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沖縄県名護市辺野古における公有水面埋立承認の撤回・取消について

2015年03月31日 18時31分11秒 | 法関係
前の続きですが、今度は公有水面埋立承認について考えてみます。


>http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150331-00000010-mai-pol

(一部引用)

沖縄防衛局による林農相への執行停止申し立てに対し、県は27日の意見書で、国が不服を申し立てることは制度上できないとして、却下を求めていた。防衛局の請求の適否を同じ政府内の農相が判断するのはおかしいというわけだ。

 これについて、林氏は30日、「岩礁破砕には知事の許可が必要で、防衛局はその許可をとって作業している。この点で私人が事業者である場合と変わらず、申立人として適格が認められると解するのが相当だ」と記者団に説明した。

 執行停止決定は、行政不服審査法に基づく審査請求手続きの一部であり、この決定だけを取り上げて県が訴訟に踏み切っても敗訴する可能性は高いとされる。このため現状では、防衛局の審査請求を農相が裁決するまで、現場海域での移設作業は続くことになる。

 しかも、裁決で農相が防衛局の請求を棄却すれば、同局は知事の指示取り消しを求めて提訴できる。これに対し、国から受託した事務については自治体が原告になれないという判例があり、農相が請求を認めて指示を取り消した場合、県は裁決を不服とする行政訴訟を提起できない。

 行政法に詳しい小早川光郎成蹊大法科大学院教授は「農相が裁決で知事の指示を取り消せば、県がとれる法的手続きは行政不服審査法の中にはない。ただ、今回の執行停止は(裁決が出るまでの)現状凍結ではなく、作業を進めるという意味を持つので、政府はその部分の説明は必要だろう」と指摘する。

 県が移設作業に待ったをかけるには、コンクリート製ブロックによるサンゴ礁の損傷を理由に、岩礁破砕許可を取り消すことが考えられる。翁長氏を支える共産、社民両党などの県選出国会議員5人は28日、「防衛局が指示に従わないなら、知事は迷うことなく、自信を持って破砕許可を取り消すよう強く要請する」との緊急アピールを発表した。現地で移設反対の抗議活動を続ける人たちも翁長氏の「次の一手」を注視する。

 ただ、翁長氏は30日、記者団の質問に対し「専門家と相談しているところで、コメントすることはない」などと慎重な発言に終始した。ある県幹部は「効力を停止された指示を根拠に破砕許可を取り消せるかどうか法的な検討が必要だ」と明かす。

 翁長氏は仲井真弘多(なかいまひろかず)前知事による埋め立て承認の取り消しも視野に入れている。県の第三者委員会は7月にも検証結果を知事に報告する見通しで、前知事の判断に誤りがあれば、翁長氏は取り消しに踏み切る構えだ。その場合、防衛省は公有水面埋立法を所管する国土交通省に不服審査請求するとみられる。県幹部は「既に法律上の争いになっているので、勝つ確率が高い手段を考えなければならない」と手探り状態を認める。


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岩礁破砕許可の取消に関しては、国に有利な点が多すぎである。上記記事でも示されたような、1号法定受託事務に関する裁決が審査庁から出された場合、処分庁たる自治体が原告不適格であるなら、裁決が出た時点で負けがほぼ確定的だ。期限延長の拒否もできないだろう(拒否したら、同じく不作為の不服審査が出されるだけ)。


原権限庁が農水省であって、権限委任先が沖縄県(都道府県知事)であるなら(=1号法定受託事務)、処分庁の処分について審査庁の農水省が出した裁決は元々権限を有していた農水省が自ら処分を決したということに他ならず、これの変更を委任先である自治体が不満を言うこと自体に、法的利益はないということかもしれない。


ヘンな喩えだが、ご容赦を。
コンビニの店長が「商品Aを5個発注、商品Bは取りやめ」と決めて業者に注文したとする。しかし客から「商品Bも置いてほしい」と要望があって、店長は「Aは売れるけどBは儲けにならないからダメ」と拒否した。しかし、オーナーさんが店長の言い分を精査した結果、「商品Aは3個、商品Bは2個で」と発注内容を変更した。

コンビニ店長は、オーナーさんの委託を受けて業務をやっているだけで、上位の決定者はあくまでオーナーさんだ。元々の発注権限はオーナーさんにあるが、店長が代行しているだけなので、オーナーさんが決めたなら別の誰か(例えばコンビニ本部)の判断を仰ぐ必要性がない、というのが国側の主張ということになろう。

