両備グループ代表兼CEOの小嶋光信社長が2013年11月12日(火)に衆議院議院国土交通委員会での交通政策基本法の審議にあたり、公共交通事業者の参考人として地域公共交通の今後の在り方を陳述しています。
公共交通を考える上で非常に大事な意見だと思うのでご紹介するとともに私の思うところを書きます。
「地域公共交通再生の実現へ向けて ~ 交通政策基本法の必要性」ということ両備グループのホームページに小嶋社長の陳述内容が掲載されています。
先進国で公共交通を民間に任せっきりなのは日本だけ
まず、小嶋社長は先進国の公共交通の状況について述べています。三木市でも、確実に意識したかどうかは別にしてマイカーを増やす施策をこれまでしてきたと思います。
小嶋:
先進国で公共交通を民間に任せ切った国は日本一国しかない。
ヨーロッパは道路を造って、マイカーを増やす施策をとれば公共交通の顧客の半分以上がマイカーに移行し公共交通の経営が出来なくなることを知っていた。
アメリカ型のマイカー社会は交通弱者(子ども、高齢者、経済的に運転できない人など)の交通問題を招くとし、フランスなどを中心に国民に等しく交通を保障する権利「交通権」という概念が生み出された。
交通権を保障する手段として「公設民営」という方法が一般的にとられ、上下分離により行政と民間の役割分担が行われている。
地方公共交通のビジネスモデルの方程式
次に、地方において、マイカー普及により公共交通事業者が事業として成り立っていない理由について述べています。
小嶋:
マイカー普及前に売上100-経費90=経常利益10であっても、マイカー時代の到来後、乗客の減少等で売上が半分(売上50)となったからと言って、必要経費は変わらず(経費90)、赤字(経常利益 -40)となるため、必然的に経営悪化になる。
地方財源の欠乏で、地域公共交通は存続の危機
その上で、国の規制緩和、補助金削減により地域公共交通が危機であることを述べています。マイカー普及と規制緩和、補助金削減と公共交通がなぜ経営がやっていけないのかについて考えさせられます。
小嶋:
規制緩和で地方の路線バスは、ほとんど赤字路線の補助金が減少し、バス路線や事業の撤退が自由になる。また費用対効果の概念導入で、赤字路線の減少が加速し、公共交通企業の倒産を招いた。
また、赤字路線維持のために始めた高速バスも、違法ツアーバスや、高速道1000円政策等で収益力を失う。
公共交通衰退の理由
小嶋社長は非常にシンプルに公共交通衰退の理由をまとめておられます。
③の補助金行政の副作用部分が一般的に問題を指摘されている部分だと思います。小嶋社長が「副作用」と表現しているように補助金そのものが悪いのではなく、その副作用をどうコントロールするかが問題なのだと思います。
⑤で費用対効果の話が出てきますが、三木市の直通バスやコミニティバスの問題でも費用対効果の話が出てきます。公共的事業の非能率、非効率の是正はしなくてはならないが、誤った費用対効果の概念導入が問題であると指摘しています。
小嶋:
一般的に、公共交通衰退の理由は、
① マイカー時代の到来で利用者の50~60%の顧客を喪失
② 地方都市のスプロール化⇒交通渋滞が慢性化⇒路線バスの定時性喪失⇒マイカー増加
③ 補助金行政の副作用
ア)経営不在を助長する結果
コスト削減⇒補助金減少。誤った経営感覚、経営改善努力がなされない
イ)顧客不在の自滅的な労使不仲を助長する結果
スト⇒顧客減少⇒業績悪化⇒逆に補助金増加or運賃値上げ⇒顧客減少⇒業績が悪化⇒補助金増加
「負のサイクル」
④ 規制緩和が衰退に拍車
衰退産業の規制緩和は過当競争を生む。
参入の緩和⇒供給過剰⇒不当廉売⇒労働者の賃金低下⇒労働の質低下⇒事故多発⇒安全・安心の喪失
【規制緩和の幻想】… 規制緩和は、供給が需要よりも少ない産業で行うべき。供給過多の産業で規制緩和をすると、過当競争で、供給過多の産業には致命傷となる ⇒ 現実にタクシー(業界)や観光バス(業界)は滅びる寸前。
⑤ 公共への誤った費用対効果の概念導入
公共事業に費用対効果の概念が持ち込まれると、儲からない路線やバス事業はやめれば良いという理屈になる。路線廃止や事業縮小・廃止が地方で加速した。公共的事業の非能率、非効率の是正はしなくてはならないが、誤った費用対効果の概念導入により、地方では、全ての公共事業を廃止・縮小しなくてはならなくなる。
本来、公共交通は、儲からなくても住民に保障すべき移動手段である。
陳述はまだ続きますが、今回はこの辺にしておきます。
この後、小嶋社長の取組んだ内容、今後の地域公共交通の在り方、交通政策基本法への流れ等について述べれらています。