ここ最近の話題といえばMMTというのがあるそうだ。そちらの説明は誰かに譲って、まずは、全くの素人考えで申し訳ないが、モデルで考えてみることにする。
参考;
https://www.mof.go.jp/pri/research/special_report/f01_2017_12.pdf
統合政府の予算制約式を、次のように仮定する。
(各期をn期、(n-1)期と置けば、全ての文字に添え字をつければよいが、ここでは面倒なので、0期と1期だけで簡略化して表記する)
政府支出(利払い費以外)をG
0期の政府債務残高をB、1期のそれを(B+ΔB)
1期の政府徴税額をT
0期の貨幣供給量をM、1期のそれを(M+ΔM)
国債金利をr
とする。
統合政府予算は通貨発行益を利用可能と仮定し、
G +rB={(B+ΔB)-B}+{(M+ΔM)-M}+T
とする。整理すると、
G +rB=ΔB+ΔM+T (1)式
が得られる。
例えば、税収と国債追加発行額の合計と同じ額だけを政府が支出する場合、
G=T+ΔB
となるので、(1)式において
rB=ΔB+ΔM+T-G
整理すると、
rB=ΔM
すなわち
r=ΔM/B (2)式
が得られる。
ここで、フィッシャー方程式の名目金利rと実質金利r'、インフレ率(物価水準)をPと書くと、
r =r'+P
であるから、(2)式と併せて
P=ΔM/B-r' (3)式
となる。
日本のようなデフレ時期だと、Pがマイナスの値をとるので、
ΔM/B<r' (4)式
のような関係性がうかがわれる。
貨幣供給量(ΔM)が少なく実質金利より小さな値となっていると、デフレに陥る、という意味合いである。統合政府が通貨発行益を利用して国債利払い費に充当しているにも関わらず、それでもなお、マネーストックの追加量が実質金利水準に比して少ない場合には、デフレとなってしまうということである。
また、(1)式に戻って、統合政府の支出額(一般政府支出+債務の利払い費用)には償還額は想定されていないし、財政赤字(T-G)を埋めるのが国債か貨幣供給量かは、代替的なので違いがない、ということであろう。
一方で、国債発行を増加させても(2)式の関係性を見る限り、政策金利(安全資産たる国債金利の発行条件に深く関与するだろう)が適切な水準が保たれていれば、フィッシャー方程式におけるインフレ率Pが非常に高い値をとることも抑制されるだろう、ということである。もしも貨幣供給量が著しく増加する―例えば財政赤字分を国債発行せず全部通貨供給量で賄うような―場合、rが増大するので、結果的にインフレ抑制の為に高い政策金利を要求されるかインフレ率の騰貴を招くか、ということになるだろう。
自国通貨発行権と国債発行権は、代替的な役割であることを理解しようとするのには、役立つ考え方なのかもしれない。流動性の罠の状況下のように、金利rがゼロ近傍かほぼゼロであると、財政赤字分が国債発行でも貨幣供給でも違いは殆どない、ということでもある。しかも、単に紙幣を刷るだけではダメで、「財政支出として使う」というのが、(1)式の意味するところである。政府が支出しないと、マネタリーベースとして供給されることにはならないから、である。
また、(1)式を変形して、
r=ΔM/B+財政赤字/B
と書くと(財政赤字=T+ΔB-G、税収+赤字国債-政府支出)、
貨幣供給量が財政赤字を超えていかないと、名目金利が上がらない、すなわちインフレ率も正の値をとるのが難しくなる、ということであろう。また貨幣供給が乏しい場合には、国債発行の増額によりΔBを大きくしないと、ΔB+T-Gの全体の値が大きくはならない。試みてきた大部分が、増税(Tを大きくする)か政府支出Gを減らす、という努力だったので、それも限界があろう。
段々と貨幣供給量ΔMを増やし、緩和措置によりr'の引き下げをもたらした結果、Pの上昇に若干の効果はあったかも、だが((4)式の不等号が逆転した状態、P>0の時ΔMの増加や金融緩和で引き下げたr'の効果が発現という意味合い)、デフレ脱却が定着するには至っていない。
財政赤字分を国債発行ではなく、全部貨幣供給により賄おうとすると、あまりに急激なΔMの増加があればrの増大をもたらし、引いては物価の著しい上昇を来すことがあるのかもしれない。
通常の国債市場でのデフォルト問題というのは、(1)式の rB の利払い費用が捻出できないケースということが多いと思うが、ΔMで補える限りにおいては、デフォルトの危険性は乏しい、と見える。自国通貨発行権は破綻危機を回避し易いとの意見は頷けるものがあるように思える。ただ、これがあまりに過剰になってしまうと、やはり貨幣の信頼性が落ちることになるという問題が発生するかもしれず、そうした局面ではやはり物価が高騰することを招くかもしれない。
