目玉がかわいすぎる生き物が深海で見つかる、タコかイカか
調査船ノーチラス号に乗り込んだ研究者たちが米国カリフォルニア州の沖に出て、水深約900メートルの海底でカメラを回していたとき、じっとこちらを見つめる2つの大きな目に気付いた。
【動画】目玉がかわいすぎる海洋生物ボウズイカ
この「クリクリ目玉」の持ち主は、鮮やかな紫色をした小さな頭足類。船内にいた研究者と乗組員はこらえきれずに笑いだし、「おかしな目」、「偽物のような目」などと冗談を言い合った。
大爆笑を巻き起こしたこの生き物はボウズイカ(学名Rossia pacifica)で、北太平洋に生息する。操り人形のように見えるかもしれないが、まぎれもなく生きており、深海では決して珍しい存在ではない。
米国自然史博物館に所属する頭足類の専門家マイケル・ベッキオーネ氏は「珍しい種ではありません。スキューバダイビングで潜れる深さから深海まで、幅広い水深で見つかります。1つの種としては、生息範囲はかなり広い方です」 と話す。
「確かに笑ってしまうような目ですが、同じボウズイカの仲間で、そっくりな目を持つ別の種を見たことがあります」と同氏は話す。「フォトショップで加工したのかと聞かれたこともありますが、もちろん加工などしていません。本当にあのような目を持っているのです」
ベッキオーネ氏によれば、十分な光が届かない深海では、おそらく大きな目が役立っているという。 「深海には、十分な光がありません。真っ暗だと思いがちですが、光を生み出す生命体はいます。大きな目があれば、光を最大限に集めることができます」
そして、おそらく大きな目は餌を狙うのに役立っている。ボウズイカは海底の堆積物に潜って、大きな目だけを突き出し、小魚や甲殻類が通りかかるのを待つ。 「頭足類は例外なく捕食者です。そして、われわれが知る限り、ボウズイカは待ち伏せ型の捕食者です。海底のどこかに隠れるか、海底に潜って待ち伏せします。獲物が来たら触手を伸ばし、つかんで引き寄せます」
大きく複雑な目はさらに、捕食者から身を守るときにも役立っていると思われる。 「十腕目と八腕目などの頭足類にとって、大きく膨らんだ目は典型的な特徴です」
調査船の乗組員が言っているように、動画のボウズイカは全く動かないため、生き物というより捨てられた子供のおもちゃに見える。
巨大な潜水艇が目の前に現れたため、恐怖で身がすくんだか、大きな目がまぶしい光に照らされて驚いた可能性が高いと、ベッキオーネ氏は分析する。例えるならば、車のヘッドライトに照らされたシカのような状態だ。
「前面がまぶしく光る巨大な機械が現れ、体が固まってしまったのだと思います。見つからないように隠れているつもりなのでしょう」