調べていたら、法令検索のデータベースが少し変だったよ。
>索引検索結果一覧画面
これって、法律の名称が、昭和二十一年法律第二十四号(~)ということなんでしょうか?
入力を間違えたんじゃないかとしか思えないわけですが、どうなんでしょうか。もし間違いなら、正しく入れるようにしてくれるといいのですけれども。あと、短い名称を必ず作って、略称を同時に表示してもらえると有り難いのですが。法令名をピンポイントで知ってるとか、探せるというのは結構難しいと思いますので。
個人的に略称を考えるとすれば、とりあえず「政府財政援助制限法」とでも呼びますか(笑)。
条文は短くて、次の通り。
法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律
(昭和二十一年九月二十五日法律第二十四号)
第一条 会社その他の法人は、他の法令又は定款にかかはらず、政府の所有する株式又は出資に対して、政府以外の者の所有する株式又は出資に対すると同一の条件を以て、利益又は剰余金の配当又は分配をしなければならない。
第二条 政府は、他の法令又は契約にかかはらず、会社その他の法人に対し、毎事業年度における配当又は分配することができる利益又は剰余金の額を払込済株金額又は出資金額に対して一定の割合に達せしめるための補給金は、これを交付しない。
○2 前項の規定によつて補給金の交付を受けることのできない会社その他の法人について、法令、契約又は定款に特別の配当準備のための積立をすることを必要とする旨の規定があるときは、その規定は効力を失ふ。
第三条 政府又は地方公共団体は、会社その他の法人の債務については、保証契約をすることができない。ただし、財務大臣(地方公共団体のする保証契約にあつては、総務大臣)の指定する会社その他の法人の債務については、この限りでない。
=====
この法律の何が大事なのか、ということになりますが、政府保証は財務大臣の指定がなければできない(第3条)という大原則はそうなんですけれども、使えるんじゃないかなと思ったのは、実は第2条第2項の条文です。
第1項は、政府が会社等法人に対して、配当又は分配できる利益として一定額に達する為の補給金を交付しません、ということですな。この交付を禁止されている法人においては、ある規定の効力が無効となりますよ、というのが第2項なのである。問題はここだ。
『法令、契約又は定款に特別の配当準備のための積立をすることを必要とする旨の規定』
というのが、確定給付企業年金の積立金に適用されるか、という話である。
素直に条文を読めば、「特別の配当準備」というのが、一般的にいう株主への配当金充当目的というのはあるとして、賃金ではない企業年金部分については一種の配当のようなものであるとするなら、この積立規定はその「効力を失ふ」という解釈が可能なのではなかろうか、と。
従って、政府が債務保証を行う法人に対しては、財務大臣が指定すれば可能ではあるが、その対象法人において「特別の配当準備金」に該当する規定は無効となり、すなわち企業年金の賃金又は退職金以外の部分については「積立規定は効力を失う」ということに解釈できるのではないか、ということです。
ちょっと、というか、かなり強引にも見えるウルトラ●難度っぽい解釈論かもしれませんが、「特別の配当準備のための積立」が賃金を観念できない企業年金部分とかを含む、という行政側の法解釈があれば通せる話ではあるかと思います。これを行政訴訟で訴えてくる可能性はありますけれども、普通は難しいのではないかと思えます。
この解釈が通るなら、積立規定が「法令」「契約」「定款」のいずれであっても、無効化できるという比較的強力な条文となっているので、これから事後的立法を考える、とかいう話よりはマシではないでしょうか。
案外使えるんじゃないか?
略して、「政府財政援助制限法」は。
(本当の略称名は何と言うのですか?誰か教えて下さい)
あと、前の記事にコメントを頂戴していますが、これは、後ほど回答したいと思います。
追加です(19時頃):
まず、山ちゃんさんのコメントから。
>日本航空(株)と日航企業年金は独立した異なる法人です。またOBは、退職時に数百万円~1千数百万円、退職金から拠出しています。この拠出金はどうなるのでしょうか?
