突然ですが、いつもの思いつきです(笑)。前から気になってはいたものの、実際の形に表してこなかったので。
<参考までに、農業とか農産物などの知識なんかは全然ありません。両親は元々農家でしたが、父親が30才頃に離農し、私が生まれた時には既に一般労働者でしたので、農家の記憶も経験もありません。>
これまでお上の進める農業政策はうまくいかなかったし、あまり有効にならない補助金政策で泥沼を深くしただけのような気もします。農政族議員たちは、これまで一体何をやってきたのか、とは思いますね。現時点に至ってでさえ、何一つ政策らしい政策も、将来ビジョンも出せない、本当の役立たず連中ばかりです。
今のような状況が続けば、農業の担い手たちは高齢化が進んでいますので、将来の生産者は減っていくでしょうから、おいしい食材が確保されるか心配です。なので、私の独断と偏見で考えてみました。
キーワードは、「組織化」「資本集約」「ポートフォリオ」「付加価値」です。これらについて話を進めて参りたいと思います。
1)従事者の高齢化
農林水産省高齢者対策-統計データ
こちらのデータを見ると、農業就業人口約334万人のうち、約6割が65歳以上となっています。更に基幹的農業従事者236万人でも、この傾向は同じです。家族的経営でこれまでやってきたのでしょうけれど、今後はそれも難しくなっていくでしょう。後継者が育っていないからであり、それこそ「嫁問題」もあるかもしれません。こうした問題について、特に対策と呼べるものは見たことがありません。農政族の主張というのは、大抵が補助金頼みと言いますか、自分たちの目先の利益優先なのではないかと思えます。
2)組織化と資本集約
従来の農業団体の役割というのも同じではないかと思いますが、所謂農協組織みたいなのが十分に機能していなかったからこそ、今のような状況をもたらしたのではないかと思います。もしも本当に競争力があって強い組織なのであれば、これほど農業問題で苦しむことはないだろうと思えるからです。昔式でやってきたことが、必ずしも時代には合わなくなってきたのに、何も変えずに過ぎてきたのではないでしょうか。もっと別な対策が必要なのではないかと思います。
選択肢として、従来通りのやり方でオレたちはやっていきたい、ということであれば、共同組合形式でやっていいと思います。それは選択の自由があった方がいいと思うし、組織間の競争にもなっていいでしょう。また、山間部などの規模の小さな農家などで、企業的経営にあまりなじまない部分もあると思いますので、農協もあった方がいいでしょう。そういう農家は「補助金くれ」とかにはならないでしょうから、老夫婦で細々と「自分たちが食べられる分と、他に少し稼ぎがあればいい」ということで、これまで通りの形でもいいと思います。問題は生産主力となる領域であり、これを高齢世代に頼り切る訳にはいかないと思います。ある程度若い世代から「農業」に参加してもらえる環境が必要だろうと思います。
これまでだと、親の代から農家でやってきて、それを息子が継ぐというような形式が多いのではないかと思いますが、こうした世襲的・家族経営的な手法では厳しい競争には太刀打ちできにくくなってきているのではないかと思います。海外産の低価格品が流入したりしていますし、その影響を受けるのは止むを得ないでしょう。従って、生き残る為の戦略を考える必要があるのです。その為の「組織化」ということになります。喩えて言うと、昔の「鈴木商店」とか「佐藤酒店」みたいな感じで個々に経営をやっていたものを、コンビニのような全国的フランチャイズ店の展開に変える、ということになります。この方法がベストかどうかは判りませんが、いくつかのメリットはあるだろうと思います。
資本集約もその一つであると思います。従来型の農家であると、機械購入などを個々に(場合によっては共同購入もあるかもしれないが)行ったり、農協ごとに脱穀機械なんかの投資を行ったりという程度であったろうと思います。そういうのをバラバラに行わないで、もっと集約的に行っていく、ということが可能になります。資金調達にしても、個々の農家が行うより低コストで行えるようになると思われます。資金効率も高まるのではないかと思います。
生産技術については、優れた「農家のオヤジ」みたいな人が必ずいると思いますので、その人が技術主任のような形で企業内の生産者に指導することになります。これまでは、「いい大根の作り方」みたいなのを「他人に教えないこと」で自分の生産物が増加し、売上が増えていたかもしれませんが、同一企業内であれば関係ありませんので技術を教えられるし、生産効率は上がると思います(平均的に「上手な人」のレベルに近づいていくので)。
