港町のカフェテリア 『Sentimiento-Cinema』


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『10月30日』その1

2019-10-29 16:34:39 | 明日は誰の日

【誕生日】


☆ルイ・マル Louis Malle (1932.10.30~1995.11.23)



派閥に属することなくヌーヴェルヴァーグ理論を先駆けて実践したフランスの映画監督です。
ベルギー国境に近いノール県テュムリーで大事業を経営するブルジョワの家に生まれました。第二次大戦の混乱期に少年期を
過ごし、ソルボンヌ大学で政治科学を専攻しましたが中退して1951年から2年間パリのフランス国立高等映画学院に通いました。
しかしそこでは映画理論は勉強せずに映像表現の実践を模索し卒業論文も拒否したそうです。
1956年には海洋ドキュメンタリー映画『沈黙の世界』でジャック・イヴ・クーストーに協力してその名を知られるようになり
1958年には弱冠25歳で自己資金で製作した『死刑台のエレベーター』で長編映画監督デビューを果たしました。
この作品は、これまでのフランスではマルセル・カルネたちによる心理主義的リアリズムが頂点を極めていたことに対抗し、
アンチ・モンタージュと作家主義を旗印にして従前の映画作法を否定し、現実のイメージを主体とした自分の作法でカメラを
万年筆として映画を書くという俗にいう「カメラ万年筆理論」により、モンタージュ理論を排して細かいカット割りをせず、
セットを組まずにロケによる自由奔放なカメラ回しで従前の映画とは一線を画す新手法を取り入れて新鮮な映像を書き上げ、
ヌーヴェル・ヴァーグの真の実践者として脚光を浴びました。また、何よりもこの映画を成功させたのは映像と共に流れる
マイルス・デイヴィスによるモダン・ジャズで、都会の倦怠感と焦燥感を奏でるデイヴィスの渇いた音色のトランペットは
画期的な印象を与え、ヌーヴェルヴァーグ映画の先駆けと共にシネ・ジャズのハシリとなりました。
ルイ・マルはカイエ派にも左岸派にも属していませんが、国内の映画作家たちに多大な影響を及ぼし、トリュフォやゴタール
などの若い世代に大いなる勇気を与え、一気に大波となって映画界に大旋風を巻き起こすことになります。
また、同年の『恋人たち』では表現の限界に挑戦し大きな論争を引き起こし、1960年にはスラップスティック・コメディの
『地下鉄のザジ』を、1962年にはバルドーの半生を描いた『私生活』での見事なまでの映像処理などでフランス国内では
第一線として活躍を続けていましたが、1960年代後半になるとヌーヴェルヴァーグ自体が衰退を始め、ルイ・マル自身も
沈滞の波に呑み込まれるようになり、1976年にはアメリカへ移住して活動の場を求めました。

【主要監督作品】
1956年『沈黙の世界』Le Monde du silence (ジャック・イヴ・クーストーと共同監督)
1958年『死刑台のエレベーター』 Ascenseur pour l'échafaud 

1958年『恋人たち』 Les Amants 

1960年『地下鉄のザジ』 Zazie dans le métro

1962年『私生活』  Vie privée

1963年『鬼火』 Le Feu follet 

1965年『ビバ!マリア』 Viva Maria!

1966年『パリの大泥棒』 Le Voleur 
1967年『世にも怪奇な物語 』Histoires extraordinaires 


『10月30日』その2

2019-10-29 16:05:31 | 明日は誰の日

【誕生日】


☆クロード・ルルーシュ Claude Lelouch (1937.10.30~ )


詩情豊かな映像美と音楽でヌーヴェルヴァーグ後の新時代を切り開いたフランスの映画監督です。
ユダヤ系アルジェリア人の家庭にパリで生まれました。13歳の時に手に入れた中古カメラで短編を作るほどの映画好きだった
そうです。1954年頃から本格的に短編を撮り始め、アメリカや旧ソ連にまで出かけてワンマン作品を制作しました。1960年に
「フィルム13」というプロダクションを立ち上げ初の長編劇映画 "Le propre de l'homme" (人間の特性)を自主制作しましたが
評判は良くなく、特に『カイエ・デュ・シネマ』のヌーヴェルヴァーグの評論家たちからは酷評されてしまいました。
しかし、これにめげず、1963年には捻りの利いた『行きずりの二人』を、1966年には彼の代表作となる『男と女』を発表
しました。
この『男と女』が公開された時期はトリュフォ、ゴダールたちが築き上げたいわゆるカイエ派のヌーヴェル・ヴァーグが
頂点を迎え、左岸派もドミ、ヴァルダ、レネなどが意欲作を発表していたものの、ヌーヴェル・ヴァーグ自体が少し陰りを
見せ始めたころでした。どちらかといえば癖が強くなりすぎて少々難解で一般離れをし始め、既に映画通は新しい手法の
映画を求めていました。そのニーズにぴったり当てはまったのがこの『男と女』の登場で、詩情豊かな映像美と音楽を巧みに
融合させた華麗な語り口によって映画の新分野が切り開かれました。この陶酔的な映画ロマンは続いて『パリのめぐり逢い』
などで若い世代に映画の魅力を再認識させる結果となりました。

【主要監督作品】
1964年『行きずりの二人』 L'Amour avec des si... 

1964年『女を引き裂く』 La Femme spectacle
1966年『男と女』 Un homme et une femme 

1967年『パリのめぐり逢い』 Vivre pour Vivre

1967年『ベトナムから遠く離れて』 Loin du Vietnam
1968年『白い恋人たち』  13 Jours en France

1968年『愛と死と』 La Vie, L'Amour, La Mort
1969年『あの愛をふたたび』Un homme qui me plaît 


☆ジョアンナ・シムカス Joanna Shimkus (1943.10.30~ )



ロベール・アンリコ作品で開花して人気スターの仲間入りを果たしたフランスの女優です。
カナダのノバスコシア州ハリファックスに生まれ、モントリオールで育ちました。16歳の頃から雑誌のモデルを始め、18歳の
ときに単身パリに渡り、ファッションモデルや雑誌のカヴァー・ガールなどをしていた時に、ジャン・オーレル監督に認められ
1964年の『スタンダールの恋愛論』の準主役として映画デビューを果たしました。続いて1967年にロベール・アンリコ監督の
『冒険者たち』で主役となるレティシアを演じて一気にスターの座を手に入れました。その後もアンリコ監督の作品に主演、
一時期はアンリコの愛人という噂も出ましたが、1976年に『失われた男』で共演したシドニー・ポワチエと結婚し、女優を
完全引退してしまいました。

【主要出演作品】
1964年『スタンダールの恋愛論』 De l'amour 
1967年『冒険者たち』 Les Aventuriers

1968年『若草の萌えるころ』 Tante Zita

1968年『夕なぎ』Boom
1968年『オー! 』Ho! 



【ご命日】

★ファン・アントニオ・バルデム Juan Antonio Bardem (1922.6.02~2002.10.30)



リアリズムと独特の撮影技法により鋭い社会風刺で注目されたスペインの映画監督。
主な監督作品として『恐怖の逢びき』『大通り』『復讐』『太陽が目にしみる』などがある。