たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

出産の痛みをなくす是非 <無痛分娩 リスクも考慮を>などを読んで

2017-06-25 | 医療・介護・後見

170625 出産の痛みをなくす是非 <無痛分娩 リスクも考慮を>などを読んで

 

今朝は中景にある丘の向こうに薄もやがかかり、高野の連峰は隠れていました。日が昇ったと思われる頃から次第に靄が薄れ、最初は紀ノ川南岸に迫る国城山など低層の山が薄もやの先に鮮やかに現れてきました。次第に高野の峰々もうっすらとですが遠望できるようになりました。このくらいのおぼろげな姿もまたいいです。

 

そして昨日買った花の苗と取り替えして持ち帰った事務所の花を、今朝は植えました。土壌がほとんど形成されていないので、堆肥を含んだものをだいぶ投入して、元気になってくれないかなと思いつつ花植をしました。農薬や化学肥料は禁忌?です。できるだけ自然に近い状態で育てようと思っています。ほんとは野草を育てたいのですが、まだその能力がないので、ま、腕試しみたいなものでしょうか。農薬などの副作用というか環境への影響は、レイチェル・カーソンが指摘して以来、わが国でも次第に意識が高まっていますが、消費者としての意識はあっても、自分が作物に関わるようになると、よく育ってもらいたいという気持ちが勝ってしまう人もいるでしょう。

 

さて、今日の話題ですが、見出しの無痛分娩について、出産の痛みとどう向き合うかという観点で、少し考えてみたいと思います。

 

私自身は、仕事上、四半世紀前くらいに、陣痛促進剤を投与された事例で赤ん坊が脳性マヒとなった事案を2件くらい担当したことがあります。当時、(その後もでしょうか)かなり同種事件が起こっていて、証拠保全して、ある産婦人科教授から意見をいただき、早期に医師の責任を認める和解が成立しました。その後カナダに留学したこともあって、医療事件もその後は一件を除きやらなかったこともあって、あまり事件そのものの記憶がありません。

 

その事件で感じたのは、陣痛促進剤(子宮収縮剤と類似しているようですが同じではないようです)を利用する目的として、医師はいつ何時、出産が始まるかわからない、それもどのくらいかかるかわからない、そのため24時間いつでも待機している必要があり、それはかなりきつい、自由が制約された状態への対応といった要請があったのではないかと記憶しています。医師は医療行為だけでなく、学会や医師会など多様な業務をこなしていかないといけませんが、出産期の妊婦が大勢入院していると身動きがとれないかもしれません。他方で、妊婦側も予定日どおりでないと不安なったり、出産がスムーズにいかないと心配にあるといった、双方のニーズもあったのでしょうか。

 

ところが実際はさまざまな理由で使われていたようです。そして分娩監視装置でしっかり妊婦の状態を監視していないといけないのに、血圧の異常な低下があっても、看護師が見過ごしたり、あるいは医師がどこかへでかけていなかったりで、その状態の悪化に適切に対応しないケースが、訴訟提起されていたように思います。

 

で、毎日朝刊の<ぷらすアルファ無痛分娩 リスクも考慮を>では、出産の痛みを緩和するために、局所麻酔をする、無痛分娩を取り上げています。

 

出産の方法については、自分の子どもの出産に際して、少し勉強しましたが、ほとんど忘れてしまいました。やはり男は無責任と言われても仕方がないかもしれません(いや、これは私のような男という限定付きですが)。私自身は、出産は自然がいいと思っていますし、痛みは仕方がないものと思っていましたが、やはり付き添っているとその大変さが肌で感じます。生まれてくるまで、不安ですし、痛みを訴える様子はこちらも耐えがたいほどです。

 