ここで、店長=自治体、オーナーさん=農水省、客=防衛局、発注内容=処分内容、ということ。発注内容変更は、裁決による変更と同じ意味合いだ。最初から店長はオーナーさんの決めたことに口出しできる権利がない、と。



残された対抗手段は公有水面埋立法に基づく知事承認の撤回か取消であるが、前記毎日新聞記事によれば、公有水面埋立法の撤回か取消の場合であっても、防衛省は同じく国土交通省に行政不服審査法に基づく審査請求を出す、という目論見であるようなので、まずこれについて検討する。


○公有水面埋立法 第51条  

本法ノ規定ニ依リ地方公共団体ガ処理スルコトトサレテイル事務ノ内左ニ掲グルモノハ地方自治法 (昭和二十二年法律第六十七号)第二条第九項第一号 ニ規定スル第一号 法定受託事務トス
一  第二条第一項及第二項(第四十二条第三項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)、第三条第一項乃至第三項(第十三条ノ二第二項及第四十二条第三項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)、第十三条、第十三条ノ二第一項(第四十二条第三項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)、第十四条第一項(第四十二条第三項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)、第十六条第一項、第二十条、第二十二条第一項、同条第二項(竣功認可ノ告示ニ係ル部分ニ限ル)、第二十五条、第三十二条第一項(第三十六条ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)、第三十二条第二項、第三十四条、第三十五条(第三十六条ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)、第四十二条第一項並第四十三条ノ規定ニ依リ都道府県ガ処理スルコトトサレテイル事務
二  第十四条第三項(第四十二条第三項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規定ニ依リ市町村ガ処理スルコトトサレテイル事務



岩礁破砕許可の場合にも検討したが、1号法定受託事務であると上級庁すなわち国土交通省の審査となろう。1号事務は51条に規定されているのだが、非常に読み難い。

最も具体的かつ簡明な条文を挙げておこう。51条1項の先頭に書かれている、2条1項である。


○公有水面埋立法 第2条
埋立ヲ為サムトスル者ハ都道府県知事ノ免許ヲ受クヘシ



これが国土交通大臣の委任を受けた1号法定受託事務とされているものである。2条を根拠として埋立免許を与えられた場合には、免許取消処分に関する不服審査請求先は国土交通省となるであろう、ということ。


沖縄防衛局ひいては防衛省が埋立事業者なのであるから、それは政府であり国ということになる。そうすると、対象条文は2条ではなく、42条となる。


○公有水面埋立法 第42条  

国ニ於テ埋立ヲ為サムトスルトキハ当該官庁都道府県知事ノ承認ヲ受クヘシ
2 埋立ニ関スル工事竣功シタルトキハ当該官庁直ニ都道府県知事ニ之ヲ通知スヘシ
3 第二条第二項及第三項、第三条乃至第十一条、第十三条ノ二(埋立地ノ用途又ハ設計ノ概要ノ変更ニ係ル部分ニ限ル)乃至第十五条、第三十一条、第三十七条並第四十四条ノ規定ハ第一項ノ埋立ニ関シ之ヲ準用ス但シ第十三条ノ二ノ規定ノ準用ニ依リ都道府県知事ノ許可ヲ受クベキ場合ニ於テハ之ニ代ヘ都道府県知事ノ承認ヲ受ケ第十四条ノ規定ノ準用ニ依リ都道府県知事ノ許可ヲ受クヘキ場合ニ於テハ之ニ代ヘ都道府県知事ニ通知スヘシ



残念ながら、これが51条に規定される1号法定受託事務なのである。42条の知事承認を取消した場合でも、岩礁破砕許可と同様に、行政不服審査法に基づく審査請求を出されてしまうと、国土交通大臣による裁決によって覆せるというのが防衛省の読み筋となろう。


沖縄県側が抵抗できる手段は少ない。
以前に述べた条例制定についても、不遡及原則はあるので、工事開始となってしまっていると厳しいこともある。
14年9月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/7366ef7a2b743fa6d860d3014bf45c98



訴訟提起することを考えるとしても、例えば

・国土交通大臣の裁決(公有水面埋立承認を妥当とするもの)を取り消す取消訴訟を提起:沖縄県ができない場合には住民などが原告になる必要がある

・国地方係争委員会の審理に回し、その決定(国土交通大臣の裁決を了とする)について取消訴訟を提起:これも県が原告になれるかどうかは不確実だが、自治法根拠で機関訴訟は可能ではないか


訴訟での闘争となると、現在進行中の訴訟で勝つべき、ということになろうか。そうか、この訴訟で県が敗訴受け入れで、埋立承認を判決で取り消せばいいのだ。控訴しなければ判決が確定となる。

被告である県が受け入れる、これだ!


