2月9日より三日間の予定で厳冬期焼岳ツアーに出かけた。お客様は4名様。
初日は大変良い天気。豪華に中の湯温泉に宿泊し温泉を楽しむ。露天風呂からは穂高連峰と霞沢岳が残照に照らされてまぶしく輝く。西の方はすっきり晴れているんだなと、明日への期待が高まる。左側の尾根が、今月末に行く霞沢岳冬ルートの西尾根。一気に頂上へ突き上げている。
翌日起きてみると、あんなに晴れ渡っていたのに、なんと朝から雪模様で、既に10センチぐらい積もっている。一同一瞬落胆するが、美味しい朴葉味噌と、寄せ豆腐の朝食を頂き、出発の準備をする。天気予報では今日は良い天気のはずだから、何とかなるだろうと、かまわず出発。今日は焼岳を登頂し、りんどう平テント泊の予定だ。
三連休の中日なのに、誰も登ってこない新中ノ湯ルート。我々だけが、新雪をかき分け、トレースを上へ上へとのばして行く。ラッセルは平均膝下ぐらいなので、さほど苦にはならない。時々吹く風に栂の木についた雪が落とされ、爆弾のごとく降り注ぎ歓声が上がる。二時間ほど登ったところでようやく山スキーヤーのカップルに追い抜かれた。すいすいと、山スキーは登っていく。いいなあ山スキーは。
4時間半の格闘の末、りんどう平に到着。時間と天候を考えて今日の登頂は諦め早めにテントを設営する事にする。ここは北や西からの風を受けないので、天候が相当荒れても、わりとのんびり過ごせる別天地。みんなすぐにでも休みたいところなのだがここはもう一踏ん張り、ザックを背負ったまま、テントを張るために雪を踏む。踏んで踏んで、広く平らに、快適なテント場を作る。この作業手を抜くと夜が耐えられなくなる。デコボコの寝床は眠りを妨げる。今日いちばん息が上がったのはなんとこのタイミングだった。
雲間には傾き始めた太陽が雪雲を輝かせてまぶしい程。なんて美しいのだろう。昨日から降りつづく雪が、栂の森を静かに覆っている。
因みに、好天時のりんどう平はこんな感じ。背後には焼岳が、噴気をあげている。
テントの中で、くつろぐお客様。この日の夕食は、赤沼ツアー名物、チーズ焼きカレーと、ポテトサラダ。私は元来酒飲みなので、いや山に酒を飲みに来ていると言った方がよい程なので、食事は全てつまみ兼用となる。焼きカレーはお焦げが絶品なのだ。自画自賛。
狭いテントの中でもみんなでわいわいやりながら時を過ごせば、そこは今宵の快適なねぐらとなる。7時には就寝。夕方から、雪はさらに強くなり、風が時々テントをばたばたと押さえつけてくる。明日は、だめかな?まあ、考えても仕方が無いので、シュラフの中で、もぞもぞと朝を待つ。それほど寒くはない。時々テントを派手に突き上げたり揺すったりしないと降り積もった雪でテントが潰されそうになる。そのたび内張に張り付いた結露による氷がテント内に降り注ぐ。冷たいがこれが冬のテントの風物詩?笑、ま、気にしない。
4時30分起床。なんと一晩に降った雪は、40センチはあろうか。トイレまでのトレースも全て埋まっているので、まずは雪かきから朝の仕事が始まる。
朝食を済ませ、夜が明けると、りんどう平は、一段と深い新雪に覆われていた。
今日の登頂は無理だね。南尾根がゴウゴウと音を立てている。下山を決める。
すっかり消えてしまったルートを、もがくように、泳ぐようにひたすら中ノ湯を目指す。深いところでは、私の股下までのラッセルを強いられる。登り返しがやたらきつい。平均60センチってとこだろう。元々溶岩流で出来上がった為か、この尾根は広く、地形が複雑なので、こんな天候の時は、細心の注意を払って下らないとルートを見失う。たいした距離ではないが結構緊張する。GPSが大活躍する。
枯れてもなお、威風堂々と立つ栂。
中ノ湯が間近になり林道を行くが、ここが意外にも今回のラッセルの最難関となる。完全股下までの、平地のラッセルはきつい、なかなか足が上がらず息ばかりが上がるが、何とか中ノ湯にたどり着く。
お疲れ様!みんな晴れ晴れした顔で、健闘を讃え合う。雪山なのだからこんな事もあるさ。山と遊んでもらうってこんなことなのだ。こんな経験が一つ一つ自分の体に染みこんで行くのだ。そして、また山に恋焦がれる様になる。
温泉で体を温め、蕎麦を堪能して松本駅解散。
みなさん、ほんとうにお疲れ様でした。
テント内の写真を見て気が付いたのですが、右はじの髭のあるイイ男は竹○さんではないでしょうか。わたしは「週刊新潮」の男です。
いや~ お懐かしい。また、いつかお会いできると良いですね。