福島沖M7・4でわかった次に起きるのは「房総沖大地震」
首都圏に近づく巨大地震の足音
地震学が専門の武蔵野学院大学特任教授・島村英紀氏は、こう話す。
11月22日の早朝に発生した東日本では久しぶりの大地震。5年経っても大地は変動を続け、巨大な余震が発生する。だが今回の地震でわかったのは、そのことだけではない。島村氏が続ける。
「一口に余震と言っても、大きく二つのタイプに分かれます。一つは本震で地殻に溜まった歪みが解消されず、壊れ残った場所が動くもの。言うなれば『揺れ残り』型です。
もう一つは、大きな本震が起きた後、地殻が動きすぎたために、元に戻ろうとして起こるもの。いわゆる『揺れ戻し』です。今回の福島県沖の地震は、この揺れ戻し型だったと言えるでしょう」
大地震が起きた後には、動きすぎた大地が戻ろうとする――。実は、まさにこの動きが次の大地震につながるのではないかと危惧されているのだ。
3・11による地殻の大変動で、日本列島は太平洋側に大きく引きずり出された。その動きは5年後の現在も続き、東北では地殻が太平洋向きにゆっくりと移動している。
一方、国土地理院が震災5年を機にまとめた1年ごとの陸地の移動量データによると、千葉県北部の沿岸部で特徴的な変化が起こっている。
たとえば銚子に設置されたGPS観測点は2015年までの4年間で累計51㎝海向きに動いていた。ところが2016年までの1年間で動きを反転させ、陸向きに1㎝戻った。逆転が始まったのだ。
房総沖では動きすぎた地殻が戻ろうとする反動と、まだ海向きに動いている東北側の動きがぶつかっていることになる。これが拡大すれば地殻の境界で破壊が起こり、次なる巨大地震が発生する恐れがある。
「3・11はM9・0という途方もなく大きな地震でした。一般的に余震は本震のマグニチュード(強さ)のマイナス1までのものがあると言われますから、3・11の余震はM8になる可能性がある。22日の地震はM7・4でしたが、M8というと8倍近いエネルギーを持つ地震です。そのような余震が今後も続くと考えられるのです」(島村氏)
地殻の動きが反転したいまこそリスクは高い。首都圏に激しい揺れと津波をもたらす巨大地震の足音が、ひたひたと近づいている。