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原発停止で「毎年3兆円の燃料費」損失という説は本当か?

2016年10月28日 14時52分05秒 | 社会全般
過去にも幾度か取り上げたことがある。


2013年10月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/b350e03a2030cd856bf4dd2437f3fbe9

2014年1月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/a6f027499c15cbf1df00452d98faa1ef

   同>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/4453636c4aafd3307f9105409113d6a2


目先のことだけ言うのは、誰でもできるわな。それが、大局的に見てどうなのかというのを考えられるかどうか。


ああ、国富流出だったかを盛んに喧伝しておった石川和男なる人物もいたはずだ。

>http://diamond.jp/articles/-/61846


追加の燃料費が「12.7兆円」か。ある一面だけを見れば、そういうこともあるかもしれない。だからといって、原発が有利ということにはならないだろう。


貿易統計から、数字を拾ってみました。

05~10年度の6年間と、11~16年度の6年間を単純平均で比較してみることにしました。
2016年度の貿易統計は、1~6月期と4~9月期の年及び年度の上半期しかないので、それぞれの数値を単純平均として2倍した数値を用いています。


参考までに、2016年度の推計(予想)は次の通りです。


         輸入量     輸入額

 石油(万KL)   19263     5兆2777億円
 LNG(万トン)   8013     3兆0376億円
 石炭(万トン)  18270      9797億円


同様に、05~10年度と11~16年度の輸入額(6年合計)は次の通り。

       05~10年度     11~16年度

 石油   67兆289億円     63兆7560億円
 LNG   19兆2733億円     34兆3010億円
 石炭   12兆3485億円     12兆4781億円


平均すると震災前が16兆4418億円、震災後が18兆4225億円、となっていた。2兆円弱の差があったわけである(6年間合計では11兆8844億円)。
これは、原粗油+LNG+石炭の輸入額の合計額が11兆円超の多さだったということだが、12兆円の損失が出たんだといった説明はやや不正確となるであろう。極めて短期間のみ観察するとそういうことがあるかもしれないが、それは主としてアベノミクス(意図的な円安)の影響ということがあるだろう。資源価格の価格要因ということもある。


けれども、年3兆円といった説は、今から見れば、そこまで大きくないのではないかと。
また、再生可能エネルギーの接続量が順調に増加するなら、16年度推計額のように10兆円以下に抑制できる可能性があるので、来年度以降には損失を取り戻せるかもしれない。


それに、6年間で増加した輸入額約11.9兆円の全てが発電用の燃料需要というわけでもないはずであり、主にLNGや石炭は発電需要が多いだろうが、石油は石油火力の発電施設自体があまり多くはないので、輸入額の差の大部分が発電によるものとは考え難いだろう。なので、実際の発電用燃料の分は減るはずであり、7割として約8.3兆円となる。


あと、LNG輸入額の多かった14年度の輸入トン数8907万トンから、恐らく今年度は約10%の減少が見込まれる。上半期の推移は大幅に減少してきたことを示している。発電需要のうち、ピーク需要に対応してきた部分が、太陽光発電の接続増加によって使用量そのものが減ってきた可能性が高い。実際、2015年度も8357万トンと約6.2%減少していた。


よって、10年単位の長期的視点であれば、再生可能エネルギーの拡大効果が発現してくるのではないか、と考えられるわけである。今年度なみに10兆円以下の燃料費輸入額が継続できれば、「原発が順調に稼働していた」であろう震災前と比しても、年3兆円の燃料費流出などということにはならないだろう。原発燃料費+処分費用等を上回る利益が見込まれる可能性だってある。


LNG増加要因は、石油機器からの代替(CO2削減という背景)があったわけで、その影響と見るべきであろう。



「福島県の小児甲状腺癌は過剰診断」説は本当なのか?

2016年10月22日 19時00分16秒 | 社会全般
また菊池誠が何か言ってるのか?(笑)


「過剰診断」説で全て整合的に説明できる、というのであれば、その理屈の説明をできるだろう。それを明示すればよいことだ。何故しない?
ああ、医師でもない人が、何故か全てを知っているかのように振舞えるという特権を享受し続けたいから、ですかね?


あくまで私見であるが、拙ブログの見解について、述べておきたい。


1)スクリーニングで福島県の「小児甲状腺癌が増えた」って?


どうも、「スクリーニング」効果というのが未定義らしいので、話者によって都合よく使われてしまう、ということがあるのかもしれない。スクリーニング効果という語が何を意味するかは、こちらからは推定が難しいので、あくまで一般的な説明を書いてゆくこととする。


部位によらず、例えば「ガン検診」をくまなく実施した場合には、「ガン検診」というスクリーニングによって、ガンかその疑いがあるとされる人の数は増えるだろう。罹患率が上がる可能性が高くなる。
精密に検査すると本当はガンではないけれども、検診結果ではガンとして引っ掛かってしまう人もいる(偽陽性の問題)。
そういったことをひっくるめて、スクリーニングを実施すると、ガン検出が増加してしまう、ということは言えるだろう。平凡な言い分はそういうものであろう(当方の推測です、論者の意図は不明)。


福島県の小児甲状腺癌の手術となった126例は、そういうことではない。
当初のスクリーニングとして実施されたのは、いわゆる先行検査というものだった。そこでは、「ガンの検出例は1例も存在しなかった」。スクリーニング実施による、ガン検出の増加を言うのであれば、まずは初回の「ガン検診」に匹敵していたであろう、比較的正確・精密な検査手法と考えられる甲状腺エコー検査での結果で、「甲状腺癌」が検出されていなければならないはずだ。

しかし、C判定は一例も存在せず、ガン(疑い)例は皆無だったではないか。


加えて、福島県外の対照地域検査を同様に実施したが、福島県の結果とほぼ同等であり、有意差は見られなかったとされていたでしょう。

>http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=16520

青森市、山梨市、長崎市において、4365人に同等のスクリーニング検査が実施されたが、ガンの検出はゼロだった。これが、スクリーニングの結果である、ということだ。


すなわち、福島県と対照3地域において、3~18歳以下の対象者では「甲状腺癌は検出されなかった」ということだ。


これのどこがスクリーニング効果なのだ?(笑)
ガン患者がこれで増えたのか?
否、増えてなどいないのである。
検出されたのは、(良性の)結節か嚢胞性変化であって、「充実性の腫瘤」などではなかった。


よって、「スクリーニングを実施したので、ガンが増えたんだ」説は、極めて根拠に乏しいと言わざるを得ない。


2)「過剰診断」とは何か?

