先日にもちょっと書いたが、Dr.小幡績は学部教育を受け直した方がよいのではないか。経済学の理屈を知っているとは到底思われない。
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小幡績PhDの行動ファイナンス投資日記:日本銀行の終わりの始まり
(以下に一部引用)
日銀が、デフレ克服のために、実体経済への融資を行うことの誤りである。
ここで、個別企業への融資に間接的に踏み込むという論点は除外する。問題は、金融市場ではなく、実体経済にかかわることである。
日銀はデフレは悪というメディアエコノミクスに屈し、デフレファイターとなった。これは出来ないことを約束するという鳩山的誤りだ。悪気はないが、罪は重い。
もうひとつの誤りは、デフレは金融的現象だから、これに対処するのは、中央銀行の役割から外れていない、という判断である。これが二重の誤りの二つ目だが、実は、これはさらに二重の誤りに陥っている。
第一は、デフレが金融的現象というのは誤り。これは、前回のエントリーで述べた。
もうひとつの誤りは、金融的現象だから、中央銀行として日銀が対処する、ということになっているが、この日銀の融資制度は、金融市場から実体経済に主戦場を移しており、金融政策から大きく離れているということだ。
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恐らく小幡先生は、自分が何をどう議論しているのか、ということが、基本的な部分からして分かっていないのだろう。それが、この文中に顕れている。
以下、具体的に見てゆくことにする。
①小幡先生のいう「デフレ」とは何か?
まず、ここだ。彼は、自分が用いている「デフレ」という用語について、独自の定義を行い、使っているものと思われる。学術用語というのは、基本的に共通しているものであって、使う人によって意味や定義が異なるということは学界という中では、あり得ないだろう。だが、彼は「混乱が見られる」とか何とか言ってるので、彼の心の内にあるデフレという言葉に対する考え方と、その他の人々では違っている可能性が高いだろう。小幡式の「デフレ」という用語の定義を示してもらわない限り、彼の考えというものを正確に知ることはできないだろう。まあ、小幡先生の書いた文章から、できるだけ読み取るようには努力をしますがね。
彼は、独自定義を行い、その独自解釈を用いて「それは間違いだ」的な”所謂シャドーボクシング”みたいなものを展開しているかのようである。彼の使っている「デフレ」という語感は、通常の学術的な「デフレーション」とは違うようだ。
②「デフレが金融的現象というのは誤り」の誤り
この一文を見ただけで、「ああ、この人は経済学というものを勉強してないか、知らないんだろうな」という予測が立つ。いや、当方とて、専門的な経済学の教育を受けたことなど一度たりともないけれども、少なくともこの部分だけからは素人目で見ても「全然ダメだな」ということは判る。
まず、「金融的現象」なる専門用語を独自で創造するのは勝手ですが、そういった学術用語というのはあるんでしょうか?経済学の教科書でよく見る用語とは思えないわけですが、論文でそういう用語は使われているものなんですか?
意味不明。もし使いたいなら、それなりの前フリくらいは置いて欲しい。
「金融的現象」というヘンな用語が、「中央銀行が何らかの金融政策を実施した結果、生じた現象」、というような意味合いなのではないかなと当方が推測しました。
とりあえずそういう意図であるとして、「デフレが金融的現象」という文がそもそも間違い。彼の言い分は全く不明。それは、
・デフレは、中央銀行が何らかの金融政策を実施した結果、生じたもの
・デフレは、中央銀行が【金融政策X】を実施するだけで起こる
・中央銀行の行う【金融政策Y】は、デフレの要因の一つ
といった主張の中身がまるで分からないから、である。
そもそも、論理的な思考とか学術的に正確な議論を大切にするなら、存在しない語で好き勝手にひとくくりにしたり、曖昧な表現を用いたりしないはずだ。
「デフレが金融的現象というのは誤り」という一文を見ただけで、専門家として大丈夫ですか、はっきり言えば、学生をやり直せと思うのは当然ではないですかね。一般の経済学の素人が書くのとは、わけが違うんですから。専門家が言うセリフではない、ということです。これは経済学以前の問題なのだ、ということが、小幡先生には理解できないのでしょう。
③物価下落は金融政策だけで起こるわけじゃない
小幡先生が感じているのは、多分、そういうことなのではないかな、と。あくまで当方の推測にすぎませんがね。
で、今更大袈裟に言わなくても、当たり前では。そもそも、「金融政策だけで物価下落が起こった」などと主張している論文とかがあったんですか?
