竹心の魚族に乾杯

Have you ever seen mythos?
登場する団体名、河川名は実在のものとは一切関係ございません。

ツバメの睡眠

2011年07月29日 22時36分05秒 | 竹田家博物誌
夜7時頃だったでしょうか。辺りはすっかり闇です。1匹のコウモリが、音もなく傍らを飛び去って行きました。

コウモリが飛び込んだ軒先を見ると、ただしーんと静まり返ったプレハブ小屋があるだけで、件のコウモリは、再びいずこかへ狩に出ていく様子はありません。

軒下に目を凝らしてみると、ちょうどコウモリが飛び込んだ辺りに、黒い塊が確かに見えます。ひとつこのコウモリがどんなコウモリなのか確かめてやろうと近づいていくと、確かにコウモリだと見えた生き物は、腹の白い鳥の形をした生き物だったということがわかってきました。真下に寄ってみると、さっきコウモリに見えた生き物はツバメだったということがわかりました。しかし、そのツバメは微動だにしません。まるで死んでいるかのようです。鳥というのは常に首を動かし、じっとしていることのない生き物です。さっき傍らを飛び去っていった生き物だとは、とうてい思えませんでした。
けれども、とにかく写真を撮ろうと、車に積んであったカメラを取って返すと、ツバメはもとの姿勢のままそこにあります。さすがにストロボを焚かなくては写るはずもなく、やむを得ずストロボONでシャッターを切りますが、本当に死んでしまったかのようにツバメは動きません。


そこで、暗くて写りが悪いということを考えに入れ、角度を変えて何度も何度もシャッターを切ります。液晶式のファインダーではツバメの姿がはたして画角に入っているかどうかわからず、めくらめっぽうで失敗を含め都合10枚ほども撮りましたでしょうか。


それでもツバメは動かず、とうとうこちらの方が根負けして撮影を終了したのでありました。


しばらくしてそうだ、車のライトを当ててみようと思い立ち、車の向きを変え、ヘッドライトをハイビームにしてツバメのいた軒下を照らします。そして改めてツバメを観察しに行くと、ようやく目を開き、首を上げ、不安そうに周囲の様子を窺っているツバメの姿がありました。さすがにこれを見てしまっては可哀想になり、すぐに車の向きを変えて立ち去りましたが、意外なツバメの横顔を知る機会に恵まれ感慨深いものがありました。

「鳥は鳥目」と昔から言われますが、カラスなどは街灯の薄明かりだけで昼間と同じように飛べますし、フクロウのように夜しか行動しない鳥もいます。けれども人間が近づいても飛べず逃げることができない鳥というのはこれまで見たことがありませんでした。

春になるとツバメはどこからともなく突然姿を現し、現れると間もなく泥団子を集めて巣作りを始めます。早朝などツバメは何の用もなく低空を飛行し、盛んに飛び交ってばかりいるように見えます。けれどもこれは人間から見えない小さな虫、つまりユスリカを獲っているのではないかと思われます。ユスリカは除草剤の撒かれていないところならどこでも土の中にいて、地面が太陽の光で温められると成虫となって土の中から飛び立ちます。昆虫の中でも最も寒さに強く、真冬でも成虫に羽化する種類もあるこのユスリカ。春先の昆虫の少ないシーズン、鳥達の貴重な食糧源となっているようです。
7月にもなると巣から育ったヒナは親とほぼ同じ大きさにまで成長し、熱心に飛ぶ練習をしているのが見られます。そしてもうそろそろ、親鳥と一緒に再びどこかへ旅立っていく頃ですね。

もしかすると、あの死んだふりをしていたツバメも、今年生まれた若鳥だったのかもしれません。

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