170611 これからの林業 <NHKおはよう日本 日本の林業・・>を垣間見て
今朝も明るくなった5時前に目が覚め、一時間ばかり「この国のすがたと歴史」を読みながら、ふと対談者の網野善彦氏と森浩一氏が1928年生のおないどしだったんだと気づきました。網野氏はだいぶ以前から歴史学者として知っていたのとかなり前に物故者となられていたこと、他方で、森浩一氏は私が当地にやってきて古墳から古代に関心を持つようになって知って間もないこと、最近永眠されたことから、網野氏の方がずっと年上と勘違いしていました。どうでもいいことですが、28年生の方をこれまで存じ上げている方はいずれもユニークな方ばかりで、独自の価値観を信念をもって保持されつつも、柔らかい受容性もお持ちの人が多いなと感じていました。このお二人の対談は次々と話題が展開していきますが、お二人の響き合いがとてもいいです。
たとえば日本人の言語能力における特異性というか、高度さについて、いろいろな角度から議論していますが、漢字が使われたのは仏教伝来以降ではないかといった説に異論を述べます。魏志倭人伝の中に、倭国の人の名前が一人、一人書かれていて、その中の漢字は中国では使われていない文字があるそうです。それに名前がそれぞれにあり、漢字で書かれていたということ自体、相当以前から漢字が使われていた証の一つではないかといったことです。
また識字率の高さでは、世界的にも異例のようです。とりわけ女性も男性とともに高いことが素晴らしいですね。その要因の一つに、寺子屋に類似する制度が江戸時代に起こったのではなく、室町時代か、鎌倉期にすでにあったとのこと。そして男女の差なく学んでいたというのです。
いろいろ興味深い話が多いのですが、その一つ、外国に行ったとき贈答品をたくさんいただくのですが、なぜか日本人はそれを書物に変えて持ち帰るので不思議がられていたのです。書物の中に多様な新しい知識・技術・文化が書かれていて、そういう好奇心が旺盛なんだということですね。それは現代も似通っていませんか。私自身も、会話が得意でないため、大量の文献を買い求めたりして船便で持ち帰りました。でも仕事が忙しくて積んでおくだけとなり、私の場合には猫に小判でした。そこが空海さんとは比較ならない、凡人の浅知恵なんでしょうか。
さて、今日も新たに購入してきた花の苗を植え、囲碁トーナメント見て、ボッとしていたら、あっと今に夕方です。ブログのテーマはと新聞記事などを見ましたがあまり興味を覚えず、今朝、偶然見たNHKおはよう日本の、テーマは覚えていませんが、日本の林業の新たな動きを放映していました。若干、驚く内容です。
私のブログでも何度か日本の林業や森林の状況について取り上げてきましたが、丸太の価格が下がる一方で、搬出コストが高くなるばかりです。すでに伐期になっている拡大造林した針葉樹が日本中で放置され、他方で、安い外材が以前は東南アジア、最近は北米から西欧と、新たな林業システムで輸入が拡大する一方です。日本の林業はどうなるか、森林の荒廃は温暖化対策となりえない状況となっているというのが多くの懸念ではないでしょうか。
同じような問題を抱えている農業では、最近付加価値をつけて海外進出に大きく舵を切る農業者も増えてきています。でも林業の世界ではそのような声は聞こえてきません。わが国の急傾斜地では大型重機を活用して効率化を図ることができないとか、林業従事者の高齢化が極端に進むと同時に、人件費が生産性の割に高すぎるとか、原木市場では丸太利用が激減しているとか、マイナス情報ばかりです。
ところが、今朝のNHK番組でとりあげた、3つの例はいずれも果敢に新戦略にチャレンジしています。まず、木材輸出額は3年で3倍に拡大したというのです。
その一つ、たしか鹿児島県にある森林組合だったと思います。中国では建設ラッシュで、型枠用の材木が不足していて、わが国にも触手を伸ばしてきています。それに対応しようとしたのがその組合長でした。ただ、当初は中国が求める木材量が半端ではく、一森林組合ではとても供給できないものでしたので、うまくいきませんでした。そこであきらめなかった組合長は、競争が激しく、また、都道府県内での提携がせいぜいの状況の中で、鹿児島県内と宮崎県内の合計5つの森林組合で協議会を作り、共同出荷体制を確立し、旺盛な中国の要請に対応できる供給体制を作り、たしか何年間かは覚えていませんが、10倍くらいに増加したのではなかったでしょうか。