こうした整理や理解は、問題があるかもしれないが、一応書いてみた。
今後の研究が待たれる。
参考;
https://www.mof.go.jp/pri/research/special_report/f01_2017_12.pdf
統合政府の予算制約式を、次のように仮定する。
(各期をn期、(n-1)期と置けば、全ての文字に添え字をつければよいが、ここでは面倒なので、0期と1期だけで簡略化して表記する)
政府支出(利払い費以外)をG
0期の政府債務残高をB、1期のそれを(B+ΔB)
1期の政府徴税額をT
0期の貨幣供給量をM、1期のそれを(M+ΔM)
国債金利をr
とする。
統合政府予算は通貨発行益を利用可能と仮定し、
G +rB={(B+ΔB)-B}+{(M+ΔM)-M}+T
とする。整理すると、
G +rB=ΔB+ΔM+T (1)式
が得られる。
例えば、税収と国債追加発行額の合計と同じ額だけを政府が支出する場合、
G=T+ΔB
となるので、(1)式において
rB=ΔB+ΔM+T-G
整理すると、
rB=ΔM
すなわち
r=ΔM/B (2)式
が得られる。
ここで、フィッシャー方程式の名目金利rと実質金利r'、インフレ率(物価水準)をPと書くと、
r =r'+P
であるから、(2)式と併せて
P=ΔM/B-r' (3)式
となる。
日本のようなデフレ時期だと、Pがマイナスの値をとるので、
ΔM/B<r' (4)式
のような関係性がうかがわれる。
貨幣供給量(ΔM)が少なく実質金利より小さな値となっていると、デフレに陥る、という意味合いである。統合政府が通貨発行益を利用して国債利払い費に充当しているにも関わらず、それでもなお、マネーストックの追加量が実質金利水準に比して少ない場合には、デフレとなってしまうということである。
また、(1)式に戻って、統合政府の支出額(一般政府支出+債務の利払い費用)には償還額は想定されていないし、財政赤字(T-G)を埋めるのが国債か貨幣供給量かは、代替的なので違いがない、ということであろう。
一方で、国債発行を増加させても(2)式の関係性を見る限り、政策金利(安全資産たる国債金利の発行条件に深く関与するだろう)が適切な水準が保たれていれば、フィッシャー方程式におけるインフレ率Pが非常に高い値をとることも抑制されるだろう、ということである。もしも貨幣供給量が著しく増加する―例えば財政赤字分を国債発行せず全部通貨供給量で賄うような―場合、rが増大するので、結果的にインフレ抑制の為に高い政策金利を要求されるかインフレ率の騰貴を招くか、ということになるだろう。
自国通貨発行権と国債発行権は、代替的な役割であることを理解しようとするのには、役立つ考え方なのかもしれない。流動性の罠の状況下のように、金利rがゼロ近傍かほぼゼロであると、財政赤字分が国債発行でも貨幣供給でも違いは殆どない、ということでもある。しかも、単に紙幣を刷るだけではダメで、「財政支出として使う」というのが、(1)式の意味するところである。政府が支出しないと、マネタリーベースとして供給されることにはならないから、である。
また、(1)式を変形して、
r=ΔM/B+財政赤字/B
と書くと(財政赤字=T+ΔB-G、税収+赤字国債-政府支出)、
貨幣供給量が財政赤字を超えていかないと、名目金利が上がらない、すなわちインフレ率も正の値をとるのが難しくなる、ということであろう。また貨幣供給が乏しい場合には、国債発行の増額によりΔBを大きくしないと、ΔB+T-Gの全体の値が大きくはならない。試みてきた大部分が、増税(Tを大きくする)か政府支出Gを減らす、という努力だったので、それも限界があろう。
段々と貨幣供給量ΔMを増やし、緩和措置によりr'の引き下げをもたらした結果、Pの上昇に若干の効果はあったかも、だが((4)式の不等号が逆転した状態、P>0の時ΔMの増加や金融緩和で引き下げたr'の効果が発現という意味合い)、デフレ脱却が定着するには至っていない。
財政赤字分を国債発行ではなく、全部貨幣供給により賄おうとすると、あまりに急激なΔMの増加があればrの増大をもたらし、引いては物価の著しい上昇を来すことがあるのかもしれない。
通常の国債市場でのデフォルト問題というのは、(1)式の rB の利払い費用が捻出できないケースということが多いと思うが、ΔMで補える限りにおいては、デフォルトの危険性は乏しい、と見える。自国通貨発行権は破綻危機を回避し易いとの意見は頷けるものがあるように思える。ただ、これがあまりに過剰になってしまうと、やはり貨幣の信頼性が落ちることになるという問題が発生するかもしれず、そうした局面ではやはり物価が高騰することを招くかもしれない。
こうした整理や理解は、問題があるかもしれないが、一応書いてみた。
今後の研究が待たれる。