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医薬品のネット販売に関する最高裁判決~場当たり司法の歴史2

2013年05月13日 18時34分35秒 | 法関係
前の続きです。



2)高松高裁(H8.2.27)

・概要:
20年以上前の手術時に薬疹と思われる皮疹(原因物質不明)があった患者が、脳外手術後の退院時アレビアチン及びフェノバールの処方を受けた。内服後症状出現し、約1カ月後に薬剤アレルギーの疑いで治療開始されるも、中毒性表皮融解壊死症(TEN)の診断にて病状悪化により死亡。副作用の情報提供に義務違反があったとして医師の過失認定。


・判示:

①『医師には投薬に際して、その目的と効果及び副作用のもたらす危険性について説明をすべき義務があるというべきところ、患者の退院に際しては、医師の観察が及ばないところで服薬することになるのであるから、その副作用の結果が重大であれば、発症の可能性が極めて少ない場合であっても、もし副作用が生じたときには早期に治療することによって重大な結果を未然に防ぐことができるように、服薬上の留意点を具体的に指導すべき義務があるといわなくてはならない。即ち、投薬による副作用の重大な結果を回避するために、服薬中どのような場合に医師の診断を受けるべきか患者自身で判断できるように、具体的に情報を提供し、説明指導すべきである』

②『単に「何かあればいらっしゃい」という一般的注意だけでなく、「痙攣発作を抑える薬を出しているが、ごくまれには副作用による皮膚の病気が起こることもあるので、かゆみや発疹があったときにはすぐに連絡するように。」という程度の具体的な注意を与えて、服薬の終わる二週間後の診察の以前であっても、何らかの症状が現れたときには医師の診察を受けて、早期に異常を発見し、投薬を中止することができるよう指導する義務があったというべきである』



・ポイント:

①をまとめると、

  ・医師の「観察外で服薬」する(のだからそれ相応に)
  ・結果が重大なら可能性が極めて少ない場合でも未然に防ぐ義務
  ・重大な結果を回避する為の具体的説明、指導が必要
   (患者自身で判断できる程度の具体性が必要)

ということである。


②でも、「何か異常があれば受診せよ」程度の抽象的な注意では足りず、副作用として「皮膚の病気」「かゆみや発疹」といった具体的指示内容をもって指導すべき義務があった、としている。



旧薬事法上において「一般用医薬品」(医療用の医薬品とは区別される)であっても、TEN(中毒性表皮融解症)の発生例が報告されていたことは既知であるから、ネット販売においてもそれが「起こらない」と言うことはできないだろう。


すなわち、TEN発生可能性のある薬物である場合には、患者自身でも受診必要性について判断できる程度には具体的説明指導の義務がある、と裁判所が求めているのであるから、ネット販売で「同意」ボタンクリックくらいでその義務が果たされているかどうか、ということが問題となろう。

因みに、最高裁判事はケンコーコムなんかのネット販売業者のシステムがこれら義務の要件を十分に満たしている、と判断していることだろう。




3)大阪高裁(H11.6.10)


・概要:

喉頭炎にてステロイド剤点滴(7日間)及びボルタレン内服7日分投与の患者が、出血性胃潰瘍に起因する出血性ショックとDICなどにより胃全摘等受けるも約1カ月後に死亡。患者は約20年前に胃潰瘍の薬物治療歴があったものの既往歴で医師には申告せず。未申告の患者過失割合は2割相当として相殺されたが、医師には検査義務があったのに行わなかったことにより過失認定。


・判示:

『一般に、患者に対して消化性潰瘍等の重篤な副作用が発現するおそれのある薬剤を継続的に投与する場合には、原則的に許容されている投与期間を超えて投与するとか、副作用の発生の兆候がみられるような場合、副作用が発生したか否かについての十分かつ適切な検査をする義務があると解するのが相当である』


・ポイント:

判示では原則5日間のボルタレン投与期間を超過して投与していたことが問題とされ、なおかつステロイド点滴治療との併用も問題視された。患者の訴えとして、5日目頃に膨満感があったのに内視鏡検査等の実施をしなかったことが過失とされた。薬物の副作用として平易に考えられ得る症状が現実に発生した場合には、たとえ患者側が申告していなくとも薬物投与側が適切に判断しなければならず、その責任を負わされるということである。



風邪薬や鎮痛剤等で、投与期間の原則はどの程度守られていると考えられるだろうか?別の店で購入したりしていても、購入者以外には判らないのではないか?
ネット販売業者が投与期間によって購入制限を設けていたりするものなのか?多剤併用になっている一般購入者は、珍しくないのではないか?
患者が「~の既往はあるか?」の問いにNOと答え未申告であろうとも、その過失割合は2割に過ぎないか、事例1)の如く聴取できないとしても投与側に責任が存すると決めつけられてしまうのである。



医療者には過度に厳しい基準で過失認定、達成が困難な程度に高度な義務を課すくせに、何故か同じく薬物投与する立場の一般販売業者や薬局などには安易に投与することを推奨しているのが、最高裁判事なのである。




