ月くらいかかることもあるとのことで、現場で混乱が生じるおそれを指摘しています。
それだけではなく<岡原医師は「特に軽度の認知症の場合は、病気の認識がない人がほとんどで、交通違反もないのに、医師が『認知症なので免許は更新できません』と一方的に伝え説得するのは、非常に難しいケースも出てくるのではないか」と指摘しています。>この問題の方がより深刻だと思います。
私自身も仕事で相当数の認知症ないしその疑いのある方の仕事をしましたが、多くはその意識がない方です認知症診断を受け入れ、治療を継続されている方は一人で弁護士に相談に来たりすることはまずないでしょう。そのような方が問題にする事情は、丁寧に話しを伺い、と同時に家族の方からも話しを伺うなどして、裏付けがあるものかどうか、それを慎重に理解してもらえるよう話すのは簡単ではありません。
いずれも70年、80年以上、自立して生活を送ってきた方ですので、自分が認知症という意識は仮に内心おそれを抱いていたとしても、他人から指摘されてはいわかりましたという人はいません。それが医師でも容易ではないでしょう。
とはいえ医療側も改正道路法を受けて、受入体勢づくりをしているようです。その中で指摘される問題も深刻です。<涌谷医師は、運転免許証がなくなると、患者の生活を一変させることにもつながるとして、「車がなくなったときにその人の生活がどうなっていくか想像を働かせながら診断することが必要だ」と述べ、診断後の患者の生活を支えるためのフォローが大切だと強調しています。>
この点は、認知症と運転能力というか運転上の危険性とは直ちに直結するかについては、まだ明確な知見がないように思うのですが、私がきちんと調べていないのでそういう疑問だけ提示しておきたいと思います。認知症のレベルは先に述べた3つ、正確には2つのレベルだけでは運転上の危険性と直結するか否かや、その後の診断でも専門医といえどもそのような知見が確立していないように思うので、簡単に診断できないおそれを感じています。
また運転しているとさまざまな知覚や脳機能が活発に働くでしょうから、かえって軽い認知症の場合その進行を遅らせる可能性もあるように思うのです。
いずれにしても医師の診断が診断需要の増大とともに、ますます適切な個別的判断を難しくするかもしれません。それに対して、専門医でない医師のために、支援ソフトも開発されているようです。
それは<はじめに、本人か家族などに「物をどこに置いたかわからない」「信号機の赤・黄・青の意味がわからない」など、記憶や行動などに関わる69の項目について答えてもらいます。回答を入力すると、最終的に「認知機能」と「運転機能」の2つの指標で点数化され、一定の基準を超えると、「運転免許証の返納をおすすめする」状態と判定されます。>
むろん最終責任は医師が負うわけですが、それでほんとに支援になるかは、今後の運用実績をみないとなんともいえません。
といろいろのウェブ情報をとりあげて、改正道路交通法の運用予想や今後の予想に言及しましたが、私の実体験で指摘したのと絡めると、高齢者の運転状況をドライブレコーダで実際にチェックすることがより有効ではないかと思っています。
たしかにすべてのドライブ状態を見るのは大変ですが、定期的に見ること、見るのは本人と家族ということで、その内容を報告してもらうことの方が実践的で費用的にもリーズナブルで、いいのではないかと思うのです。
単身高齢者はどうするのかとか、いろいろ問題はありますが、支援者のサポート得るなり代替方法はあると思うのです。
医師の認知症診断に依拠しすぎるような法制度では、高齢者事故への対応として有効か、まだ躊躇を感じています。認知症だけが危険ドライブの原因といえるか、昨今の病院敷地に突っ込んだタクシー運転者の例など、もう少し高齢者事故の原因調査をしてもよいのでと思っています。それは専門医への過度の負担にもなりかねないこの改正法制度の根幹にも関わる問題かと思っています。時間がないので不十分ですが、これ今日は終わりです。