これも話者により、不正確な用いられ方をしていると思われ、真意は確かめるのが難しい。

参考として、こちらが分かり易い。


>http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20150324


NATROM氏による定義によれば、端的に言えば、『過剰診断とは「治療しなくても症状を起こしたり、死亡の原因になったりしない病気を診断すること」』とされている。


福島県の小児患者だけが、こうした過剰診断だったのか、というのが論点である。
もしもそう断言できる根拠を有しているなら、例えば菊池誠阪大教授が、「治療しなくても症状を起こしたり、死亡原因にならないガンを切除したんだ」と、根拠を挙げてその立証すればよいのである。

手術を受けた患者においては、

・甲状腺癌は治療しなくても何ら症状を起こすことがなかったこと
・死亡原因にもならないこと

を言えるだろうに。
腺外浸潤があっても、リンパ節転移や遠隔転移があろうとも、「症状を起こすはずがない!死亡するわけがない!」ことを立論できるんだろ?
だったら、その論拠を言えばよいのだよ。何故できないの?
論拠もこれといった理路もないけれど、何となく過剰診断だと断定できるのは、どういう屁理屈だね?


3)10年後か20年後まで放置しておいても、本当に大丈夫だと言えるのか?


例えば、甲状腺癌は、増大が極めて緩徐で、10年か20年後じゃないと臨床的には受診に繋がるような症状などがなく、発見されないんだ、若年層の検査はそれを早期発見しているだけなのだ、という言い分があるものとしよう。

(因みに、甲状腺癌の増大速度については、小児患者でどうなっているか、なんてことは、誰にもよく分かっていないはずだが、阪大教授の菊池誠あたりになると、それを知っているということなのだろうか。ならば、その根拠を教えて欲しいもんだ。)


具体例で言うと、次のようなことである(あくまで喩え、です)。

    8歳  直径 A mm のガン

   18歳  直径 A+X mm のガン

   28歳  直径 A+Y mm のガン  →病院受診で発覚し、手術

増大速度が分からないですが、ある年齢に到達すると、エコー検査などを実施すると検出されるものだが、臨床的には無自覚で経過するので発見されるのは20代くらいになってから、ということを言うものであろう。


で、実際に手術適用となるのは、こういう直径がA+Yくらいの大きさであって、それくらいになるまでは放置しておいてよいのだ、と。福島県の小児甲状腺癌では、これが8歳とか18歳時点で検出しているだけなんだ、と。


もし、その説が正しいとするなら、10歳未満であっても一定割合でガンが検出されるはずだろう。それは、福島県だけじゃなく、対照地域においても、だ。しかし、先行検査のスクリーニングで検出された小児は、いずれもゼロだった。腫瘤が発見された人は皆無だったが、その後に主に「10mm以上のガン」が大半となって手術に至ったわけだ。

増大速度が緩徐だったのなら、先行検査で確実に検出されていたのではないか?一部に偽陰性の結果で未検出だったとしても、何十人もの患者の検査結果が、全てそうだったなどとは考え難いだろう。


本来なら、28歳時点で切ればよかったであろう患者を、例えば8歳とか10代で検出しただけで、それを切ってしまったんだ、という説は、先行検査や対照地域でだたの一人も「ガン」を疑う検査結果がなかったことからすると、説明ができないだろう。とてもゆっくりとしか成長しないガンならば、手術時に20mm以上になっている腫瘍を、初回検査で発見できなかったとでも言うかね?
それも、高々1年や2年前とかに検査を実施していたにもかかわらず、なのだぞ?


小児の甲状腺癌の増大速度が、それほど遅いという根拠が不明だし、スクリーニングで検出されなかったのもおかしいだろう。


4)小児の甲状腺癌は男女差がある

福島県において、男児でも手術例がかなり多い、というのが、手術を担当してきた医大の医師から説明されてきたものである。
これは、過去のガン登録の結果から見ても、そうだろうと言える。

1990年、2000年、2010年のガン登録患者数によると、30歳未満は90年1名、2010年に3名しかいない。つまり治療対象となった甲状腺癌患者は、男性の若年層では極めて稀ということだ。しかも、登録された患者は、20~24歳で2名、24~29歳で2名と、20歳以下はいなかった。同年代人口10万人に対する罹患率では1.14~2.39であり、30歳時点で発症して手術されるであろうという仮定を置いたとしても、10人を超える数は想定できない。

ガンの発育速度が本当に何十年もかかるなら、スクリーニング検査を実施すると、10代なら検出される可能性が高い。しかし、先行検査でもいなかったのに、実際の手術対象者は数十人にも登っているのだよ。


女性の場合は、バセドウ病と似た傾向であり、男性よりもずっと多いというのが一般的だ。同時期の登録者数を見ると、20代女性は男性の数倍は多く、人口10万人対では6.22~8.33である。10代女性でも稀に治療対象となっており、0.98~2.49という罹患率となっている。14歳以下は存在しており、2000年に9歳以下で1名、14歳以下は2000年に1名、2010年に1名だった。

ここで、14歳以下での治療対象者が過去にも存在してきたということから、増大速度が「20年待ってもダイジョウブ」などと果たして言い切れるのか、というになるわけだ。若年女性での甲状腺腫瘍例を知っているなら、そんなに何十年もかかるというのは疑問が生じることくらい当たり前なのでは?

20年くらいしないと腫瘍が大きくならない、ということなら、男性の場合と同様に若年患者は検出されてこないだろうから、だ。しかし、現実にはそうではない。


よって、福島県の小児甲状腺癌患者を見ると、男児の数がかなり多い、ということが言える。しかも、この全てが仮に30歳まで待っていればよかったのだ、という説を取り入れたとしても、30歳時点で手術適用となる男性の数が、人口10万対比で多すぎるということだ。


5)「過剰診断」説を主張したければ、根拠を出すべき

福島県の甲状腺検査が悪いものであり、患者利益とならない、と主張しているわけだろう?

ならば、上記例で言えば、18歳時点での大きさがA+Xmm時点で切除しても、A+Yに増大してから切除しても予後は全く変わらないので、待つべき利益はこれこれだから、今は検査も手術もすべきでない、と主張すればよいのだ。では、何mmになるまで待つべきなのか?
たとえリンパ節転移があろうとも、待つべきなのだろう?そう本気で信じているなら、その利益について、正確に説明できるはずだ。

それを言ってみろ、とお願いしているのに、何故言わない?


検査が否定される理由というのは、予後を改善しないとか、神経麻痺の合併率を改善しないとか、そういう何らかの理由があるから、だろう?

