薄暗いコンクリートの部屋の中にいた
部屋の広さは3m四方くらいか
天井までの高さも同じくらい
壁も床も天井もコンクリート
どこにもドアが見当たらない
ただ一カ所、壁の天井近くに鉄格子の嵌め込んである小さな窓があるだけ
その窓からほのかな白い光が部屋の中に射し込んでいる
もたれているコンクリートの壁が背中にひんやりと感じる
立ち上がって窓から外を見ようと思ったが、窓は手の届かない高さ
ここから見えるのは鉄格子越しの暗い夜空に浮かぶ丸く白い月だけ
歩きながら四方の壁を手で叩いてみた
返ってくるのはコンクリートの厚みのある冷たい感触
いつからここにいるのだろう
初めての場所のようにも思うし
もう何日も何週間もここにいるような気も
名前
年齢
仕事
なにも思い出せない
親
兄弟
恋人
友達
誰の顔も思い浮かばない
それどころか自分自身がどんな顔かもわからない
両の掌をじっと見る
見覚えがあるような気もするし、初めて見た掌のような気もする
もう一度周囲を見渡した
出入り口がどこにもないということはここからは出られないということなんだろう
そして誰も入ってこられないということでもある
狭いこの部屋がわたしの全世界なのだ
わたし以外には誰もいないわたしだけの世界
わたしを認識する人がこの世界にいないのなら名前も顔も意味をなさない
誰にも認識してもらえないわたしははたして存在しているのか、いないのか
部屋の中が急に暗くなる
鉄格子の嵌った窓を見上げるとそこに月光を遮る何かがいた
30〜40cmくらいのしっぽのある黒い影
そうか、この狭いわたしの世界と外の世界を繋いでるのはその鉄格子の嵌まった小さな窓だけなんだな
わたしは黒い影に向かって
そっちの世界は広いかい?って訊いてみた
そっちの世界は明るいかい?って訊いてみた
そっちの世界に人はいるかい?って訊いてみた
白い月に照らされた黒い影は僕の方を振り向きもせず
にゃぁと鳴いた
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/12/6f6692fa1b7a303f217f38dbc348be44.jpg)
カレーの日々 6/19更新~
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掲示板 なんぞ一言
源五郎日記 お休み中
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歩きながら四方の壁を手で叩いてみた
返ってくるのはコンクリートの厚みのある冷たい感触
いつからここにいるのだろう
初めての場所のようにも思うし
もう何日も何週間もここにいるような気も
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それどころか自分自身がどんな顔かもわからない
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見覚えがあるような気もするし、初めて見た掌のような気もする
もう一度周囲を見渡した
出入り口がどこにもないということはここからは出られないということなんだろう
そして誰も入ってこられないということでもある
狭いこの部屋がわたしの全世界なのだ
わたし以外には誰もいないわたしだけの世界
わたしを認識する人がこの世界にいないのなら名前も顔も意味をなさない
誰にも認識してもらえないわたしははたして存在しているのか、いないのか
部屋の中が急に暗くなる
鉄格子の嵌った窓を見上げるとそこに月光を遮る何かがいた
30〜40cmくらいのしっぽのある黒い影
そうか、この狭いわたしの世界と外の世界を繋いでるのはその鉄格子の嵌まった小さな窓だけなんだな
わたしは黒い影に向かって
そっちの世界は広いかい?って訊いてみた
そっちの世界は明るいかい?って訊いてみた
そっちの世界に人はいるかい?って訊いてみた
白い月に照らされた黒い影は僕の方を振り向きもせず
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