3)企業イメージ
組織化された農業のイメージは、多角化戦略を持った巨大企業、ということを目指します。これまでの農家というのは、フランチャイズオーナー的な、或いは支店長といった位置づけです。生産力の高い農家には成功報酬的に高い給料を払うのは当然です。成果に応じた配分ということです。これまでの個人がやっていた農家でも、成果が大きければ当然収入は増えるでしょうから。これまでだと農家や農協というのが他の産業に足がかりを持っていないと思いますが、この企業では農産物を活かした直販店経営・食品加工業・外食産業・給食業務受託・研究開発などを行うこととします。農産物を自分の企業内である程度消費可能なようにすることが狙いです。これについては、後述します。
農業従事者での問題というのは、天候などによって「当たり」「ハズレ」のある商売である為に、比較的安定した収入というのが難しいし、収入水準が高くないとか、酪農業のように旅行にも行けないとか、色々な問題がありますが、企業化することである程度解消される部分はあるのではないかと思います。
4)ポートフォリオ
農業の企業化で重要なのは、「ポートフォリオ」という考え方です。このことが経営効率を改善するカギなのではないかと考えています。具体的に言いますと、農産物や業種ごとに「バラバラなもの」を選択すること、地域をできるだけ全国に分散すること、というのが基本的な考え方です。これはどういうことかと言いますと、個々の農家だと台風被害にあったり、冷害にあったり、逆に豊作過ぎたり、リスクが大きいのです。株で言いますと、単独銘柄の値動きと同じで上下変動が激しいのです。しかし、複数銘柄に分散投資することで、それらのリスクは軽減されると思います。それと同じですね。従って、ある地域が台風被害に会っても、他の別な地域での農産物が「価格面で有利」となることも考えられ、損失をカバーできます。これまではこうしたリスクを個々の農家が自分たちで被っていたものを、企業体全体で引き受けるということになります。それによって給料的な比較的安定した収入を確保することが可能になるのではないか、と思います。
ポートフォリオの具体例はちょっと難しいのですが、大きく「酪農」「養豚」「養鶏」「農産物」「生花」「果物」「嗜好品」(茶、タバコ、ソバ、砂糖、等、本来嗜好品という言葉は変ですが、要するにそういう感じ、ということで)のように区分し、全てに分散します。地域も全国に分散します。できるだけ「農閑期」の異なる地域選択や産物が望ましいです(これも後述します)。農産物は、米、小麦、ソバ、ジャガイモ、大豆、その他雑穀モロモロ、野菜にしてもネギ、白菜、キャベツ、レタス、トマト、…という具合に分散するのです。個別の価格変動は勿論ある訳ですが、利益は全部が集約されますのでトータルで見れば価格低下の影響を緩和できるだろうと思います。これは豊作対策にもなるのです。
5)豊作対策・余剰生産物
現在だと「出荷を停止」して、廃棄処分をしていると思いますが、これを止めます。企業内で消費可能なルートをできるだけ作るのです。安い時に調達して、高く売る、というのが基本だろうと思いますので、これを実践するのです。例えば、キャベツが豊作で消費するのが困難かもしれない、ということがあるとしましょう。そういう場合、自社内で持ってる給食サービスとか外食チェーンなんかでのメニューに、キャベツを優先的に使うメニューを増やすのです。トンカツのキャベツお替り無制限キャンペーンとか(笑)。大抵は収穫前に「今年はかなり豊作かもしれない」というのが見当付けられますので、その対策を考えておく、ということになります。トンカツが多くなるとすれば、ポートフォリオの豚肉の消費も促進されるので、メリットもあるのです。
更に余ってしまうような場合であれば、肥料・飼料やペットフードといった「保存期間が長くても大丈夫なもの」に回して、材料調達費を抑制可能にできます。大抵は粉末状のような形にするのではないかと思いますが(加工の仕組みとか知らないので、実際どうなのか判りません)、そういうものであれば長く保存できるし、使い切るまでは新たな仕入れをしなくて済みます(倉庫での保管料問題もあるので、企業内に倉庫業務も当然必要でしょう)。ポートフォリオ内の養豚なんかのエサにも当然使えます。輸送コストの問題があるかもしれませんので、全部を使い切れるかどうか不明ですけれども、企業内での「農産物の適正配分」を行えば、大半は無駄に棄てずに済むだろうと思えます。