「過剰診断」説を唱える人間ならば、その理由を挙げて説明することくらい、朝飯前だろうに。阪大の菊池誠教授が、小児の甲状腺癌について、どれほど造詣が深いのか知りませんが、自分の知っている甲状腺癌の科学的知見とやらを、世間に開陳すればよいのですよ。

どうした?
やってごらんよ。



スクリーニングで甲状腺癌が増えたって?
どこに、そんな根拠があるのだね?


同等の検査を実施した、福島県と対照3地域で、ガン患者が検出されてなかったのに?
一蹴ですよね、こんなの(笑)。


物理学教授とやらが、疫学云々を言うからには、単なるデマを騙るのとは違うんでしょ?
だったら、自説の根拠を全て明示して、言えるだろ?


それができもしないくせに、言うだけならば、デマ屋と同じことをしているのでは?(笑)



※※※23日追記

ああ、言うのを忘れていたが、国が対照地域の検査を止めたのには、相応の理由というものがあるだろう。2011年以降の甲状腺癌の統計値公表もネット上では制限的となっているのは、よからぬ小細工の結果なのではないか?


もしも、福島県と対照3地域で違いがない、ということなら、長崎、山梨、青森の20歳以下の甲状腺癌のガン登録患者数や、切除手術件数を公表できるはずなのだ。通常は、同年齢人口10万人当たりでほんのごく少数しか検出されないだろう。男性患者なんて、いなくても不思議ではないだろう。それとも、福島県と同程度で患者が存在したのか?

同じく甲状腺エコー検査を受けた3地域の患者数と、福島県と比較してみればよいことだ。
別に、今から改めて検査を実施できないとしても、「甲状腺癌の患者数」は個人情報でもないし、公表できないものでもなかろう。それをしないのには、理由というものがあるのだよ。何かが発覚してしまうから、ではないのかね?



※※※24日追記


菊池誠のような人間がいるので、改めてはっきり言っておく。


2011年以降に、福島県で甲状腺癌の手術例となった20歳以下の患者数は、2010年以前の同年代患者数に比して多い。

同じく、甲状腺癌罹患率の比較でも、福島県の方が高い


国なりガンの専門的機関が判明している統計値をきちんと出すなら、例えば2011年以降「九州全部」の20歳以下の甲状腺癌罹患率と比較して、福島県の方が高い、であろうというのが推定される。


もし他地域の数値と比べて同程度だというなら、その立証を国が行えば、数値的に根拠を示して「福島県の小児甲状腺癌は他地域と何ら差がない」ことを容易に示せる。甲状腺癌の小児患者なんて、ほぼ全数把握が可能な程度に少ないから。しかし、この立論を一切行わないということは、示せない事情が存在してきたから、ということくらいしか理由がないんじゃないのかね。


国なり公的専門機関なりが、正確な説明をすれば不安を払拭できるというのに、これを回避するのは、それができないからとしか思われないということだ。権威主義的と言われるかもしれないが、素人見解を拡散させるよりはましだろう?


それなのに、なんで菊池誠阪大教授みたいな、医師でも何でもない物理屋に、「デマ叩き(笑)」であるかのように見せかけて、好き勝手に説明をさせておくかといえば、正規戦ではマズいからなのでは?
つまり、ゲリラ戦で誤魔化しているに等しいのではないか、ということだ。




福島県の小児甲状腺検査について

2016年10月17日 16時34分17秒 | 社会全般
福島県の健康調査に関して、検査が間違いだとか、過剰診断だというご高説を垂れ流す方々がおるようです。

中でも、大阪大学教授にして、医学関係者でもない人らしいのだが、菊池誠教授という人が、以前から痛烈に批判しているようで、ここ最近でも検査はダメと言っているみたい。


こちら


>http://twilog.org/kikumaco/date-161015

(以下に一部引用)


般に推奨されないはずの甲状腺エコーによる検診を単に「心配だから」というだけの理由で福島の子ども全部に対して行おうとしたのは、今から思えば明らかに誤りなので、早めの方針転換が望まれるところだよ。被曝量からして甲状腺癌は増えないと推測されるのに、なぜやってしまったのか、だよね
posted at 07:52:49


kazooooya 甲状腺癌については「早期発見・早期治療」のメリットがないと考えられるので、そこから勉強してもらわないと


甲状腺検診を始めるに当たって「被曝影響を研究したい」という「したごころ」はなかったか。それはよくよく反省してみる必要があると思う。「被曝影響を明らかにする」というのは検診の目的としては不適切だし、倫理的にも問題があると思う。受診者にとってのメリットだけを考えないと
posted at 09:30:36


「甲状腺癌は被曝のせい」と主張している「活動家」は倫理にもとることをやっているんですよ
posted at 09:32:07


甲状腺癌の解釈はおおもとに立ち返ればいい。一巡目は被曝と関係ない癌を見つける。それが予想より遥かに多かったということは、つまり悉皆検査なんかしたらいくらでも見つかることを意味しているわけ。前倒しで説明できないくらい多いなら過剰診断。みんなそんなことはわかって、政治に絡め取られてる
posted at 10:17:13


甲状腺悉皆検査は今となっては倫理的に許されないと思うんだよなあ。いや、本当は最初からだめだったはずなんだけど
posted at 21:21:05




菊池教授が、何故ここまで専門外と思しきことについて、強烈に批判し、しかも自信ありげなのか不明であるが、「被曝量からして甲状腺癌は増えない」説を信奉しているなら、その推測に至った根拠を提示すればよいのである。

彼はデマ屋を叩くことに生き甲斐を感じているタイプの人間なのかもしれないが(笑)、少なくとも医師の主張を差し置いて自らの「過剰診断だ」「被曝量からして甲状腺癌は増えない」という説を、これほどまでに繰り返し世間に向かって言い募るわけだから、その論拠を示すことくらいできるだろうに。


被曝量を知っているなら、その数字、小児の甲状腺癌について詳しいならその知見、癌が増えないと言える根拠、それを論理的に説明できることだろう。やってみればよいのだ。もし説明すらできないというのなら、それはデマ屋と何ら変わらないのでは?(笑)


当方の感想としては、専門的に医学教育を受けたわけでもなく、論文をいくつも読みこんだわけでもなさそうな、大阪大学教授の推論など、到底信用するに値するものではない、ということだ。


彼がそれほど小児の癌について普通の医師たちより詳しいとは、信ずるに足る根拠がない(笑)。

一般に、甲状腺癌のリスク要因は、放射線照射(被曝)であることは知られているので、統計的には癌のリスクは高まるだろう、とは思いますね。しかし、菊池誠教授は、「増えない」と主張するのであるから、そこには何らかの科学的根拠を持っての意見であろうと思うので、それを開陳してもらえれば、世界中の医学者たちが「それは新発見だ、大いなる知見が示された」と感嘆してくれるのではないか。


是非、知りたいわ(笑)。


興味を持った発端は、こちらでした。


>https://dot.asahi.com/wa/2016101200264.html


意見の対立があるのは、理解できる。ただ以前には、5mm以下で検出されていなかったであろう小児患者において、数年後には手術例となっていることが推測され、「10年後とか20年後に2cm大とかになっていたであろう患者を、早期に発見しているんだ」というような説明は、まともな思考力のある人にとっては、到底整合的であるとは思われないだろう。


過剰診断だ、という説は、放置しておいた方が良かった、と言いたいのだろうか?


