【誕生日】
☆ルイ・マル Louis Malle (1932.10.30~1995.11.23)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6f/f9/f73cb66e15693bdbdad0ccb6df866215.jpg)
派閥に属することなくヌーヴェルヴァーグ理論を先駆けて実践したフランスの映画監督です。
ベルギー国境に近いノール県テュムリーで大事業を経営するブルジョワの家に生まれました。第二次大戦の混乱期に少年期を
過ごし、ソルボンヌ大学で政治科学を専攻しましたが中退して1951年から2年間パリのフランス国立高等映画学院に通いました。
しかしそこでは映画理論は勉強せずに映像表現の実践を模索し卒業論文も拒否したそうです。
1956年には海洋ドキュメンタリー映画『沈黙の世界』でジャック・イヴ・クーストーに協力してその名を知られるようになり
1958年には弱冠25歳で自己資金で製作した『死刑台のエレベーター』で長編映画監督デビューを果たしました。
この作品は、これまでのフランスではマルセル・カルネたちによる心理主義的リアリズムが頂点を極めていたことに対抗し、
アンチ・モンタージュと作家主義を旗印にして従前の映画作法を否定し、現実のイメージを主体とした自分の作法でカメラを
万年筆として映画を書くという俗にいう「カメラ万年筆理論」により、モンタージュ理論を排して細かいカット割りをせず、
セットを組まずにロケによる自由奔放なカメラ回しで従前の映画とは一線を画す新手法を取り入れて新鮮な映像を書き上げ、
ヌーヴェル・ヴァーグの真の実践者として脚光を浴びました。また、何よりもこの映画を成功させたのは映像と共に流れる
マイルス・デイヴィスによるモダン・ジャズで、都会の倦怠感と焦燥感を奏でるデイヴィスの渇いた音色のトランペットは
画期的な印象を与え、ヌーヴェルヴァーグ映画の先駆けと共にシネ・ジャズのハシリとなりました。
ルイ・マルはカイエ派にも左岸派にも属していませんが、国内の映画作家たちに多大な影響を及ぼし、トリュフォやゴタール
などの若い世代に大いなる勇気を与え、一気に大波となって映画界に大旋風を巻き起こすことになります。
また、同年の『恋人たち』では表現の限界に挑戦し大きな論争を引き起こし、1960年にはスラップスティック・コメディの
『地下鉄のザジ』を、1962年にはバルドーの半生を描いた『私生活』での見事なまでの映像処理などでフランス国内では
第一線として活躍を続けていましたが、1960年代後半になるとヌーヴェルヴァーグ自体が衰退を始め、ルイ・マル自身も
沈滞の波に呑み込まれるようになり、1976年にはアメリカへ移住して活動の場を求めました。
【主要監督作品】
1956年『沈黙の世界』Le Monde du silence (ジャック・イヴ・クーストーと共同監督)
1958年『死刑台のエレベーター』 Ascenseur pour l'échafaud
1958年『恋人たち』 Les Amants
1960年『地下鉄のザジ』 Zazie dans le métro
1962年『私生活』 Vie privée
1963年『鬼火』 Le Feu follet
1965年『ビバ!マリア』 Viva Maria!
1966年『パリの大泥棒』 Le Voleur
1967年『世にも怪奇な物語 』Histoires extraordinaires