生産物の市場価格動向を見ながら、高いものは市場に回し、安いものは自社内で使う部分に優先的に回していけばいいと思います。今の農家だと、キャベツをメインに作っていても、消費先を自分で見つけることができないので、市場に回すか廃棄するかの選択しかないのが問題なのだろうと思います。タダ同然で仕入れ可能になるのであれば、使い道は必ずあるだろうと思うのです。牛乳が余るのであれば棄てたりせずに、これも同じく乳製品加工などに利用可能な分は企業内で優先的に利用すればいいと思います。仕入れ価値が激安であれば、可能な加工方法は当然あるでしょう。これまでは生産者が消費に回せないので、使えなかったに過ぎないと思います。
6)農閑期労働力
農家の多くは、農繁期と農閑期の差が大きく、休んでいる時間というのが結構あると思います。組織化された企業であれば、こうした労働力の「配置」をいくらか調節可能であると思います。ポートフォリオで「地域」や「農閑期」の時期が違うことによって、暇な地域から忙しい地域に、一時的な労働力として供給可能になると思います。これも収入水準をある程度保つのに役立つのではないかと思えます。忙しい期間であれば、従来の家族労働者も「臨時従業員」ということで賃金の配分が可能です。暇な時期には、お父さんは全国のどこかの地域に出張みたいな形で期間従業員的に働き、ヤマを超えれば返ってくる、ということになります。その給料は当然貰えるわけです。基本給として年俸を定め、年間労働日数を決め、ボーナスとして「売上が多い人」にはその分を出す、というような形でしょうか。それでも余る場合には、食品加工場や保管倉庫の期間労働力として、交代で勤務することもできます(その分は人件費を抑制可能になるかもしれません)。個別の農家で、ある程度多角経営を行っている人もいると思いますが、そういうのをもっと大規模に、できるだけ労働力が余らないような形で働く場所を確保する、ということになります。兼業農家だと、これを個々に自分たちで行わねばならず、効率が悪いでしょう。
実際やるとなれば難しい部分もあるかもしれませんが、色々と考えれば必ず方法はあると思います。米農家であれば、春先~9月頃までがメインですので、仮に5ヶ月間は休日日数をカウントせず(天候相手なので毎日が仕事みたいなものかもしれないかな、と)150日勤務と考え、他に100日程度工場労働や他地域の農繁期アシストというような形で仕事に従事する、ということです。農閑・農繁期は似ているものが多いのですが、中には時期の違うものもあると思いますので、その組み合わせをうまく考えてみたらいいと思います。野菜のハウス生産とかであれば、平均気温の高い地域で冬場の生産が可能だろうと思いますので、そちらに応援部隊として行くこともできます。そうなればもっと大規模生産が可能になるかもしれませんし。
7)付加価値
まず大きな問題としては、研究開発投資が農業では限られてきたのではないかと思います。個々の農家でいくらか努力されてきたのだろうと思いますけれども、主に公的な研究が多かったのではないでしょうか(~農業研究所のような感じ?)。役人的な研究開発では、多分弱いのではないかと思います。確かに品種改良なんかの努力は行われてきたでしょうけれど、もっと真剣に研究開発に力を注いだ方がいいと思えます。今までだと、そのお金がなかった。個々の農家ではどうにもできなかった(本当は、補助金とかを無駄に農道整備などにつぎ込んだりしないで、研究開発分野に投資するのが大事だったんですよね)。けれども、資本の大きな企業となれば、研究開発投資に資金を回せるはずです。
それから、ブランド戦略というのが重要です。それは商品単体の持つ商品力ということはありますが、それ以外の部分でのブランド育成戦略が重要だろうと思います。この分野では、農家が個別に行ったりするには限界があります。農協にしても、海外販路を切り開く活動を積極的に行ってきたというのは極めて少ないだろうと思います。農産物そのものを売るだけではなく、「~産の○○を使った××」というような「付加価値」が必要だろうということです。「トーフ」でもいいですし、「sushi もの」でもいいですし、その他色々な日本食とかあると思いますけれども、そういうのを売っていくのは「ブランド力」に大きく左右されると思います。日本国内の消費を見ても、「低価格品」というだけで売れる面と、価格が安くなくても、むしろ安くなくやや高級感があって「ブランド化」されているものの方が「ありがたがられる」面はかなりあると思います。日本の消費者たちが「安全・安心」を高い水準で求めたり、権威づけのあるものを求めたりする傾向が見られますので。そうした権威を「生産者と直結した企業」自身が行っていく、ということです。そうした戦略を農家がやるよりも、もっと得意な人たちが引き受けてやった方がいいのです。