>http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2060

(一部引用)

参加したIAEA(国際原子力機関)やUNSCEAR(国連科学委員会)、WHO(世界保健機構)などの国際機関メンバーらは、福島原発事故では、事故によって放出された放射性ヨウ素の量がチェルノブイリ原発事故の10分の1であることなどから、「福島はチェルノブイリとは違う」と強調。福島県で実施されている小児甲状腺検査で多数のがんが見つかっていることについて、「過剰診断」が起きているとの指摘が相次いだ。
 
一方、福島の子どもの多くを執刀している福島医科大の鈴木眞一教授は、詳細な手術症例を報告。125例のうち5例を除く121例が、1センチ以上の腫瘍かまたはリンパ節転移があると説明し、「過剰診断」とはほど遠い治療実態を明らかにした。また、片葉を摘出した患者の中に、再発しているケースがあることも公の場で初めて認めた。


鈴木教授が今回、公表したのは、福島県民健康調査の甲状腺検査の結果、今年3月までに手術が行われた132例のうち、福島県立医大で手術で行われた125例(良性結節1例を除く)の手術症例。昨年8月に、96例の症例を公表していたので、新たに29例が追加されたことになる。男女比は、男性44例、女性81例で、男1:女性1.8。術式は、125例中、全てを摘出したのは4例のみで、残り121例は片葉(67例が右葉、53例が左葉)のみの摘出だった。


術後の病理診断によると、乳頭がんが121例(通常型が110例、濾胞型4例、びまん性硬化型3例、モルラ型4例)、低分化がんが3例*、その他が1例だった。
 
腫瘍の大きさは、10cm以下(T1a)が43例(34.4%)、1cm〜2cm(T1b)が31例(24.8%)、2cm〜4cm(T2)が2例(1.6%)、4cm超または甲状腺皮膜外浸潤(T3)が49例(39.2%)となっている。
 
リンパ節転移の状況は、転移ありが97例(77.6%)で、うち、中央部での転移となるN1aが76例(60.8%)、頚部に広がっての転移N1bが21例(16.8%)だった。一方、リンパ節転移なしは28人(22.8%)。がんが甲状腺の皮膜から外に広がる軽度甲状腺外浸潤(pEX1)は49例(39。2%)で、1cm以下でリンパ節転移もなく、甲状腺外浸潤や遠隔転移していないケースは、わずか5例であったという。

========

(筆者注:上記引用部分に「10cm以下」となっていますが、恐らくは10mm以下の誤りだろうと思います。元のままにしてあります)


手術例のうち、1例が病理診断では良性結節だったので、他は癌だったし、3例が低分化癌(後に基準変更で1例となったようです、注による)で、残りは乳頭癌だったわけである。

更に、pT1a pN0M0という(大きさ10mm以下、リンパ節転移なし、腺外浸潤や遠隔転移なし)比較的予後良好と見られる症例数は、わずかに5例しかなかった、ということだ。


過剰診断だ、という人たちは、良性結節や低分化型やこの5例を言うのだろうか?
確かに結節を手術するのは、必要性が乏しかったかもしれない。


そうだとしても、全体からすると、あまりに割合が少ないだろう。
もしも本気で、手術してもしなくても、結果は変わりません、あなたはそのまま30歳まで待っても大丈夫ですよ、今のは過剰診断なのだから、と言える自信があるなら、その全責任を負って、患者さんをそのように説得するべきなのだよ。


そう説明して、全ての責任を自分がとれる人間だけが、「そのまま放置せよ、手術すべきでない」と患者に断言し説得するべきのだ。患者の人生・生命に責任を負うことができるのか?


できもしない人間であり、医学的知識に乏しい阪大教授だか何だか知らんが、偉そうに過剰診断だの倫理的に許されないだのを放言するのは、いかがなものかと思う。


デマ屋って、都合のいいことを言うだけの人が多いのでは?


阪大教授はデマ屋ではないだろうから、他の医学者たちなり科学者たちを納得させられる論拠を示せば済むのだよ。



※※18日追記

ラワンブキさんという方からコメントがあったので、少し追記したいと思います。


2016-10-17 17:34:45

5mmのがんは、2cmに大きくなるまで放置してから切っても良いし5mmできる意味がないということなんでしょ。 「過剰診断」して、福島でがんが増えてるというのではなく、過剰診断無しで、或いは「過剰診断」するなら、福島以外の地域でも同様の「過剰診断」をした上で比較しなければ、福島の原発事故でがんが増えてるとは言えない。それだけの事ではないのかな。 』

5mmの癌を切っている、というのは、福島の小児甲状腺癌では、極少数であって、「2cmに大きくなるまで放置してから切っても良い」という証拠があるなら、それを提示するべき。
小児の甲状腺癌は例数が少ない上、例えば10歳の発見から長期観察例がそう多いとも思われない。「放置してから切ってもよい」と言える自信がどこにあるのかが知りたいのである。


・原発巣の大きさで判断できるのか
・甲状腺外の浸潤があっても、長期経過後であっても気管支は大丈夫なのか、反回神経麻痺は生じないのか
・リンパ節転移や遠隔転移があろうとも予後には影響しないのか

例えば、これらについて「大丈夫であるというエビデンスがある」と言える人なら、放置しておいても平気だ、と言えるのかもしれない。そんなことを果たして知っているのだろうか?


