<画像解説>
ブダペストの隠れ家:書斎にて
ブラハルーサーテールの地下鉄駅から徒歩3分、築170年、古いマンションの2F・2LDKである。ブダペスト市街の中心地にあるこの場所、仕事や移動のためのレスポンスは良いが、いささか喧騒な街中の住まい。しかし、一旦マンションの中庭から部屋にに入れば、誠に落ち着いた佇まいの閑静な隠れ家である。
さて、
今日も、すこしばかり「気分転換」したい。
いろいろ選択肢はあるが、時に、読書で気分転換を図るのもよいではないか・・・・
そんな時、お勧めの「一冊」があるのでご紹介したい。
林望(ハヤシ・ノゾム)氏の初期の著作:「イギリスはおいしい」・・・
我輩が林望氏を知りえたのは、他でもない渡部昇一先生との共著「知的生活シリーズ」の対談集の中である。
渡部昇一先生をして林望氏を最初に知りえたのは一体どうなのか?
なんと、
渡部先生のお嬢様(当時・大学生)が、食事も忘れて懸命に読書しているのをご覧になって、
「何を読んでいるのか?その本は面白いか?」
と、尋ねられたところ、お嬢さん曰く、
「おもしろい!読み出したら、もう止まらない・・・」
それで、渡部先生が、
「そんなにおもしろい本を読んでいるのなら一度自分も読んでみたい」
と、おっしゃって読まれたのがこの『イギリスはおいしい』の一冊であった、といういきさつがあること、我輩どこかで読んだ。
かくして渡部先生の目にとまり、読まれた挙句、
「ウム!この人物おもしろい」
その一言があって、
「是非この人物と対談し、その対談集を出したい!」
との意向を出版社に告げられたといわれる。
そうして出来上がったシリーズ知的生活関係の「対談集」であり、我輩それを読んで林望氏を知り得たのである。
すでにお読みになっている読者も多いと思うが、
そして、我輩の一言!
「ことのほか、稀にみる『名著』である」
著者の仕事柄、幾度にもわたって英国に旅し長期の滞在中に体験した「英国の食文化」について、歯切れの良い文章でつずられている。
我輩、じつを申し上げると、林望氏をプロの物書きとして多大なる評価をしているのだ。
確固たる理由がある。
まず、
1)林氏の記述個性が好きである。氏の著作の中でも、特に、この「イギリスはおいしい」が最高で出来である。彼の記述個性とは、すなわち彼独特の筆力であり、とてもとても半端な筆力ではない。すなわち男の書く美文の中のさらに美文である。我輩、もろてを揚げて絶賛する。
2)この著書の中身、すなわち題材に(出版当時<1991年3月初版>は特に!)特異性がある。イギリスの食の不味さは世界に定評がある。その食の貧弱さを乗り越え、皮肉にもイギリスはおいしいと題する林氏独特の食文化に対するふくよかな素養と歴史的経緯がある。おいしくないイギリスの食文化に自らが体ごと入り込み、切り分け裁き食し消化し、そうしてようやく「おいしい」と題する、彼自身の教養深さが満ち溢れんばかりの旺盛な知識欲とたぐいまれな資質の持ち主であると判断する。
3)イギリスの文化人家庭の中に入り込み、食生活と食文化を通して、中流の上のイギリス人社会を観察しきった上で、我々日本人読者に懐深くゆとりを持って紹介してくれる。
4)著書の要所要所に鉛筆描きまたはペン描きの簡素なスケッチ画が出てくるが、これの一々がなんともすばらしい作品なのである。おおよそこのたぐいの本には執筆家と挿絵画家が一対になり、一冊の本を創りあげるが、何と何と、どのスケッチを見ても林望氏のサインがあるではないか。最初にこの本を手にしたとき、にわかに信じがたかったのは、林氏の絵の上手さである。これまた半端な人ではない。
この出版の後、何故かチョイと調子に乗って「恋愛小説」を書いているが、これが最悪であった。彼は「恋愛」が語れない作家である。どろどろした男女関係が書けない『人』であるとみている、が、それはそれでよろしかろう。
年齢的にもほぼ同じ著者林望氏に対して、ついつい競争心対抗心が沸き立ちライバル意識が先行しがちであり、こういう人物とは素直に仲良くしたくないのであるが、しかし、林望氏は我輩にとって「いい男」の一人なのである。
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ブダペストの隠れ家:書斎にて
ブラハルーサーテールの地下鉄駅から徒歩3分、築170年、古いマンションの2F・2LDKである。ブダペスト市街の中心地にあるこの場所、仕事や移動のためのレスポンスは良いが、いささか喧騒な街中の住まい。しかし、一旦マンションの中庭から部屋にに入れば、誠に落ち着いた佇まいの閑静な隠れ家である。
さて、
今日も、すこしばかり「気分転換」したい。
いろいろ選択肢はあるが、時に、読書で気分転換を図るのもよいではないか・・・・
そんな時、お勧めの「一冊」があるのでご紹介したい。
イギリスはおいしい平凡社このアイテムの詳細を見る |
林望(ハヤシ・ノゾム)氏の初期の著作:「イギリスはおいしい」・・・
我輩が林望氏を知りえたのは、他でもない渡部昇一先生との共著「知的生活シリーズ」の対談集の中である。
渡部昇一先生をして林望氏を最初に知りえたのは一体どうなのか?
