今月21日、AFP通信が報じたところによると、イタリアのナポリ西方にあるカルデラ「カンピ・フレグレイ」(Campi Flegrei)に「再び目覚めつつある兆候」が見られるという研究論文が発表された。当地フレグレイ平野には、長さ13kmに及ぶ巨大なカルデラがあるが、これは約3万9千年前と1万2千年前に起きた大規模カルデラ噴火(破局噴火)によるものだ。イタリアでは「地獄への入口」と呼ばれ、恐れられているこの火山で再度破局噴火が起きれば、周辺に住む数百万人が命を落としかねない非常に危険な事態となるだけでなく、噴煙によって世界規模の気候変動が引き起こされ、全世界が破滅に追い込まれる可能性も否定できない。そのような事態が現実に起こるのか、検討することにしたい。
画像は「AFP BB NEWS」より引用
■スーパー火山「地獄への入口」が活発化! 超危険!
イタリアの古代都市ポンペイからナポリ湾にかけての地域には、「スーパー火山」と呼ばれる超巨大火山がある。ポンペイでは、西暦79年にナポリの東9kmに位置するヴェスヴィオ火山(スーパー火山の一部)が噴火し、火砕流で埋没して数千人が死亡した。この古代都市を消滅させた噴火を「プリニー式噴火」と呼ぶが、これは大量の軽石や火山灰を高く噴き上げる大規模な噴火を意味する。
スーパー火山であるカンピ・フレグレイを訳せば「フレグレイ平野」となるが、この地名はギリシア語の「燃え盛る平野」に由来する。そこにあるカルデラは、ちょうど日本の阿蘇山のように、沸騰するドロや硫黄蒸気が吹き出す穴があり、観光名所となって人気を集めている。だが、古代の人々はこの地域を「地獄への入口」と呼んで恐れていたのだ。この火山は1538年に8日間にわたって噴火し、一つの集落が壊滅したが、「大規模カルデラ噴火」または「破局噴火」と呼ばれるほどの規模には至らなかった。
画像は「Disclose.tv」より引用
そして今月20日、イタリアとフランスの合同研究チームによって学術誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に発表されたのが、「カンピ・フレグレイが再び目覚めつつある兆候を示している」という内容の研究論文だ。これによると、地下から上昇するマグマにおける、流体と気体を放出する能力が10倍にまで高まる限界点を特定したという。イタリア国立地球物理学火山学研究所の研究者ジョバンニ・キオディーニ氏によると、この限界点で水蒸気が放出されると周囲の岩石内部に高温の水蒸気が注入され、それによって岩石も高温となるため、危機的な状態に移行する可能性があるという。だが、実際に噴火するかどうか、その時期についても現時点では明言が不可能とした。
科学者の常としてキオディーニ氏は慎重な表現を用いているが、もしかすると、イタリアの科学者にとって災難だった「ラクイラの悪夢」が頭の片隅にあるのだろうか。2009年4月にイタリアで発生し、300人以上が死亡したラクイラ地震(M6.3)で、群発地震が大地震にはつながらないと発表した科学者たちが一審で有罪になった件だ(二審では無罪となった)。このような前例ができてしまっては、地震や火山噴火が起きる可能性について、科学者たちが発言に慎重になるのも無理はないかもしれない。
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動画は「YouTube」より
なお、カンピ・フレグレイでは2005年以降に「隆起」と呼ばれる現象が起きており、最近では地盤変動のペースが上昇し、地殻下層の地震活動が増加しているという。たとえば、2010年12月にはカルデラ西端にあるアヴェルヌス湖の地下で、M5前後の地震が数回起きている。
■日本はもっと危険だった!!
筆者は1年前に『【悲報】「世界で最も危険な火山」1位に日本の火山が選出される!! 近未来、「カルデラ噴火」で日本壊滅か!?』と題した記事を執筆していた。100年以内に噴火の恐れがある、世界で最も危険な火山のランキングが英国で発表されたという内容だが、実はその3位が「フレグレイ平野」つまり、カンピ・フレグレイ火山だった。英マンチェスター大学のアルバート・ザイルストラ教授(天体物理学)が中心となって選定した「世界で最も危険な火山10」の3位にランクインした理由としては、氏のブログ記事によると、以下のような事象を挙げている。
・ 地下の温度が年々上昇している
・ カルデラの一部であるポッツオーリ湾が次第に沈降している
・ ナポリ西方10kmほどの町ピアヌーラで急速な隆起が見られた
・ 近郊で地震が増えている
このように、世界で3番目に危険とされている火山でたとえ噴火が起きるとしても、その規模によって被害の程度は異なる。しかし、3万9千年前に13kmもの大きさの巨大カルデラ(くぼみ)を形成したような破局噴火が起きたとすれば、その影響は世界中にわたる可能性がある。そしてこの話は、決して遠い国の他人事ではない。日本には破局噴火の可能性がある火山がもっと多く、しかもそれが、いつ起きても不思議ではないということは常に頭の中に入れておくべきだろう。