もっと酷いのが、「検査をするべきでない」という主張をしていながら、別の対照地域と統計的比較すべき、という意見である。
悉皆検査は倫理的に許されない、とするなら、他の対照地域で検査ができない(すべきでない)、ということだ。統計をとりたくとも、許されないと主張しているなら、どうやって対照地域の統計値を知ることができるのか。

福島であろうと、九州の別の地域であろうと、小児の甲状腺検査をするな、と言っておきながら、統計的に比較しないと「言えない」ということなら、誰にも確かめようがないことを求めるようなものだ。統計的に結果を見たいなら、別の対照地域を定めて、同条件の悉皆検査を実施すると、どのくらいの「手術適用と考えられる小児甲状腺癌が潜在しているか」ということが分かるだろう。初期の対照検査をやってからは、中止したのは何故だったのか?その理由は不明である。


「宇宙には宇宙人がいるかどうかは、調べてみないと分からない」、がそうだとして、具体的にどう調査できるのか?
そういう主張に類するものと思えるが。


また、2011年3月11日以降の、例えば30日間の放射線推定被曝量が分かっているなら、その科学的根拠なり理由を出すべき。その被曝量からすると「癌のリスクはどの程度影響されるのか」ということを、科学的(笑)に示せるはずである。そのエビデンスがあるからこそ、「被曝量からして甲状腺癌は増えない」と断定できるはずだからだ。


リスクについて、数値的に、言えないわけがない。
言えないなら、誰も「甲状腺癌が増えない」という推測は成り立たない、ということだ。推定理由さえないではないか。

ああ、それから、甲状腺癌の発生過程というのが、被曝放射線量が「多い」と癌化が促進され、「少ない」と癌化しない、みたいなのはどうやって分かったの?

どの程度の線量を受けると癌化するか、単に細胞死に至るか、それとも何らの変化も生じないか、というのは、どうやって知ったの?それも小児の甲状腺組織で。


・仮に推定被曝量をAとして、震災後の被曝量Aを算出した根拠

・例えば「被曝量P以上なら癌化する」という説ならAはPより小なので癌化しないこと

・被曝量Q以上になると細胞死なので癌は発生しない、A<Qであること

・被曝量Aは癌の発生リスクを増大させないこと


これらを知っている人間なら、「被爆量からして甲状腺癌は増えない」だろう、と言えるってことだな。
つまり、これを知らないなら、到底言うことができない。既知でないにせよ、その推論を構成する根拠は、全て存在するはずだ。「そう考えるに至った理由」というものが提示できない場合、ただのデマ屋と同等ではないのかね。自分がそう思っただけ(笑)だ、ということ。


細胞死に至らない程度の低線量被曝がDNA損傷をもたらした結果、癌化してしまう場合には、被曝線量の大小だけで一律に言うことができない可能性だってあるのでは?



豊洲問題で都が技術会議録の改竄疑惑?(共産党都議団提言追加)

2016年10月07日 13時05分36秒 | 社会全般
今朝、たまたま『モーニングバード』という羽鳥さんのやってるモーニングショーを見てたら、スクープということで、都がHP上の会議録を9月16日になって追加資料を掲載していた、ということが明らかになったそうだ。


また、毎日新聞も同様の改竄疑惑を報じている。

>http://mainichi.jp/articles/20161007/k00/00m/040/118000c


東京都が盛り土問題発覚後の9月16日に、盛り土の工法を検討した「技術会議」の会議録に「『建物下に作業空間を確保する必要がある』と提言を受けた」との資料を追加し、公表していたことが分かった。技術会議の複数の元委員は、毎日新聞の取材に「作業空間をつくる認識はなかった」と証言しており、都が会議録を改ざんした可能性もある。

都が追加したのはホームページ(HP)上に掲載されている第9回技術会議(2008年12月25日開催)の「技術会議が独自に提案した事項」との資料。資料では汚染物質の除去・地下水浄化の確認方法として「地下水から基準値を超える汚染物質が検出された場合、浄化できるように建物下に作業空間を確保する必要がある」と記載されている。

 追加掲載に当たって、都は一部の委員に「会議録に詳細な資料を追加する」と連絡したが、資料の内容は説明しなかったという。

 毎日新聞のこれまでの取材に、委員を務めた根本祐二氏や川田誠一氏は「盛り土をするという前提で議論していた。技術会議では空洞をつくるという話にはなっていない」と証言している。

 追加資料が掲載されたことについて、委員を務めた長谷川猛氏は「技術会議が作業空間を設けるよう提言をした事実はない。技術会議の提言とすることで責任転嫁しようとしているのではないか」と話した。【林田七恵、芳賀竜也】


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なるほど、都の対応としては、9月16日になって、都庁の役人の責任を問われたくないので、自分たちにとって都合のよさそうな資料を掲載した、というのは、裏事情としてはあるのかもしれない。現に、一つだけ今年9月に掲載されているとなれば、変だと思うのは当然だろう。


ただ、これは改竄か、と言われると、ちょっとどうなのだろうな、とは思うわけです。余計な手出しをした、とは思いますが、もの凄い悪事を働いたんだ、とは思わないですね。だって、大勢に影響のあるような資料ではないから、です。


少なくとも、平成20年(2008年)当時の都庁側の役人たちが、何かの悪事を働いてやろう、とか、汚染物質拡散を知ってて隠してたとか、工事実施後の環境汚染を知っていたのを隠蔽してきた、といったことではないでしょう。それは、現時点での都職員たちであっても、そうだろうと思います。

単に、自分の職責で決定したものかどうかは、自分では判然としない、自分が責任を問われたり責任を取りたくない、というようなことはあると思いますが、人間ですので、しょうがない部分はあるかと思います。何も、汚染まみれの豊洲市場に強引に移転させてやれ、と企んでいたわけではないだろう、ということです。


まず、本件の最大の問題は、政策決定過程が極めて不透明だった、ということです。
意思決定権者の責任が、見えてこない。決定過程で、どのように決まっていったのかが、事後的に客観性を持って説明できない。これは、行政としては、由々しき事態です。よく分からないうちに、決まってしまっていた、などということは、到底許されないでしょう。どの部分で、齟齬なり思い違いなり、何らかの問題が発生してしまったのか、ということは、きちんと分析するべきでしょう。都知事の責任でもあるし、行政内部手続で、環境影響評価書の取扱とかは建築物の構造が異なるのが妥当なのかどうか、といったこともあるかもしれません。再度出し直し、という必要性があるなら、手続をやる義務を負うものと思います。


移転計画が妥当だったのか、というのを言うなら、都庁と都議会の両方が責任を負うわけで、議会が可決しなければ予算がつかないので移転できなかったのだから、都議会議員の責任問題でもあるでしょう。移転問題の根本を言うなら、会議録云々は瑣末な話でしかない。


マスコミの人たちって、誰かに取材するのは分かるんだけど、これほど長い期間に渡ってあれこれ報道したり、問題点を言うのだから、まずは自分たちで労力を投入するべきだ。どこかの誰かが、分かり易いダイジェストみたいなのを用意してくれるのを、ただ待っているだけであり、自力で資料にあたって読み込むとか、一切してないのでは?


