竹心の魚族に乾杯

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渓流釣りでスレ針を使う方法

2020年05月15日 11時17分16秒 | 兵法書・実技編

はじめに



魚種に関係なく、近年「バラシ」への関心が高まっているようです。これにはフィッシングタックルが「より強く、より軽く」進化してきたこともその要因ですが、釣りそのものがよりテクニカルになった、まあ言うなればフィッシングプレッシャーをくぐり抜けて生き延びてきたスレッカラシを狙うようになってきたことも大きいでしょう。

ワタクシは以前、ルアーとテンカラばかりやってました。「餌釣りなんかジジイのやることだ!」と息巻いておりました。

思えばまったくの若気の至りでしたね。

ところがまあ、2001年でしたか、サクラ金剛テンカラという竿を玩んでいて、ふと、「これで餌釣りをやってみたらどうなるかな?」と思いついたんです。とは言え金剛は穂先は硬いし長さも4.4mしかありません。そんなの無謀に決まっています。ところが気になって気になって仕方ないんですよね。それで遂に意を決して釣行した訳です。

とりあえず0.4号の道糸に0.25号のハリス、餌はヒラタ、針はスレ針です。これで釣り始めました。
すぐに判明したことは「仕掛けがすげえ飛ぶ!」ということでした。ピンポイントを撃つことが楽にできました。そしてすぐに18cmぐらいのヤマメが掛かりました。「結構楽しい!」これが川虫の釣りの第一印象でした。
これに気を良くして遡行を続けていると、でかいのが掛かりました。それがゼンノ川自己レコードのこれです。

27cmありました。散々走られた揚げ句、やっとのことで取り込みました。
タモは持ってなかったのですが、空気を吸わせるのがスムーズにできました。「なんてすげえ竿なんだ」と帰ってからも興奮が収まりませんでした。

それから少しずつ小遣いを貯めて餌釣りの道具を揃えていきました。竿が一番のネックでした。金剛テンカラの特徴はそのずば抜けた仕掛けの飛びにあります。いろいろ試したところ、なんと、手尻が1mぐらいあっても振り込めるということが分かりました。
「金剛と同じ調子で、もう少し長い竿はないか」と考えました。手元にあった5.7mの渓流竿を改造することも検討しました。

そしてそのころ、毎晩のように、清らかな渓流を眼下に見下ろしながら、自分ががまかつの赤と黒の竿を握り遡行していく夢を何度も繰り返し見ました。

その衝動は日に日に高まるばかりで、「がまの山女魚尺抜53にしよう」と決心し、ボーナスが出たタイミングで買いに出掛けました。金剛テンカラの穂先はソリッドですが非常に硬いです。山女魚尺抜の穂先ではこの釣り方に柔らか過ぎるということはすでに分かっていましたが、他に選択肢はありませんでした。そのかわり、胴の粘りに期待したという訳です。

ところが街の釣具店にはすでに山女魚尺抜は残っていませんでした。メーカー・問屋にもないという話。

そこで手に取ってみたのが「星煌峰」。穂持ちが強く、胴に乗るということが分かりました。痛い出費でしたが、この類い稀な調子に感銘を受け、清水の舞台から飛び降りる気持ちで購入しました。使ってみると、狙ったポイントにスムーズに仕掛けが入るということが分かりました。これを機に以前使用していた安いリョービは全く使わなくなりました。

それ以来、餌釣りの装備を拡充しながら星煌峰メインで釣行を重ねました。針はずっとスレ針です。星煌峰はわりとバラシの多い竿ですので、やり取りの際様々なテクニックを試しました。
そしてそのバラシとの格闘は数年間続きました。とはいえ、それもあの2004年、全く画期的な「がま渓流弧空」が発売されたことで状況が変わったのでしたが。

ともあれ星煌峰というじゃじゃ馬竿を持ったおかげで、やり取りの対処法を実に短期間で身に付けることができたと思います。



さて、それでは長くなりましたが、渓流餌釣りでスレ針を使う上でのモロモロをワタクシなりに解説してみたいと思います。


太軸のスレ針


一つのやり方として、スレ針なら太軸を使うということが挙げられます。アタリがあって、合わせて、掛かったら即竿を起こし、そのまま抜きに入ります。あるいは抜かなくても、魚を浮かせて頭をこちらに向かせ、引っ張るようなやり取りをします。そうすれば話は簡単で、バレるリスクは最小限になります。渓流針で太軸といえば「万能袖」や「食わせヤマメ半スレ」などでしょうから、それに近い太さを持ったスレ針というと、「改良ヤラズ」や「イクラ専用」などが該当すると思います。