医薬品のネット販売に関する最高裁判決~場当たり司法の歴史

2013年05月13日 13時07分08秒 | 法関係
以前から司法の医療界に対する判決がオカシイということについては、それなりに知られていたことではある。薬物についての判決については具体的に書いてみたことがなかったので、今回少しまとめておきたい。



まず、総論として言えば、過去の判決例では裁判官がその場その場で、まるで「思いつき」の如き判決を積み重ねてきた、というのが個人的感想である。そして、そのことを医療サイドからは「トンデモ判決」ということで非難されてもきたわけだ(ところで、医療過誤問題の検証機関を設けよう、みたいな話は立ち消えとなったのかもしれないが、あれも医療サイドへの「政治・行政からの攻撃」とこれを支援した司法界、と見るべきであると感じている。理由なき医療バッシングではないということ)。




その司法界の頂点であるところの最高裁が、どういうわけだか医薬品のネット販売全面解禁には非常に熱心に取り組んでいるんだそうで。つまり、三木谷のような連中をバックアップするべく、司法の力を遺憾なく発揮しております、ということ。これはTPPの推進と同一線上にあるものだ、と言っているのだよ。

三木谷の背後にあるものとは何か?
従米派、グロバーリスト、グリード企業群、そういうヤツらである。



日本の最高裁長官が砂川事件で何をやったかを見れば、司法界の清廉潔白がどういうものであるか、ということがよく理解できるだろう。

まあいい。


以下に、過去の判決例を挙げ、若干の検討をしてみたい。




1)広島高裁(H4.3.26)

・概要:
喘息既往患者の鼻茸術後にボルタレン2錠投与にて、アナフィラキシー様発作で死亡。2度の問診・診察でもアスピリン喘息の疑いが完全に払拭できていなかったのに、ボルタレンを投与したことに過失がある。


・判示:

①『たとい医師の再度の問診の結果患者がボルタレンなどの鎮痛解熱剤によって喘息の発作ないしはアナフィラキシー様ショックを引き起こした事実を聞き出せなかったとしても、それだけで患者はアスピリン喘息ではないと確定診断を下すことはできず、負荷試験を実施しない限り、患者がアスピリン喘息であるとの疑いはそのまま残っているものと言わざるを得ない』

②『鼻茸の手術を終えた患者が鼻部疼痛を訴えるので、同女に鎮痛剤を与えるべく、医師が記載したカルテ等によって禁忌の薬剤をチェックしたところ、カルテには「ピリン禁」とは記載してあったが、薬による喘息発作の既往歴なしとの記載があったところから、当番医師は医師による問診の結果患者のアスピリン喘息の疑いは払拭され、したがってボルタレンを含む酸性解熱鎮痛剤に対し禁忌ではないものと即断して、患者にボルタレン2錠の経口投与を指示した』

③『前示のとおりアスピリン喘息の患者にはボルタレンを使用してはならないとされているのに、当番医師は、アスピリン喘息とは断定はできないもののその疑いが残っていた患者に対し、同女はアスピリン喘息患者ではないとの誤った判断を下して、ボルタレン2錠をいきなり使用した過失があるといわなければならない』



・ポイント:

①より、医師は念の為二度の問診を実施していたが、患者から「薬物による喘息発作の既往なし」との聴取しか得られていなかった。それでも、負荷試験を行って確定診断を得ていない限り「アスピリン喘息の疑いは払拭されない」。にも関わらず、②の通りカルテに「アスピリン喘息発作の既往歴なし」との記載により、これを禁忌なしと即断したことは過失がある、という認定(③)である。

裁判所としてはアスピリン喘息或いは薬物アナフィラキシー(アレルギー、判決文中のママ)の疑いの残る患者に対して、負荷試験等で確定診断を得るべし、ということであり、これがない限りは投与することが過失となる。



すなわち、患者に喘息がある、或いは鼻茸がある、といった場合には、患者自身が「薬物でアレルギー発作等の症状が出たことはない」と申告したとしても、投与側の義務が果たされたことにはなり得ず、負荷試験等で確定診断を得るべきである。これがなければ薬物アレルギーの可能性は払拭されず、投与した側に過失認定される、ということである。



さて、これがロキソニンだった場合、どうだろうか?
最高裁判事たちは、第1類のロキソニンSを投与(販売)する人間が、喘息か鼻茸の有無について全例確認し、その上で負荷試験を要求しているとでも言うつもりなのか?

もしも負荷試験を実施していないのに販売しており、その結果として発作を起こせば過失認定、ということだ。
ネット販売業者からは「被害は1例もない」みたいに豪語していたようであるが、それは本当なのだろうか?
患者本人の申告だけでは過失回避はできないのであるから、既往ナシと申告した患者に発作が発生した場合であっても投与した側が賠償義務を負うので、販売業者は被害を賠償すべきである。