まず、物価下落には様々な要因が存在している。
物価下落が持続的に起こるかどうかは、また別な話である。2年以上継続する物価下落というのは、更に異なる論点を有しているであろう、ということも普通の思考力を有する人であれば考えつくだろう。
また、一口に「物価」と言っても、それがCPIなのか、コアコアなのか、ということもあるだろう。小幡先生ならば一番気にしているのが、例えば株式、不動産などの資産価格なら、そこの価格下落を言っているのかもしれない。通常であれば、何の断りもなしに用いるのであれば、一般物価ということになるだろうから、そうであると物価下落要因というのは、いくつもあって当然ですよ、という当たり前の話に行き着くわけだ。
別に、経済学博士さまが力んで「金融的現象は誤り」とか訳の分からん豪語をしなくても、誰でも知ってるって話だな。しかし、ただの物価下落と「デフレ」では異なる、って言ってんのがわからんらしい。
④日銀の政策目的は「物価の安定」である
本当に、物事を知らない先生というものほど困ったものはない。散々「金融的現象」とかいう世迷言を並べているわけだが、これを許容するとして、小幡先生曰く、
『デフレは金融的現象だから、これに対処するのは、中央銀行の役割から外れていない、という判断である。』
『もうひとつの誤りは、金融的現象だから、中央銀行として日銀が対処する、ということになっている』
だそうで、いずれも同じことを言っているわけだ。
そもそも「金融的現象だから」なんて、何処の誰が(何時何分何秒に!笑)言ったんですか?そんなことを言っているのは、経済学者の中でただ一人、自分だけなんじゃありませんか?
日銀の役割として、根本的に「物価の安定」を掲げる以上、インフレに対しての役割と同じようにデフレに対しても責任を負うのは当然に決まっておろうが。それとも、「物価の安定」とは上昇のみについていうものであり、下降には関知しないとか放置するべしといった日銀の決まりでもあるのか?(笑)
全く、何を言ってんだ、この先生は。
「金融的現象だから」なんて独自の腐れセリフを追加したりせんでも、ハナから日銀の役割として物価の安定を謳ってるんだっての。それを知らないのは、あんただけなんだろ。だからこそ、こんなところで「『中央銀行の役割から外れてない、と言う判断』は誤り」みたいな、トンデモ論法が出されるんだろ。
そういうことではなくて、貨幣数量説を重視する立場をとるかどうか、というのは、考え方の違うを生むであろうということだ。極端な例でいえば、マネタリスト的な発想ということであるけれども、現代経済学はそこまで厳密ではないはずだ。貨幣数量説に近い立場を取るからといって、その他の経済学理論を否定することにはならない。ゲーム理論による、とある説明が正しくたって、現実世界で全部の事例がそうなっているわけではあるまいに。見えない中から、何らかの法則性を見出す作業をしているのだ、という実感が、小幡先生には恐らく存在していないだろう。
デフレの起こる原因(要因)というものと、デフレ脱却に対して効果を有しているか否か、というのは、別な話である。そういう考え方の基本が分かってない。
「日銀が○○をやったからデフレになった」という主張と、「デフレ脱却(対策)には日銀が△△をすべし」という主張は異なるものである。決定的な原因かどうかなんて、そう簡単には分からないかもしれないよ。
大体、日本が陥った長期にわたるデフレの原因なんて、正確に分かった経済学者は誰かいましたか?学術的な結論のようなものは得られているのですか?
小幡先生は、正解を知っているつもりだろうから、是非ともその答えをお聞かせ願いたいですな。
さらに追加(10時半くらい)。
ホント、どうしようもない論が堂々と出されているというのは、不思議でしょうがないですわ。
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小幡績PhDの行動ファイナンス投資日記:なぜ物価は下がるか ヘリコプターマネー
この記事中には以下の記述がある。
『物価は、モノの総量と貨幣の総量の比率であるから、後者が増えれば、モノの値段は上がり、減少すれば、モノの値段は下がる、というロジックだ。これは原始的な貨幣数量説だ。
これがなぜ誤りか、というと、ミクロ的に、貨幣量が増えたときに、モノの値段が下がるメカニズムを議論していないことにあり、現実的に、そのメカニズムは存在しないからである。』
この先生は、一体全体何を主張したいんですかね。
『貨幣量が増えたときに、モノの値段が下がるメカニズム』について、議論してないから間違いだ、という短絡ではなく、議論をすればいいんじゃないの?(笑)
貨幣量増加で値段が下がる、という実例を集めてきて研究すれば、そうなっているメカニズムについて経済学的な結論を得られるだろうよ。
というか、『現実にそのメカニズムは存在しない』と主張するのは、ワケが判らんな。『そのメカニズム』とは、「貨幣量を増大させると物価が上がる」というメカニズムのことか?
(この文章からは、普通、そうは解釈しないだろうけれども)
だったら、ハイパーインフレとかなんか、存在しないだろうよ。
いくら貨幣量を増大させても物価が上がらないなら、無税国家誕生ですか。たった今、日本の政府債務を一掃したらいいですよ。物価は上がらないんでしょう?超ラッキー!!
それとも、文章の額面通りに受けとる場合の、「貨幣量を増加させると物価が下がる」というメカニズムのこと?
そうだとすると、自己矛盾ですよね。物価が下がるというメカニズムがないのだから、そうはならないってことになりますわな。
貨幣量を増加させてるけど物価が下がる、なんて現象は現実に殆ど存在してこなかった、ということなんじゃないですか?(笑)
そんなメカニズムが存在しない、というのは、そりゃそうで、どの経済学理論でそんなメカニズムが報告されたのですかね?どんなペーパーですか?
つーか、こういう独自経済学理論が横行しているのは、何故なのでしょうか?
出鱈目を並べて平然としていられる学者さまってのは、どうしてなんですか?
そういう教育しか受けてこなかったから、だろ。
その程度の経済学教育しかなかったらかなんじゃありませんか?
そういうことを言っているんですよ。