この仕組みは、昨年の森林法の改正で都道府県の境界を取り外し、本年4月施行のシステムを先取りしているといえるかもしれません。
次の手法は、付加価値をつけて輸出拡大を図った林業者だったと思います。いま韓国では伝統的な韓国式家屋が人気になっているそうですが、それは釘を使わない木造軸組工法のため、韓国ではそういった技量のある大工があまりなく、そのように柱や梁を作るだけで3ヶ月近くかかっているとのことでした。それを知った日本の林業者が、軸組が可能な製材機械を新たに作り、その機械を使えばわずか数十分でできあがるとのことでした。そいういう特殊な製材機械工場を用意して、大量に韓国向けに製材された木材を輸出し、どんどん増加しているとのことです。
もう一つは、中年くらいの方でしたか、大学でおそらく林業経営を学び直し、最新の林業経営の知見を踏まえて、新たな林業経営を展開している林業家が登場しました。彼はIoTを林業経営に導入しようとして、まずドローンを林地の上を飛ばして、その航空写真から林相・材積量・密度などを解析し、どの林相の森を間伐すればよいか、その場合にどの程度の材積量があるかなどを、科学的に把握する手法で進めています。通常の間伐の場合、まず状態把握のため人が入り、木々の状態や地形を把握しながら、どこに作業道をかいせつするかなどをも考慮していくわけですが、その人海戦術の場合、大量の人と時間を要しますし、危険も伴います。実際、測量中に崖から転落死した事故も発生しています。
ドローンによる解析はまず序の口で、多くの林業、とりわけ森林組合などでは、伐倒する木の種類や大きさに応じて、どの原木市場に出すか、あるいはC級材ないしは木質バイオマスとして出すかといった選別はしていますが、市場の動向をにらんだり、エンドユーザーなどの動向と連動して、伐倒木の選別や造材のやり方を現場で適宜振り分けるといったことまでは行っていません。
同じように急峻な山岳地帯を抱えるオーストリアやスイスのより洗練された高性能林業機械を使用して行っている作業では、機械操作室がエアコン付きで、しかもネットを通じて市場動向を画像情報で入手しながら、それに応じて、ハーベスターなどで、市場動向に応じて造材を行っています。
IoTを導入して林業作業を目指す彼も、わが国で先端的な林業経営のモデルとなるのではないかと期待しています。
さて、先に挙げた森林法改正は昨年の国会で成立し、本年4月1日から施行されています。でも共謀罪法案や加計学園問題などでマスコミが話題をさらっているため、地味なテーマのためほとんど関心が持たれていないように思います。
先日河川法改正20年の話題を取り上げました。以前、このブログかfbで農地法の大改正(平成大改革?)と取りざたされた割にはさほど大きな変化は生まれていないように思います。農業委員会は地味ですがわずかに変わりつつあるとは思いますが、耕作放棄地対策を含め社会的インパクトを与えるには至っていませんね。
さて今回の森林法改正、これも時折改正されていますので、今回の改正の目玉は何かというと、私自身は「林地台帳制度」、その公開化ではないかと思っています。
ただ、改正法が目論んでいるほど、うまくいくかどうかは懸念するところです。
そもそも現在の林地台帳は、農地台帳と同様に、現状を適正に把握したものになっていないのがほとんどか、きわめて多いでしょう。それをどのようにして現状調査を進め、公開に結びつけることができるかは、地籍調査がほんのわずかしか進展せず、それらの省庁間・自治体を含め共有化の制度化が大変かなと思っています。
農地台帳も林地台帳も、国民共有の財産としてのデータではないかと思うのですが、縦割り・地域割り・●●割で分断されてしまっている状態をどうすれば変わるか、国民的議論をすべきではないかと思うのですが、折角林野庁などもウェブ上は情報を提供していても、マスコミでさえあまり議論の対象となっていないように思えるのです。
ともかく少しでも関心のある方は次の情報にアクセスしていただければと思います。
もう1時間がすぎそうです。今日はこの辺で終わりにします。