たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

災害時の福祉とは <福祉避難所 102市区調査 専門員、配置困難7割>を読んで

2017-03-15 | 災害と事前・事後

170315 災害時の福祉とは <福祉避難所 102市区調査 専門員、配置困難7割>を読んで

 

高野山の方から黒々とした雲が伸びてきてこれは雨雲だと思いきや、紀ノ川当たりから和泉山脈にかけて薄青色の空が広がっていて、どちらの勢力が強いのかしらと思いながら、夕方になっても雨模様にもならなかったので、どうやら後者に軍配があったようです。

 

そして今日も打合せなどで時間がとられ、いつの間にか夕方になっています。もう一件、相談を予定しているので、はたしてブログを書ける余裕があるかしらと思いつつ、隙間をぬって、見出しの記事に関連する内閣府のガイドラインを読んで、少しは書けるかもと思いつつ、タイピングを始めています。

 

さて見出しの記事、「福祉避難所」の整備・運営などに課題がある状況を取り上げています。東日本大震災の際、とくに福島第一原発事故付近の病院や特養施設など、支援を特に必要とする人たちが取り残されていたことが話題になったことを思い出します。というか災害があると、多くのいわば自力で避難できないような災害弱者といわれる人たちが取り残される危険性が高いことはだれでも容易に分かります。

 

他方で、福祉施設や病院に入所している人については施設職員がそれでもできるだけの対応をしてくれるでしょうが、自宅で療養していたり、障害や病気を持ちながら施設や病院の空きをまつために待機している人、その他幼児や妊婦、高齢者・認知症の人など大勢は、必ずしも支援の手がとどく対象に入っているとは限りません。おそらく漏れている人が多数ではないかと思うのです。

 

その意味で、毎日記事が取り上げた福祉避難所および関連する情報の調査結果は、災害時の福祉的配慮がほとんど対応できていないのではないかと感じるモノです。

 

ところで、内閣府は平成28年4月、「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」について、ほぼ同じタイトルの平成20年6月のものを改定・修正して発表しています。東日本大震災の教訓を考慮して作成されたとしています。

 

この新ガイドラインにも福祉避難所の定義が書かれていますので、引用します。

 

「主として高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要する者(以下この号において「要配慮者」という。)を滞在させることが想定されるものにあつては、要配慮者の円滑な利用の確保、要配慮者が相談し、又は助言その他の支援を受けることができる体制の整備その他の要配慮者の良好な生活環境の確保に資する事項について内閣府令で定める基準に適合するものであること。」(災害対策基本法施行令第20条の6第5号)

 

対象となる要配慮者のうち、「その他の特に配慮を要する者」については次のようにガイドラインで記載されています。

 

妊産婦、傷病者、内部障害者、難病患者等が想定される。

 

福祉避難所で受け入れる対象者の範囲が相当広いことがうかがえます。いずれにしてもそれぞれ災害時に自力で避難することが容易でない人たちであることは理解できます。一般の避難所ではさまざまな支障があり、そこで滞在することに困難となることも想定できるので、このように対象を広げることにとくに異論はありません。

 

問題は、毎日記事が見出し記事以外でも、取り上げているように、この福祉避難所の指定を含む体勢がほとんど進んでいない状況です。

 

たとえば、ウェブサイトで各地の情報をとろうとしたら、なんと改定前の平成20年版をどうどうと掲載しているものばかりがでてきました。内閣府の周知徹底がどの程度のものかこれでもわかります。

 

むろんガイドラインを新基準に合わせて策定することで足りるわけではありません。しかしそれすらできていないということは、実際の福祉避難所の整備や専門家の配置、多様な期間との情報共有、訓練といった基本的な作業も行われていない可能性が大であることも見えてきます。

 

毎日記事が指摘している福祉避難所の指定が進んでいないことも問題ですが、専門家の配置は当然それ以上に進んでいないことも問題です。元々ガイドラインの基準が要配慮者10人に1人の割合ということ自体、ナンセンスとはいいませんが、多様な種類の要配慮者の特性に応じたものでないのですから、この基準に適合する専門家の配置があっても、災害時に福祉避難所が有効に働くと考えることはできません。

 

障害者といっても知的障害の程度や特質によって、それぞれ専門的対応が異なります。身体障害の種類や程度でも同様です。これを一派一絡げで扱うような基準でいいとは思っていないと誰もが考えるでしょう。おそらくガイドライン作成にあたっても、その点は理解しつつ、災害時に各種専門家を個々に集合させることは現実的でないことを考慮したのかもしれません。むろん最悪の事態を考えれば、そうでしょう。しかし、災害と言ってもいろいろなレベルがあるわけで、この最低基準さえ満たさない状況を改善することはもちろんのこと、ガイドラインで取り上げられている多様な専門家が相当数確保できるよう事前に検討し準備することこそ大事ではないでしょうか。

 

また、要配慮者の台帳を整備することも一つの措置のようですが、災害発生前に、できるだけ要配慮者の氏名・住所・年齢・特徴といったことだけでなく、その配慮事項を、たとえばチェックシートなどで申告してもらい、台帳として整備しておくことも検討してよいのではと思うのです。

 

そして誰が誰かがわからないのが災害時の混乱状況でしょうから、要配慮者にはできるだけマイナンバーかそれに代わる個人識別カードのようなものを携帯してもらうことも混乱回避の一つではないかと思うのです。

 

災害時の有効手法とされる、トリアージは、この福祉避難所や一般の避難所において、要配慮者向けに簡便な基準で代替することも大事でしょう。

 

問題はそのほかたくさんあると思いますが、自宅にいたり、外出中の要配慮者が福祉避難所にきちんと避難できる手法が検討されていないと、福祉避難所ができても、専門家がはいちされいても、意味がありません。まずは福祉避難所までのルートや運搬手段を確保することが大事でしょう。といっても当該ルートのどこかで災害があれば、途端に行き着くことができなくなるでしょう。その意味で、福祉避難所やルートをできるだけ事前に周知徹底するとともに、災害時に支障がないかの情報提供も随時行われないと意味がないでしょう。

 

と個人的な思いを書き連ね、折角のガイドラインの内容の紹介もしないでここまできました。もう帰る時間となり、またいつか(これが多いのですが)ガイドラインの内容を踏まえて議論してみたいと思います。