(「万能袖」と「改良ヤラズ」)

(「イクラ専用」と「生イクラ」)

ただし太軸の針にも欠点があって、餌がミミズや黒川虫の時にはいいのですが、ヒラタやオニチョロだと食いが悪いということです。針の重量が餌の漂い方に影響し、なじみが悪くなる訳ですね。
そんな訳でヒラタメインに釣りを組み立てると、どうしても針は細軸にならざるを得ません。ただし増水した時や食いが活発な時は太軸の針でも影響ありません。

細軸のスレ針


細軸の針で強引にやり取りすると、水面付近で軸が伸びてバレてしまう確率が高くなります。針の変形・伸びを考慮に入れてやり取りする必要が出てきます。

オーナーの「カッパStyle-1」というスレ針があるのですが、この針はフトコロが丸くなっていて、荷重が分散するようになっています。しかも針先がわずかに眠っていますから、針が荷重を受けて変形しても、ギリギリまで魚が外れないようになっています。上述の2001年自己レコード27cmを釣った時もこの針でした。
泳がせたり遊ばせたりしても外れにくいというのも特徴で、そこが「吉村渓流」とは異なる点です。「吉村渓流」は細軸ではあるものの、どちらかといえばやはり引抜用です。

(「カッパStyle-1」と「吉村渓流」)

「アタリの多さ」、「掛かりの良さ」、「外れにくさ」をバランスよく実現してるのがカツイチの「W8」です。「V長良LTR」の方は掛かり優先でやや外れやすい部類になります。

(「W8」と「V長良LTR」、「一番ヤマメ」)

魚を浮かせない


スレ針だからといって何か特別なあしらい方があるのかというと、特にないと思います。せいぜい手元でぶらぶらさせないということぐらいでしょうか。大ざっぱに言って、バラシへの対処法は返しのある針の時とだいたい一緒です。水面近くでバシャバシャさせた時と深場でグルグルさせた時とではバレる確率が大きく異なるということは、釣り歴のある人なら実感されていることと思います。バラシだけでなくハリス切れにも影響します。ベテランの人たちは「水がクッションになる」と話していますが、もちろんコトバのアヤです。水の粘弾性は決して釣り人を助けてくれたりはしません。

実際には、水圧が関係している訳です。水深があれば魚にも相当な水圧が掛かります。当然のことながら、水圧が高ければ魚は俊敏な動きをすることが難しくなります。もちろん、魚は流線型をしてますから、尾びれを振って直線的に前に進む動きであれば影響はわずかです。一方ヘッドシェイクをする、ローリングをするといった動きは水の抵抗、つまり水圧の影響を強く受けます。
これは、水深が浅ければ浅いほど合わせを素早くする必要があるが、深ければ遅合わせでも掛かるということにも繋がってくると思われます。水圧が強いと、魚も針を吐き出す動作が鈍くなるという訳です。

さらに加えて、渓流では水面近くほど流れが速く、底近くは流れが緩くなっています。強い流れの中でやり取りするよりは、緩い流れの中でやり取りするほうが良いのは当然です。ですからスレ針を使ってやり取りするのであれば、なるべく浮かせないで体力の消耗を待つ、というのがまず基本になるかと思います。

テンションを抜かない


「早く寄せないとバレちゃう」と焦る人がいると思います。「底バレ」といって底付近で首を振って針が外れることがあるからです。特に山女魚・天魚はこれが顕著です。ですがこれが山女魚・天魚の習性ですのである程度はやむを得ません(「底バレ」の項をお読みください)。

面白いことに、この底バレはテンションを抜こうが掛けようが、バレる時はバレます。ですから基本はテンションを掛け続けるということになると思います。テンションを抜いていると、スレ針ですから不意に外れてしまうリスクがあるからです。
テンションを掛けると嫌がって首を振りながら後退し、川を下ってしまう魚がいると思います。ですがこれはコンディションの悪い個体のことが多いようです。基本的には、程よいテンションを掛けることができた時には、魚は流れに逆らって泳いでくれます(「泳がせ」の項をお読みください)。