で、断片情報だけ切り取ってきて、都合よく報道しているだけだ。
職業柄、文字情報を読んだり理解するのは、得意であっても不思議ではないだろう?なのに、どうして誰も、きちんと資料を通読してゆく、といった労力を払わないんだ?報道の社内の人間の、力量が異様に低い、ということが分かるだけだ。で、簡単なネタには飛びつくというわけだね。



今回の9月16日に追加された資料というのは、事後的変更みたいなものなので、決して褒められたものではないだろう。都職員にしても、後から突かれるかもしれないので、追加した掲載年月日を堂々と最初から書いておけばよいだろう。表示してなくて、後出しだったからこそ、「改竄だ」などと痛くもない腹を勘繰られることになってしまうわけだよ。意味が分からんわ。都庁の役人も、マスコミの連中も。どっちもどっちでは。



まず、当方が資料を読んだ結果、理解できた範囲で、大雑把に流れを説明する。

・地下空間の案については、東京都の事務局の人間が要求したものではない
・技術会議の途中で、地下空間に関する議論は行われた
・最終的な報告書では、地下空間を設置する案は採用されず、建物の区別なく埋め戻し案が採用された


なので、都の職員が技術会議で一切議論のなかった話を、平成20年12月25日時点で事務局側が勝手に生み出したものではない。
このことは、9月の追加資料掲載の有無には一切関係なく、改竄があろうがなかろうが、技術会議で出された話である、との結論には相違ない。


長いが、資料を引用する。マスコミ諸君とか、こういうのを全く読まないでしょ?
なので、必要部分だけ、当方で抽出してみたから。



豊洲新市場予定地の土壌汚染対策工事に関する技術会議

H20年10月29日(水) 第5回  会議録

>http://www.shijou.metro.tokyo.jp/toyosu/pdf/pdf/gijutsu/siryo/05kaigiroku.pdf


【p6~7】
(筆者注:東京都の事務局側の説明です。「それから」がやけに多い)

それから、不透水層である有楽町層、これは粘性土の位置、これは5街区ですとか6街区ですとか、粘性土の位置までが浅いところと深いところがございます。また土質など各街区によって違ってきておりますので、そういったものを考慮して、地層構造に応じた液状化対策を実施してまいります。
それから、2-4ページでございます。汚染物質の除去・地下水浄化の確認でございますが、市場完成後には、地下水位・水質、このモニタリングを実施してまいります。

それから、土壌・地下水の浄化後でございますが、土壌汚染対策法の指定区域の解除の要件、これは地下水の汚染の生じていない状態が2年以上継続することという状況になっておりますが、これと同程度の地下水質の確認を行うことを検討していきます。
また、地下水質の監視期間中に汚染物質が検出された場合はどうするのかと。その浄化方法についてもどうするのかと。こういった場合についても検討してまいります。

それから、技術・工法の選定でございますが、評価・検証の結果、同程度の効果、それから経費、工期、こういったものが並んだ場合には複数案の選定も可といたします。それから、選定された技術・工法、これは将来的に環境影響評価での土壌汚染対策の内容、これなどとともに、工事発注時における工事仕様書の基礎となります。

それから、5番目になりますけれども、豊洲新市場予定地以外の土壌汚染対策への活用ということで、現在公募されております提案は、新市場予定地の土壌、こういった特性などから選定されるわけですけども、公募された中には、豊洲以外の土地でも有用に利用できるような技術だとか工法というのも多くあろうかと思います。こういったものは提案者の了解、それからあと事業者への技術資産の保護、こういったものを最大限に配慮しつつ、具体的な方策を今後検討してまいります。

それから、最後に経費の節減でございますが、経費の節減、これは大きな課題になりますので、矢板、鉄の量ですとか、砕石、土、こういったものは大量に使用いたします。こういったものの材料を一括購入して、できるだけ経費の低減に努めてまいりたいと。
これが、以上、事務局のほうで提案させていただきます視点でございます。




コメント:指定区域解除の要件は、やはり地下水汚染の生じてない状態が2年以上継続、と事務局でも認識しており、現状での基準値超過なら、指定解除が困難なのではないか。もう一点、工事に伴う処理方法や市場の利用等について「提案を公募している」ということのようで、地下空間の利用についても、その公募案の一つであった可能性がある(後述)。




【p8】


(委 員) 遮水壁設置後、地下水を下げて掘削を行うが、圧密沈下の影響は考えなくてよいか。

(東京都) 圧密沈下が起こりやすいのは、地下水を一気に汲み上げて下げる場合であるが、現地があまりにも広いので、一気に下げることはできない。小さく区分けして地下水を下げることになる。

(委 員) 現状の地下水位から掘削面まで地下水位を下げるとなると、2m 程度下げる必要がある。一般的には圧密沈下の影響があると思う。

(東京都) ゆりかもめなどの構造物に注意をする必要がある。強固な遮水により、変位がないように実施したいと考えている。その他には、構造物がないので問題ないと考えている。

(委 員) 近接構造物に配慮すること、地下水を下げたらすぐに掘削を行うことを考えておく必要がある。

(委 員) 今回、地下水はすべて環境基準以下にすることとなった。専門家会議の報告では、建物下に遮水壁を設置するとされているが、あまり意味がなくなったのではないか。

(委 員) 地下水モニタリングを2年継続するとあるが、その後モニタリングの必要はないのか。このことは、遮水壁の耐久性や建物下への遮水壁の設置に関連すると思う。

(東京都) 2年のモニタリングは、対策工事の目的が達せられたかどうかの確認行為である。その後もモニタリングを実施し、問題ないということを業界や第三者と一緒に確認していく必要があると考えている。

(委 員) 提案にもあったが、建物周囲に遮水壁を設置するのであれば、これを利用して地下空間を利用する考え方もある。

(東京都)地下水はすべて環境基準以下に浄化することを考えているので、建物と建物以外を分けるための遮水壁は必要ないと考えている。

(委 員) 建物下に遮水壁を設置しないのであれば、地下空間利用は審議の必要がなくなる。

(委 員) 地下空間利用の価値と工事費の兼ね合いになる。トレードオフになるが、考慮に入れていただきたい



コメント:都は地下水浄化達成を考えているので、遮水壁を重要とは想定していなかったようだ。委員からは、地下空間利用の発言が相次ぎ、考慮に入れるよう都に要望している。