年金基金の法人については、確定給付企業年金法で規定されており、その法の支配を受けると思います。実施事業所の事業主が脱退したとしても、維持運営ができるのであれば基金としての存続は不可能ではありません。が、実質的に本体の企業が破綻すると事業主が拠出するべき資金というのが大幅に不足しますので、維持運営は困難になる場合は多いでしょう。この積立不足金自体が、基金が債権者となっているだけですので、その他債権者たちとの分配ということになってしまうでしょう。既に基金にあるお金を、その他の債権者と分け合え、ということではありません。
仮に退職金を2千万円貰えるところ1千万円だけ受取り、残り1千万円を出して年金として10年間分割で受取るという形になっている場合、退職金部分は1千万円ですので、保護の比較的強い共益債権となるのはその3分の1ということですし、それ以外の部分は更生債権、利率の上乗せ部分も更生債権になってしまうでしょう。毎月定額で受取額が月9万円であれば、その3分の1である3万円が共益債権部分となり(定期金も3分の1なので)、残りは更生債権とされるでしょう。他の銀行や企業の債権よりも保護を受けやすいであろうと思われますけれども、分配できる財産が少なければ、みんなで分け合うしかなくなりますので、退職時に出したお金の残額が戻ってくるかどうかは判りません。
会社更生法の退職金規定というのは、元々が「未払い」となってしまっている退職金(や給与)の取扱いについて規定されており、1円も払ってもらってない人であっても、共益債権として保護されるのは「3分の1しかない」ということなのです。
続いて、macさんのコメント。
>倒産処理手続きでは、特に定めが無い限り、年金債務は労働債権ではなく、一般債権ではないのですか?
古い入社の人であると、月々いくらかを積み立ててきた社員の方がいると思いますが、その場合ですと「賃金の一部」を積み立ててきたことになりますから、賃金の一部と見なされるでしょう。即ち、一般更生債権ではなく、共益債権部分はある、ということになるかと思います。これが労働債権としての性格を持つ、ということかと思います。厚生年金基金のような場合もほぼ同様ではないでしょうか。
一般更生債権となるのは、記事中の最後の方に触れていますが、恐らく企業側が全額拠出するような、私的性格の強い適格企業年金のような場合ではないかと思います。労働者自身が自分の賃金の一部を積み立てるという性質のものではなく、企業側の拠出のみ、というようなものでしょう。
あと、書いておられた分割スキームがよく判らなかったのですが、仮に、「グッド日航」と「バッドJAL」に会社分割したとして、「グッド日航」が「バッドJAL」に払うお金で年金を払ったり融資の返済を継続できる、ということなら、敢えて分割せずとも年金を払い返済もできる、ということになるかと思います。お書きの「融資と資本でまかなう」という額を投入すればよい、ということになるでしょうから。
もし「バッドJAL」が行き詰まって破綻すれば、やはり年金受給者は受取れなくなるし、未返済部分は全て焦げ付き貸し倒れると言う結果になることに違いはないでしょう。これは「グッド日航」が国営であろうと民営であろうと関係なく、そうなのであれば分割などしなくとも最初から破産法適用か会社更生法適用でもいいんじゃないか、ということになるかと思います。
ponponさんのコメントの通り、どうなることやら、と。
>索引検索結果一覧画面
これって、法律の名称が、昭和二十一年法律第二十四号(~)ということなんでしょうか?
入力を間違えたんじゃないかとしか思えないわけですが、どうなんでしょうか。もし間違いなら、正しく入れるようにしてくれるといいのですけれども。あと、短い名称を必ず作って、略称を同時に表示してもらえると有り難いのですが。法令名をピンポイントで知ってるとか、探せるというのは結構難しいと思いますので。
個人的に略称を考えるとすれば、とりあえず「政府財政援助制限法」とでも呼びますか(笑)。
条文は短くて、次の通り。
法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律
(昭和二十一年九月二十五日法律第二十四号)
第一条 会社その他の法人は、他の法令又は定款にかかはらず、政府の所有する株式又は出資に対して、政府以外の者の所有する株式又は出資に対すると同一の条件を以て、利益又は剰余金の配当又は分配をしなければならない。
第二条 政府は、他の法令又は契約にかかはらず、会社その他の法人に対し、毎事業年度における配当又は分配することができる利益又は剰余金の額を払込済株金額又は出資金額に対して一定の割合に達せしめるための補給金は、これを交付しない。
○2 前項の規定によつて補給金の交付を受けることのできない会社その他の法人について、法令、契約又は定款に特別の配当準備のための積立をすることを必要とする旨の規定があるときは、その規定は効力を失ふ。
第三条 政府又は地方公共団体は、会社その他の法人の債務については、保証契約をすることができない。ただし、財務大臣(地方公共団体のする保証契約にあつては、総務大臣)の指定する会社その他の法人の債務については、この限りでない。
=====
この法律の何が大事なのか、ということになりますが、政府保証は財務大臣の指定がなければできない(第3条)という大原則はそうなんですけれども、使えるんじゃないかなと思ったのは、実は第2条第2項の条文です。
第1項は、政府が会社等法人に対して、配当又は分配できる利益として一定額に達する為の補給金を交付しません、ということですな。この交付を禁止されている法人においては、ある規定の効力が無効となりますよ、というのが第2項なのである。問題はここだ。
『法令、契約又は定款に特別の配当準備のための積立をすることを必要とする旨の規定』
というのが、確定給付企業年金の積立金に適用されるか、という話である。
素直に条文を読めば、「特別の配当準備」というのが、一般的にいう株主への配当金充当目的というのはあるとして、賃金ではない企業年金部分については一種の配当のようなものであるとするなら、この積立規定はその「効力を失ふ」という解釈が可能なのではなかろうか、と。
従って、政府が債務保証を行う法人に対しては、財務大臣が指定すれば可能ではあるが、その対象法人において「特別の配当準備金」に該当する規定は無効となり、すなわち企業年金の賃金又は退職金以外の部分については「積立規定は効力を失う」ということに解釈できるのではないか、ということです。
ちょっと、というか、かなり強引にも見えるウルトラ●難度っぽい解釈論かもしれませんが、「特別の配当準備のための積立」が賃金を観念できない企業年金部分とかを含む、という行政側の法解釈があれば通せる話ではあるかと思います。これを行政訴訟で訴えてくる可能性はありますけれども、普通は難しいのではないかと思えます。
この解釈が通るなら、積立規定が「法令」「契約」「定款」のいずれであっても、無効化できるという比較的強力な条文となっているので、これから事後的立法を考える、とかいう話よりはマシではないでしょうか。
案外使えるんじゃないか?
