江戸時代に発生した富士山の大規模噴火(宝永噴火)を、現代の実際の気象状況に当てはめて降灰量を推計したところ、東京都心部でも10センチ以上積もる可能性のあることが気象庁気象研究所のシミュレーションで分かった。経済活動に大きな影響が予想され、政府は今秋までに中央防災会議に有識者検討会を設置し、気象研の推計も参考に富士山の降灰対策に本格的に乗り出す。

 火山灰は1ミリ以上で道路が覆われ、5ミリ積もると鉄道が運行できなくなるとされる。気象研の新堀敏基主任研究官は1707年12月に発生した宝永噴火の噴煙の高さや継続時間の推定値と、気象庁が2015〜17年に解析した日々の風向きや気圧などの詳細なデータを用いて推計。1096の降灰パターンを導き出し、東京・大手町はうち3%の36パターンで降灰量が10センチを超えた。

 全パターンを重ね合わせた最大降灰量の分布図も作成し、神奈川県のほぼ全域と、静岡、山梨、東京の3都県の一部で30センチ〜1メートルに達する可能性があった。千葉県のほぼ全域や茨城県と埼玉県の一部などは最大10〜30センチと見積もられた。

 降灰の範囲は季節で異なり、冬は季節風の影響で東方向に集中。夏は全方位に降る傾向となった。春や秋に多い、富士山から北東方向に風が吹くケースでは、都心に厚く積もる。

 気象研は約15年前にも同様の試算を実施したが、日ごとの気象状況までは考慮せず、都心の降灰を数センチ程度と推定していた。実際の宝永噴火も都心の降灰は数センチだったとされる。新堀主任研究官は「各地の最大降灰量の確率を新たに見積もることができた」と話す。

 政府はこれまで大規模火山噴火に対する具体策を検討してこなかったが、大きな被害が予想される富士山をモデルケースに除灰対策などを考案する方針だ。

噴火はあり得る・・・・・・