※10/8 追記:8ページ目の委員発言をもう一度よく読むべき。色を強調してなかったが、

提案にもあったが、建物周囲に遮水壁を設置するのであれば、これを利用して地下空間を利用する考え方もある

委員は、「提案にもあった」「これを利用して地下空間を利用」と発言しているではないか。つまり、この発言の委員は「何かの提案を見た」ということだ。東京都の提案ではないはずだ。東京都は建物下の遮水壁をそれ以外と区別する必要がない(=地下水全部の浄化で対応予定なので)と認識していたが、技術会議では遮水壁を建物周囲に設置する方向になったのである。よって、遮水壁を建物周囲に設置することから、ならば地下空間利用を検討してはどうか、という話になっているのだ。
地下空間利用の提示を行ったのは、技術委員の発言からだったことは、議事録から読み取れるものである。



【p9】

(東京都) ここでは、市場の安全の信頼性をどのように確保するのかという観点から検討していただきたい。基本的に浄化してあるので液状化により噴水しても問題ないと考えるが、有楽町層の上部が汚染されているのではないかという意見もある。また、有楽町層は調査しないという整理をしている。市場完成後に地下水のモニタリングを実施することと同様に、信頼性を確保するという点で、できるだけ液状化は避けたい。液状化してもよいとは言い難い。

(委 員) 敷地全体に対してか。その場合には、全面的な対策が必要となる。

(東京都) 建物下以外は、敷地全体で液状化を防ぐというのが、基本的な考え方である。

(委 員) 建物については、レベル 2 地震動に対して杭基礎で構造物自身が問題なかったとしても、建物下から水が上がってくる。通常、工場などであれば、床に少しひびが入るなどして、水が噴き出す。このようなことも問題になってしまう。

(東京都) 建物内の噴水は最悪の事態である。閉鎖型の建物にしてあり、建物外で液状化による噴水があっても、建物内には影響がないという考え方としている。

(委 員) 建物は杭基礎になるので、レベル 1 地震動であっても、液状化する。その場合には、水がどこからか出てくることになる。また、その際に地盤沈下が生じるので杭が抜け出し、次の地震の時に危なくなる。

(委 員) 建物下も含めて液状化対策をすると相当な経費になるのか。

(委 員) 相当な経費になる。ただし、空港などはそのような発想で建物下も液状化対策をやっている。ここでは、性能設計的な考え方を取り入れ、地震動の大きさも 2 つくらい用意し、それぞれに性能目標を持たせた方が説明は早いと思う。



コメント:対策の費用面での議論に際して、都は、安全の信頼性を重要視して議論するよう委員達に求めている(追記:市場の安全性と信頼性を都庁側でも大事に考えていたことは分かる。費用より信頼性を優先してほしいと言っているのはその顕われでは)。たとえ液状化が発生しても、建物内への噴水は防ぐことを重要視。また、『閉鎖型の建物』というなら、青果棟の地下底面が砕石層のままというのは、おかしいだろう。建物の地下部分は建物ではない、と?閉鎖型というなら、閉鎖空間とするべきだろう。



H20年11月5日(水) 第6回会議

資料3 汚染物処理、液状化対策などを含む一貫した対策(案)

>http://www.shijou.metro.tokyo.jp/toyosu/pdf/pdf/gijutsu/siryo/6-5.pdf


3-1

案-5:市場建物と一体となった対策

○ 汚染土壌は掘削処理を行う。ベンゼンとシアン化合物及び重金属を含む土壌は、洗浄処理を行う。また、ベンゼンのみを含む土壌は、既設の都域内加熱処理プラントを利用して、処理する。なお、洗浄処理プラントは仮設として、豊洲新市場予定地内または、その近傍地に設置する。

○ 建物(青果棟、水産卸棟、水産仲卸棟)建設地については、汚染土壌の処理後、埋め戻し(A.P.+2.0m~A.P.+6.5m)は行わず、この部分の地下空間を利用する。




3-7 市場建物と一体となった対策

全体フロー図に案-5が掲載さている。



議事録 p7

>http://www.shijou.metro.tokyo.jp/toyosu/pdf/pdf/gijutsu/siryo/07kaigiroku.pdf


(委 員) 地下空間利用の案-5 は、どの対策を基本としているのか。

(東京都) 案-1 に対して、地下空間を利用した構造物を構築するものである。

(委 員) 経費は、案-1 に足すイメージになるのか。

(東京都) その通りである。

(委 員) 案-5 で例えば地下に駐車場をつくると、他の駐車場が必要なくなるのでその分は建設費が安くなるのではないか。

(東京都) 駐車場を想定し、必要なくなった駐車場分の建設費を差し引いて考えている。地下空間をどのように利用できるかも含めて、次回に別途資料を提示する。

(委 員) 経費は、LCC ベースになっているのか。

(東京都) LCC ベースで、一番きくのが地下水管理システムである。

(委 員) 一般的な工法を含めて、ランニングコストでは差がないという前提であるのか。

(東京都) その通りである。

(委 員) ランニングコストを同じで見ていいのかどうか、後ほどご意見を伺いたい。また、経費と工期については、最終的には合算しなければならないと思うが、検討手法の原案はあるか。整理の仕方として、早いことには意味がなければすべて工期は同じ点数となる。もう一つ、できるだけ早いほうがよいという中間があり、効用を費用化する必要がでてくる。この場合、どういうベネフィットが生じるかを東京都として何らかの政策評価をして把握しておかないと、案-4 は不利になるし、案-4 の提案者の説明もできなくなる。いろいろな考え方はあると思うが、検討していただきたい。また、これだけの都民の税金を使ってよいかというそもそも論がある。築地を再整備すべきではないか、別の土地に整備すべきではないかという議論が出てくるので、比較が必要である。これも次回までに、検討していただきたい。

(委 員) 案 1~4 は、対策が終われば、条件が同じになるので、ランニングコストは同様となり、案-4 の工期が長いことだけが問題となる。案-5 は、地下空間利用のランニングコストを含んでいるのか。

(委 員) ランニングコスト分の収入がなければ、そもそも意味がなくなるので、考慮しなくてもよいのではないか。

(委 員) この概算経費については、掘削方法を検討することで減らすことも可能ではないかと思うので、精査していただきたい。

(東京都) 精査して、次回提示する。



委員が考慮を要望したので、案-5に入れられ、下空間利用について議論されている。当初の東京都事務局が提出していた資料には、地下空間のプランは恐らく存在してなかったろう。事務局側としては、最初から、そうした発想を有していたわけではなかったということである。基本として案-1~3であり、4と5は、技術会議の討議の中で発言された提案に基づいて追加的に入れられた案である。