略して、「政府財政援助制限法」は。
(本当の略称名は何と言うのですか?誰か教えて下さい)
あと、前の記事にコメントを頂戴していますが、これは、後ほど回答したいと思います。
追加です(19時頃):
まず、山ちゃんさんのコメントから。
>日本航空(株)と日航企業年金は独立した異なる法人です。またOBは、退職時に数百万円~1千数百万円、退職金から拠出しています。この拠出金はどうなるのでしょうか?
年金基金の法人については、確定給付企業年金法で規定されており、その法の支配を受けると思います。実施事業所の事業主が脱退したとしても、維持運営ができるのであれば基金としての存続は不可能ではありません。が、実質的に本体の企業が破綻すると事業主が拠出するべき資金というのが大幅に不足しますので、維持運営は困難になる場合は多いでしょう。この積立不足金自体が、基金が債権者となっているだけですので、その他債権者たちとの分配ということになってしまうでしょう。既に基金にあるお金を、その他の債権者と分け合え、ということではありません。
仮に退職金を2千万円貰えるところ1千万円だけ受取り、残り1千万円を出して年金として10年間分割で受取るという形になっている場合、退職金部分は1千万円ですので、保護の比較的強い共益債権となるのはその3分の1ということですし、それ以外の部分は更生債権、利率の上乗せ部分も更生債権になってしまうでしょう。毎月定額で受取額が月9万円であれば、その3分の1である3万円が共益債権部分となり(定期金も3分の1なので)、残りは更生債権とされるでしょう。他の銀行や企業の債権よりも保護を受けやすいであろうと思われますけれども、分配できる財産が少なければ、みんなで分け合うしかなくなりますので、退職時に出したお金の残額が戻ってくるかどうかは判りません。
会社更生法の退職金規定というのは、元々が「未払い」となってしまっている退職金(や給与)の取扱いについて規定されており、1円も払ってもらってない人であっても、共益債権として保護されるのは「3分の1しかない」ということなのです。
続いて、macさんのコメント。
>倒産処理手続きでは、特に定めが無い限り、年金債務は労働債権ではなく、一般債権ではないのですか?
古い入社の人であると、月々いくらかを積み立ててきた社員の方がいると思いますが、その場合ですと「賃金の一部」を積み立ててきたことになりますから、賃金の一部と見なされるでしょう。即ち、一般更生債権ではなく、共益債権部分はある、ということになるかと思います。これが労働債権としての性格を持つ、ということかと思います。厚生年金基金のような場合もほぼ同様ではないでしょうか。
一般更生債権となるのは、記事中の最後の方に触れていますが、恐らく企業側が全額拠出するような、私的性格の強い適格企業年金のような場合ではないかと思います。労働者自身が自分の賃金の一部を積み立てるという性質のものではなく、企業側の拠出のみ、というようなものでしょう。
あと、書いておられた分割スキームがよく判らなかったのですが、仮に、「グッド日航」と「バッドJAL」に会社分割したとして、「グッド日航」が「バッドJAL」に払うお金で年金を払ったり融資の返済を継続できる、ということなら、敢えて分割せずとも年金を払い返済もできる、ということになるかと思います。お書きの「融資と資本でまかなう」という額を投入すればよい、ということになるでしょうから。
もし「バッドJAL」が行き詰まって破綻すれば、やはり年金受給者は受取れなくなるし、未返済部分は全て焦げ付き貸し倒れると言う結果になることに違いはないでしょう。これは「グッド日航」が国営であろうと民営であろうと関係なく、そうなのであれば分割などしなくとも最初から破産法適用か会社更生法適用でもいいんじゃないか、ということになるかと思います。
ponponさんのコメントの通り、どうなることやら、と。