その点では、出産の痛みを緩和する無痛分娩という方法は、魅力的です。しかし、局所麻酔と言っても、<無痛分娩の方法として国内で主流となっている「硬膜外鎮痛法(硬膜外無痛分娩)」では、麻酔薬を用いてこの痛みが脳に伝わるのをブロックする。>というのですから、場所が場所だけにとてもリスクが大きいと感じてしまいます。

 

<「陣痛」と呼ばれる出産の際の痛みには、赤ちゃんを体外に出そうと子宮が収縮して起こる痛みと膣(ちつ)周辺が広がることで起こる痛みがある。>と2つの痛みがあるようですが、このブロックで2つに効くということでしょうか。脳への伝達を遮断すれば両者に効くんでしょうかね。

 

しかし、<硬膜外無痛分娩は、麻酔薬注入の際に誤って脊髄(せきずい)液の入っている袋の中や血管の中に麻酔薬注入用の細い管が入ってしまうことがある。それに気づかず、そのまま一度に大量の麻酔薬を注入してしまうと、麻酔薬が強く効き過ぎたり全身麻酔のような効果が出たりして、母親が意識を失う危険がある。>というのですから、やはり不安になりますね。

 

医師側にとっても、麻酔薬の注入による変化をしっかり見ながらその量を加減して続ける必要があるわけですから、普通の出産以上に、高度の注意義務が課せられるでしょう。それを流行だからと言って、きちんとした専門的知見や訓練をせずに施行してもらっては困りますね。困るではなくあってはならないことですね。

 

<実際の硬膜外無痛分娩では、陣痛が始まって子宮口が数センチ開いた頃、分娩台の上で横たわるか座った状態になった妊婦の腰付近から、脊髄を包む「硬膜」の外側に細い管を入れ、その後麻酔薬の注入を始める。薬の注入は、お産が終わるまで続けられる。>というのですから、大変な緊張の中で実施するのですね。

 

<作業は麻酔科医が担うこともあれば、麻酔科医が常駐していない施設では産科医が実施する場合もある。>というのですが、麻酔科医は通常、膨大な数の麻酔経験をもち、硬膜外鎮痛の効果もよく理解している人が一般でしょうけど、産科医でもできるということでよいのでしょうか。この無痛分娩についてガイドラインすらまだないということですので、安心して利用できるように対応すべきではないでしょうか。

 

他方で、里大病院周産母子成育医療センター産科麻酔部門の<奥富医師によると、無痛分娩のメリットは、痛みを和らげることで母親がパニックに陥らず、落ち着いて出産を経験できること▽痛みによる体の緊張が少なく、産後の体力回復が早いと考えられること--だ。母体の呼吸が安定して、出産時に赤ちゃんへの酸素供給量が増えるという研究結果もある。>

 

そして驚くのは、<厚生労働省研究班の調査によると、無痛分娩の実施率は、日本国内で推計2・6%なのに対し、フランスでは約80%、アメリカでも約60%と高い。>とわが国では昔ながらの我慢強い母親像や、産みの苦しみという刷り込まれた意識が影響しているのかもしれません。

 

むろんは私は、薬に頼らず、痛みに耐えて子を産む母親の姿に自然の美を感じますが、痛みを怖がって子を産まないとか、痛みでパニックになって赤子の健康に悪い影響を与える不安があれば、このような対応も選択肢となってもいいように思うのです。

 

ただ、きちんとした知見・技術・経験を持つ専門医が一定のガイドラインに従って行うことがリスク回避のために必要でしょう。

 

そうでないと、不幸な結果が発生し、場合によっては<無痛分娩訴訟また1件 京田辺の医院相手取り 地裁 /京都>といった事件になりかねません。

 

過去繰り返した過ちともいうべき<連載薬害事件ファイル⑥陣痛促進剤(子宮収縮薬)>は、避けてほしいものです。

 

生命の誕生はまさに神秘の世界でしょう。人為による介入で奇跡的な生命誕生を不幸な結果にならないよう、最大の注意を払ってもらいたいものです。

 

今日はこの辺で終わりとします。