企業のアンテナショップ的な「レストラン」を数店舗出して、自社生産物の中から「高級食材」だけを選択し提供することで、「農産物の付加価値」は高まると思います。勿論そのレストランが「高い評価」を得ることが大前提となりますが、それは「食材」もさることながら、「料理人」の腕とかネームバリューによる部分は相当あると思います。こうした「ストーリー」を付加して、食材の価値を高めることが重要なのです。どんなに素晴らしい製品のシャンプーにしても、何のストーリーもなければ消費者からの支持は得られません。そこには何かの「ストーリー」がなければダメなのです。椿には椿のストーリーが与えられたので、ヒットしたんだろうと思います(違った?)。それと同じで、ただ「いい食材」を提供する為に生産していても消費者には訴えが届かなければ、生産者の自己満足で終わってしまいます。これを解消するべく、農家にはできない・苦手な部分を企業内の専門部隊にやっていただく、ということになります。
食材というのは、組み合わせの妙、というのがあると思っています。ジャガイモだけ、或いはかぼちゃだけでは勝負しにくい、ストーリーが展開しにくい、ということがあっても、他の果物とか料理のメニューとか、そういった「別な形」があれば「一体としてのストーリー」になり得るのです。何かのデザートとして有名になったりすれば、それがブランド力に繋がります。そういうようなことです。
これまでのような農協頼みであると、海外への販路は開けてきませんでした。それはそういう活動をやろうと考えないからです。農協のお偉いさんたちは、農業従事者たちの大半を占める年寄り連中が殆どですので、そういう新たなチャレンジを期待するのが土台無理であるとも言えましょう。今はネット時代なので、英語とかフランス語とか、中国語でもいいですが、消費者側からアクセスしやすい形で情報提供することで、意外な消費地ができたりしますし、日本人のような「味覚の発達」した人種(確証はありません。私の思い込みかもしれませんが、味覚の鈍感な人種は外国にたくさんいると思います)だと、「こんなの当たり前」と思っているような食品であっても、外国人からすると「こんな美味い○○を食べた事ないー!!」みたいなことはきっと有り得ると思います。牛肉を輸出するというような、加工していない食品としては価格競争に勝てないということも有り得ますが(超高級食材の世界需要はそれなりにあるので、松坂牛みたいなのはひょっとしたら需要は結構あるかもしれません。ただ単に知られていないだけなのではないかと)、冷凍食品とか別な加工食品の形であればそれなりに需要は有り得るのではないかと思います。
世界が相手であると何が受けるか判りませんので、とりあえずどんな形でもいいので情報提供だけはネット上にどんどん出した方がいいと思います。「日本食文化」は確実に世界に広まりつつあるのですし。アニメとのタイアップとかでもいいと思いますよ。登場人物が好物にしている「○○」というのは、大変訴求力がありますので。そういうことを着実にやっていくことが、需要を開くキッカケになると思います。これは食品に限らず、伝統工芸なんかも同じですよね。「こけし」が人気化するなんて思ってもみなかったことですし、もっと他のものが人気化することだって有り得ますね。情報の窓は世界に向かって開かれているのですから。
こうした企業化を選択したくないとか、企業化しなくても自力でやっていけるといった人々は、これまで通りの個人経営でやっていけばいいのではないかと思えます。競争力のある個人は、どの業界であっても必ず存在すると思うからです。そうした多様性のある方が、業界全体の効率は上がるのではないでしょうか。ただ、競争力があまりなくて、カツカツの生活で厳しいという農家は少なくないと思いますし、補助金政策は大幅に方向転換すべきだろうと思っていますので、一応考えてみた次第です。