僕が所属する有明登山案内人組合では、我等が心の山有明山の登山道整備を毎年行っている。
草刈りやら足場切り、崩壊箇所の補修、ペンキマークつけ、鎖やロープの設置、梯子架けなどやるべき事は多い。
有明山は三本の登山道を持つが僕らが整備するのは表参道と呼ばれる黒川沿いのルートと裏参道と呼ばれる中房温泉への下山路だ。
最近では高低差の少ない裏参道からの往復登頂が増えている。
やっぱ楽だからね。
でも、なんと言っても有明山へ登るとなれば表参道からというのが最もドラマチックで深くそして、キツイ。
多くの登山熟達者は山はキツクないと満足出来ないという気の毒な方々だから、そんな方々には是非このルートからの登頂をお勧めする。
この表参道は黒川沿いを何回か渡渉をしながら登って行くので、やはり沢沿いということもあって、一旦大水が出ればなにかと不都合が起きてしまうのだ。
古くからの信仰の道、先人達が大切に維持してきた道なのだが、当時この道の管理をしていた有明山神社が暴れる川の猛威に負けていったんは左岸の尾根へルートが付け替えられた事があった。
しかしこの道もアップダウンが激しく決して快適とは言い難いルートだった。
そこで有明登山案人組合がこのドラマチックな黒川ルートを調査し復活させようということになり、以降僕らがこの道の補修作業を行う事になった。
林道終点から丸木橋を渡って対岸の森へ入る。
周囲にはあがりこサワラと呼ばれる巨木が林立した苔むした原生林だ。
最初穏やかなこの道も上部へ行くと傾斜が増し、数回渡渉を繰り返すと現れるのが右岸から落ちる妙見の滝。
ここから谷は狭まり川の側壁は垂直に立ち上がり、流心には高さが20メートル程有る巨大なチョックストーンが立ちはだかって僕らの行く手を阻む。
この左岸の弱点を突いた登山道の補修が今回の作業場所だ。
巨大チョックストーンと側壁の間の水流のある割れ目に流木を利用して梯子をかける。
昨年の大水で水流が変わり現在では本流がこの割れ目を流れ下っている。
途中から水流はチョックストーンの下へ吸い込まれていて、平水なら全く問題のない水量だが一旦増水するとかなりの水流がこの割れ目を流れ下る事になるだろう。
梯子掛けには巨大な流木を使ってガッチリ組み上げる事にした。
完成した梯子はとても快適だ。
階段状に難なく登り上げることが出来る。
うれしくって何度も登ったり下ったりしてしまった。
史上最高の出来映えだと自画自賛しておこう。
表参道はここから昨年造った高巻き道を経て白河の滝に至る。
ここからは沢から離れて鎖やロープを伝って急登を登るとポンと尾根に飛び出し松川村馬羅生道をあわせる。
山頂へは更に急登が続く。
据えられてからかなりの時間が経ったであろう祠が沢山有って、風雪で変形した栂の木や黒くざらついた花崗岩の尾根は霧でも巻けばまさしく修験の道、仙人の世界だなあと僕らに思わせてくれる。
果てしなき急登の先には素晴らしき北アルプスの眺めと眼下の安曇野。
お勧めいたします。是非登って下さい。
下山は楽ちん?裏参道を通って有明荘で入浴でもどうぞ。