なんと、
渡部先生のお嬢様(当時・大学生)が、食事も忘れて懸命に読書しているのをご覧になって、
「何を読んでいるのか?その本は面白いか?」
と、尋ねられたところ、お嬢さん曰く、
「おもしろい!読み出したら、もう止まらない・・・」
それで、渡部先生が、
「そんなにおもしろい本を読んでいるのなら一度自分も読んでみたい」
と、おっしゃって読まれたのがこの『イギリスはおいしい』の一冊であった、といういきさつがあること、我輩どこかで読んだ。
かくして渡部先生の目にとまり、読まれた挙句、
「ウム!この人物おもしろい」
その一言があって、
「是非この人物と対談し、その対談集を出したい!」
との意向を出版社に告げられたといわれる。
そうして出来上がったシリーズ知的生活関係の「対談集」であり、我輩それを読んで林望氏を知り得たのである。
すでにお読みになっている読者も多いと思うが、
そして、我輩の一言!
「ことのほか、稀にみる『名著』である」
著者の仕事柄、幾度にもわたって英国に旅し長期の滞在中に体験した「英国の食文化」について、歯切れの良い文章でつずられている。
我輩、じつを申し上げると、林望氏をプロの物書きとして多大なる評価をしているのだ。
確固たる理由がある。
まず、
1)林氏の記述個性が好きである。氏の著作の中でも、特に、この「イギリスはおいしい」が最高で出来である。彼の記述個性とは、すなわち彼独特の筆力であり、とてもとても半端な筆力ではない。すなわち男の書く美文の中のさらに美文である。我輩、もろてを揚げて絶賛する。
2)この著書の中身、すなわち題材に(出版当時<1991年3月初版>は特に!)特異性がある。イギリスの食の不味さは世界に定評がある。その食の貧弱さを乗り越え、皮肉にもイギリスはおいしいと題する林氏独特の食文化に対するふくよかな素養と歴史的経緯がある。おいしくないイギリスの食文化に自らが体ごと入り込み、切り分け裁き食し消化し、そうしてようやく「おいしい」と題する、彼自身の教養深さが満ち溢れんばかりの旺盛な知識欲とたぐいまれな資質の持ち主であると判断する。
3)イギリスの文化人家庭の中に入り込み、食生活と食文化を通して、中流の上のイギリス人社会を観察しきった上で、我々日本人読者に懐深くゆとりを持って紹介してくれる。
4)著書の要所要所に鉛筆描きまたはペン描きの簡素なスケッチ画が出てくるが、これの一々がなんともすばらしい作品なのである。おおよそこのたぐいの本には執筆家と挿絵画家が一対になり、一冊の本を創りあげるが、何と何と、どのスケッチを見ても林望氏のサインがあるではないか。最初にこの本を手にしたとき、にわかに信じがたかったのは、林氏の絵の上手さである。これまた半端な人ではない。
この出版の後、何故かチョイと調子に乗って「恋愛小説」を書いているが、これが最悪であった。彼は「恋愛」が語れない作家である。どろどろした男女関係が書けない『人』であるとみている、が、それはそれでよろしかろう。
年齢的にもほぼ同じ著者林望氏に対して、ついつい競争心対抗心が沸き立ちライバル意識が先行しがちであり、こういう人物とは素直に仲良くしたくないのであるが、しかし、林望氏は我輩にとって「いい男」の一人なのである。
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