口の横に掛けた場合


山女魚・天魚は引かれた方向と反対の方向に進む習性があります。ですから口の横に掛けた場合、流れの緩い淵などでは、まっしぐらに沖に突っ走ることがあります。こういう時竿を立てたままにしているとあっけなく外れます。強い引きが来た時こそ慌てずに片方の手を竿尻に添えて竿を寝かせてやり取りします。倒す向きは上手でも下手でも構いません。

狙う魚体に応じた針を使用する


これは当然ですね。ですがゼロ釣法などでは極端に小さな針を使いますので迷う人も多いかと思います。参考までにワタクシが通常メインで使う針はカツイチV長良LTRの6.5号と7.0号です。魚がまだ太っておらず流速も緩い4〜5月は6.5号、梅雨入り後は7.0号というのを一応の基準にしています。6.5号で25cm、7.0号で27cmまで対応できると思います。

V長良LTRの6.0号は細軸過ぎて山女魚・天魚釣りにはややバラシが多いようです。また7.5号は重く、魚の口に入りにくいような印象があります。V長良LTR 6.5号と7.0号の2サイズで対処できない時はW8の6.5号と7.0号、がまかつGハード一番ヤマメの7.5号を使うことがあります。また淵などの大物狙い、および増水時はGハード一番ヤマメ8号を使います。カツイチW8もがまかつGハードも使用しているワイヤーが線径のわりに非常に強靭で変形に対して強いです。

首振りについて


ところで渓流釣りで魚の首振りはバラシと関係があるかどうか?ですが、やはり「大いにある」というのがワタクシの実感であります(針の刺さった位置にも依ります)。ですから、できるだけ首振りの少ない竿を使うことが、スレ針を使う上で有利に働くと思います。穂先をソリッドに換装することも有効ですね!
といっても、ハデに首振りされると針のカエシがあってもバレますので、カエシ付きの針だからラフに寄せても大丈夫というわけではありません。スレ針の時との違いでは、意外と「やり取り」の上での違いは少ないと思います。ただし、カエシの有る針を使っている時なら、イヤイヤをされた時などテンションフリーにするというテクニックが使えますが、スレ針の場合こうは行きませんね。竿尻を水の中に突っ込むしかありません。

禁断のテクニック


こちらはメーカー非推奨です。竿の適性負荷内であっても破損覚悟になりますが、竿尻を押し込んで完全に魚の方に向けてしまう、という操作があります。こうすると一時的に魚は大人しくなり、首振りを止めます。竿を立てれば立てるほど首振り・ヘッドシェイクは減ります。これは、竿の角度が鈍角になればなるほど復元の速度が下がるからですね。使い慣れた竿で折れる限界が分かっている時や、「折れてもいいからとにかく獲りたい!」という時には有効なテクニックです。
なお竿のテーパーがスローになればなるほど少ない仰角で魚の首振りを抑制することができます。ということは、胴調子の方がより軽い力で竿を保持できる、のみならず、竿の破損リスクも小さくなるということになりますね。

手首を使うということ


さて、ベテラン釣り師と経験の浅い釣り人の一番の違いはどこにあるでしょうか? 個人的には、「手首の使い方」にあるような気がしています。年数を重ねた釣り人ほどやり取りの間中、手首をフルに使っていますね。竿尻を肘に持たせたり、脇に挟んだりして手首が伸びていると、いいヤツは獲れないです。こんな訳でベテランと初心者で竿の持ち方、構え方などに違いが出てくると思っています。
ガチガチでバラシの多い竿を使うことも、考えてみれば手の使い方の練習になってるはずです。ですから時に敢えてパッツン系の竿で釣りをしてみて、忘れかけた手首の感触を取り戻すということも必要なのではないでしょうか。

惑わされない


最後に、ゼロ釣法でどうしてあんなに小さな針が使えるのか?ですが、針を口の中に掛けるからというのが回答になるかと思います。針のチモトまで口の中に入っていれば、掛かった針はなかなか外れないからです。ですから、もし針のサイズで迷って基準が分からなくなった時は、基本はまず上顎にちゃんと針を掛けるような釣り方を参考にしてみるとよいと思います。今は渓流釣りといっても本当に様々な釣り方が出ています。DVDを観る時はぜひ、気をつけて針のチモトが口の外に見えているかチェックしてみるのもよいかと思います。

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