20年12月15日(月) 第8回会議

>http://www.shijou.metro.tokyo.jp/toyosu/pdf/pdf/gijutsu/siryo/8-10.pdf

建物の建設工期が約1年延伸する。
・専門家会議において、揮発性有機化合物が建物内に入る恐れがあるため、地下施設はつくらない方がよいという指摘があり、ターレット置場を地下から地上へ変更した経緯がある。



案-5に関連して、コストや工期を検討したものである。公募にあった提案となっているので、技術会議での議論(第5回)で出たのも頷ける。で、考慮にいれてくれ、との要望によって、案-5は生み出されたのである。

すると、ここに見えてくるのは、「公募で提案者があったこと」と「技術会議でこれを検討した経緯があったこと」である。都の事務局の人間が、自分勝手に思いつきを挿入してきたものではない、ということだ。むしろ、外部の意見を尊重し、議題の俎上には載せたものの、採用には至らなかった、ということだ。

地下駐車場を作る、という発想だったから、だ。
乗用車だけじゃなく、例えば2t車とかも利用できるといいよね、となると、駐車場工事に費用と時間がかかるから。アスファルト敷にしなけりゃならないし。

しかし、これを駐車場じゃなく、例えば大型マンションの地下機械室的な、単なる構造物剥き出し空間で処理するなら、工期も費用もそうかかるものではないかもしれない、とは誰しも思うだろう。だって、「厚さ4.5m分の埋め戻し」の時間と費用を節減できるわけだから。


20年12月25日(木) 第9回会議

議事録 p3

>http://www.shijou.metro.tokyo.jp/toyosu/pdf/pdf/gijutsu/siryo/09kaigiroku.pdf

(東京都) これまで検討した全体計画の評価・検証技術会議で既に示した推奨案である汚染物質、液状化対策などを含む一貫した技術会議としての対策案、土壌汚染対策全体を網羅した提案など、これまで検討した全体計画について説明した。

(委 員) 評価が高かった案-1~5 のうち、案-4 については、原位置微生物処理のため確実性に問題があり、案-5 については、土地の利用、機能、価値の問題が、経費に対して十分プレイバックされないので、事務局としてはこれらを除いた案-1,2,3 をまとめて、それぞれのよい部分を組み合わせて案をつくるということでよいか。

(東京都) その通りである。

(委 員) 案-4 の原位置微生物処理は、期間が長ければ問題ないが、期間の制約や浄化の確認の問題があるので、豊洲での適用は難しい。そういった点で、事務局案の考え方でよいと思う。

(委 員) 案-1,2,3 は、これしかないという特殊な工法ではないと思うので、今後の入札も考え、事務局案の通り、まとめればよいのではないか。



この時点では、案-4と5は、否定的となり、事務局案の1~3に絞り込まれた、ということが分かるだろう。つまり、当初案に戻った、という経緯がうかがわれるのだ。東京都の事務局が、悪巧みをして、地下空間案を率先して推進したがっていたわけではなかった、ということが分かるだろう。




H21年1月15日(木) 第10回会議

>http://www.shijou.metro.tokyo.jp/toyosu/pdf/pdf/gijutsu/siryo/10-3.pdf


案-5にあった、下記の地下空間に関する記述は、フロー図から消滅している
(建物建設地以外は区分し、A.P.+6.5mまで埋め戻し)


建物建設地(青果棟・水産卸棟・水産仲卸棟)
市場施設完成後の地下水位・水質モニタリング施設設置(井戸・ポンプほか)
  ↓
建物建設(地下空間部分を含む)



こうして、当時の技術会議としての見解は、建築物もそれ以外も、区別なく埋め戻しするという案になった、ということが分かるのである。



しかし、その後、何故平成22年3月以降には、地下空間案へと傾いていったのか、という経過は不明なのだ。当時に、地下空間案を公募提案していた人たちが、新たに改良を加えて、埋め戻し体積を縮小し、工期短縮だけを考えたのかもしれない。駐車場を利用するという発想を捨てさえすれば、それは可能かもしれないから、だ。
(追記:別の専門家会議においても、地下の利用は避けるべき、とする見解があったので、ターレット置き場を地上部分(建物は高床式)としたのだろう。同じく、地下駐車場は多数の人が利用する空間となってしまうので、同じ理由から誰も入らない構造(=地下空間)とするなら可能と考えたのかもしれない)


いずれにせよ、マスコミ報道は、あまりに一方的であり、酷いと言わざるを得ない。
HPの資料追加は、褒められたものではないが、マスコミの断片情報の切り取りだけで、報道機関としての果たすべき義務なり調べるという労力すら省いていることの方が、はるかに責任重大である。それによって、世間に誤った煽動をもたらすから、である。


これでは、ゴシップ週刊誌レベルの報道でしかない。
楽ばかりしてないで、資料を読むことくらいしたらどうですか?




更に追加(8日午後3時頃)

マスコミのインチキ報道よりもずっと正確なのが、共産党の都議団の出した提言書だったわ。さっき発見した。

>http://www.jcptogidan.gr.jp/wp-content/uploads/2016/09/2cea96d667ae50ef00612a3aedda692e.pdf

この2ページ目に以下の説明がある。


わが党の調べでは、2008 年 11 月の第 6 回技術会議で、5 つの土壌汚染対策案の一つとして地下空間を利用する提案が初めて紹介されました。第 7 回技術会議では、委員から「地下空間を駐車場として利用すれば安くなるのではないか」との提起を受け、都が採算性を検討することになり、第 8 回で都から詳細な報告がされました。


共産党の方が、変なマスコミよりもずっと真面目に調査してるわ。ハシゲ(笑)よりもはるかにマシ。議事録を普通に読んでみれば、こう受け止めるよりないはずだもの。日本語が分かるなら、そうとしか読めんでしょうに。


大手マスコミは、提供された「ネタ」を拡散するべく使命を帯びているだけで、正確でなくともプロパガンダに協力するということだわな。都職員をバッシングすると、何の利益が生まれるのだ?


問題点は、きちんとすべき。だが、ニセ情報でバッシングするのはもっと不当である。
何も拙ブログの如き部外者が資料を読んだりせずとも、9月中頃時点から、既に分かっていたことだ。マスコミが共産党を無視して、前から分かっていたことを蒸し返してはいるが、間違った報道をやっているに過ぎない。


共産党が調べる方が正確ってのは、マスコミ諸君の存在意義が問われるだろうね。