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『10月25日』

2019-10-24 18:04:13 | 明日は誰の日

【誕生日】


☆アベル・ガンス Abel Gance (1889.10.25~1981.11.10)



サイレント映画史上最高傑作といわれる『鉄路の白薔薇』で野心的な表現方法を創造したフランスの映画監督です。
医師の子としてパリのモンマルトルに生まれ、シャプタル公立中学校時代は哲学書を耽読し、1908年頃から詩集や戯曲を
執筆し始めました。1909年には映画の端役や脚本などの仕事をするようになり、1911年には監督として『鉄仮面』などを
発表しました。1914年には第一次大戦が勃発し陸軍映画班に動員されましたが、復員後の1915年に前衛映画の先駆となった
短編映画『チューブ博士の狂気』において、凹レンズを利用し、デフォルメの技術を駆使した映像を創り出しましたがこれは
失敗作として辛い評価に終わっています。
続いて1919年には反戦映画『戦争と平和』を発表しました。この作品はトルストイの小説とは無関係で、ドレフュス事件の
ときのゾラの有名な言葉「余は弾劾す」が原題、壮大な感情表現で題名通り第一次大戦を弾劾し立ち並んだ戦死者の無数の
十字架から死者が戦争を呪って次々と立ち上がるというラストシーンは強烈な印象を残しました。
そして1923年にはフランスのサイレント映画史上最高傑作といわれる『鉄路の白薔薇』を監督しました。物語は二部構成と
なっていて、第一部の『黒の交響曲』は老機関手が引き取った列車事故孤児を愛するゆえにその絶望から機関車を車止めに
激突させて自ら盲目となるまでを、第二部の『白の交響曲』は盲目となってアルプスの山に引きこもった主人公のもとに
結婚に破れたその養女が戻ったが主人公は静かに息を引き取る、という老機関手の波乱の生涯を描いています。
この作品において、それまでの映画になかった映画リズムと彼の考案したフラッシュバックの表現技法が見事に開花、驀進
する列車の車輪の響きを、音なきところに音を感じさせるというダイナミックで画期的なリズム的表現を用い、機関車が
車止めに激突したときの短いショットの編集を、素早い交互カットによるリズム的表現で処理し、計算し尽くした細部画面の
モンタージュが息を詰まらせるほどの発作的な悲しみを誘発させました。特にガンスのリズムは後にいわれる映画リズム論の
実践となり、後の映画作家たちにも大いなる影響を与えるとともに、映画における白と黒のコントラストの視覚の重要性を
あらためて実感させたという点でも映画芸術の道筋を明示した傑作となりました。
さらに、映画技術の野心家でもあるガンスは、1927年に三面スクリーン (現在で言うシネラマ方式) による『ナポレオン』を
制作・監督しましたが興業的に失敗に終り、1930年トーキー時代に入ると、サイレント時代にみせた画期的な表現手法も影を
ひそめてしまい、ただの語り手になり作品も極端に少なくなってしまいました。

【主要監督作品】
1916年『チューブ博士の狂気』La folie du docteur Tube

1919年『戦争と平和』J'accuse

1923年『鉄路の白薔薇』La Roue

1927年『ナポレオン』 Napoléon 

1931年『世界の終り』 La fin du monde
1936年『楽聖ベートーベン』Un grand amour de Beethoven
1954年『バルテルミーの大虐殺』La Reine Margot
1955年『悪の塔』La Tour de Nesle


☆アニー・ジラルド Annie Girardot (1931.10.25~2011.2.28)



キャスティングしただけでその映画は成功するとまで言われたフランスの演技派女優です。
パリに生まれ、母と同じ助産婦を志していましたが、演劇に興味を持ち19歳の時にコンセルヴァトワールに入学してアンリ・
ロランについて演劇を学び卒業後の1954年にはコメディフランセーズに加わって初舞台を踏みました。
1955年にはアンドレ・ユヌベル監督の "Treizeàtable" (13のテーブル)で映画デビューを果たし、実力派監督の作品に出演、
中でも1960年のルキノ・ヴィスコンティ監督の『若者のすべて』で脚光を浴び、渋さの光る演技力でトップ・クラスの
女優となりました。その後は意志が強くて勤勉で自立した孤独な女性を演じることが多く、その一方でコメディ映画にも
出演するなど多彩な活躍を見せてくれました。
ただ、晩年はアルツハイマー病との闘いで苦しんだそうです。

【主要出演作品】
1957年『赤い灯をつけるな』 LE Rouge Est Mis
1958年『殺人鬼に罠をかけろ』 Maigret tend un piège 

1960年『若者のすべて』 Rocco e i suoi fratelli 

1961年『素晴らしき恋人たち』 Les Amours Celebres
1962年『悪徳の栄え』 Le Vice et la vertu 

1963年『悪悪い女』 Le Crime ne paie pas
1964年『ピストン野郎』Un Monsieur De Compagnie
1965年『明日に生きる』I Compagni
1965年『マンハッタンの哀愁』 Trois chambres à Manhattan

1966年『華やかな魔女たち』 Le Streghe
1967年『パリのめぐり逢い』 Vivre pour vivre 



☆レオ・G・キャロル Leo G. Carroll (1886.10.25~1972.10.16)



舞台出身で、ヒッチコック映画で傍役ながら重要な役どころを任されたイギリスの俳優です。
ノーサンプトンシャー州ウィードンベックに生まれ、1912年に舞台デビューし、その後格調ある傍役として数多くの無声映画に
出演、1924年にはブロードウェイの舞台にも立ちました。
1940年にイギリスからハリウッドに渡って来たヒッチコック監督の『レベッカ』に出演し、その後もヒッチコック作品の
傍役などで映画の成功に大いに寄与しました。

【主要出演作品】
1939年『嵐が丘』Wuthering Heights
1940年『レベッカ』Rebecca
1941年『断崖』Suspicion

1945年『白い恐怖』Spellbound

1947年『パラダイン夫人の恋』The Paradine Case
1947年『愛の調べ』Song of Love
1950年『花嫁の父』Father of the Bride
1951年『見知らぬ乗客』Strangers on a Train

1952年『キリマンジャロの雪』The Snows of Kilimanjaro
1955年『俺たちは天使じゃない』We're No Angels
1956年『白鳥』The Swan
1959年『北北西に進路を取れ』North by Northwest

1961年『罠にかかったパパとママ』The Parent Trap
1963年『逆転』The Prize
1965年『おかしな気持』That Funny Feeling


【ご命日】

★リチャード・ハリス Richard Harris (1930.10.01~2002.10.25)



『孤独の報酬』で怒れる若者の波に乗って注目されたイギリスの個性派俳優。
主な出演作品として『メリー・ディア号の難破』『孤独の報酬』『赤い砂漠』『天地創造』などがある。