それか、県議会が環境保護条例による工事規制をやるのが、最強ということだろう。

辺野古における岩礁破砕許可に関する行政不服審査法に基づく執行停止について

2015年03月31日 13時32分06秒 | 法関係
辺野古での埋立工事を巡って、沖縄県と政府との対立が続いている。3月30日には、農水大臣により、沖縄県知事の指示に関して、執行停止が宣言されるに至った。沖縄県と政府との法的闘争合戦の様相となっているが、沖縄県側の取り得る手段は限定的である。岩礁破砕許可に関する論点について整理し、今後の対抗策を考える為の一助としたい。



1)岩礁破砕許可の知事権限について


直接的には、沖縄県漁業調整規則が根拠法である。


○沖縄県漁業調整規則 第39条
 
漁業権の設定されている漁場内において岩礁を破砕し、又は土砂若しくは岩石を採取しようとする者は、知事の許可を受けなければならない。
2 前項の規定により許可を受けようとする者は、第9号様式による申請書に、当該漁場に係る漁業権を有する者の同意書を添え、知事に提出しなければならない。
3 知事は、第1項の規定により許可するに当たり、制限又は条件をつけることがある。



本規則の制定根拠は、漁業法(ここでは略)及び水産資源保護法である。


○水産資源保護法 第4条

農林水産大臣又は都道府県知事は、水産資源の保護培養のために必要があると認めるときは、特定の種類の水産動植物であつて農林水産省令若しくは規則で定めるものの採捕を目的として営む漁業若しくは特定の漁業の方法であつて農林水産省令若しくは規則で定めるものにより営む漁業(水産動植物の採捕に係るものに限る。)を禁止し、又はこれらの漁業について、農林水産省令若しくは規則で定めるところにより、農林水産大臣若しくは都道府県知事の許可を受けなければならないこととすることができる。
2  農林水産大臣又は都道府県知事は、水産資源の保護培養のために必要があると認めるときは、次に掲げる事項に関して、農林水産省令又は規則を定めることができる。
一  水産動植物の採捕に関する制限又は禁止(前項の規定により漁業を営むことを禁止すること及び農林水産大臣又は都道府県知事の許可を受けなければならないこととすることを除く。)
二  水産動植物の販売又は所持に関する制限又は禁止
三  漁具又は漁船に関する制限又は禁止
四  水産動植物に有害な物の遺棄又は漏せつその他水産動植物に有害な水質の汚濁に関する制限又は禁止
五  水産動植物の保護培養に必要な物の採取又は除去に関する制限又は禁止
六  水産動植物の移植に関する制限又は禁止

(以下略)


沖縄県漁業調整規則39条で制限しているのは、水産資源保護法4条2項の4号及び5号によるものと思われる。サンゴ礁保護とは水産動植物の保護培養であり、これに必要な「物の採取に関する制限」が漁業調整規則39条での制限の意味であろう。
また、コンクリートブロック投棄や紛失したアンカー投棄は、4号規定の「有害な物の遺棄」に該当する可能性がある。


すなわち、サンゴ礁破壊とは保護培養が必要な水産動植物の破壊行為であり、本来的に制限されるべき行為である。事前に県側が附した条件についても、漁業調整規則39条3項の条件を逸脱しているのであれば、許可取消事由となるのは明らかであろう。


2)沖縄防衛局の審査請求について


行政不服審査法に基づく請求というのが政府の言い分である。これに対する明確な否定理由は、法学的理論上存在するかどうか不明である。

沖縄県知事の行った作業停止指示についての審査請求であるが、行政指導であって処分(本件では許可取消)ではないというのが県側主張だが、審査請求対象となりうる。


○行政不服審査法 第2条  

この法律にいう「処分」には、各本条に特別の定めがある場合を除くほか、公権力の行使に当たる事実上の行為で、人の収容、物の留置その他その内容が継続的性質を有するもの(以下「事実行為」という。)が含まれるものとする。



取消処分を前提とする作業停止指示であることから、行政指導であっても事実行為と認定する余地はある、というのが農水省側判断であろう。実質的に命令に近いということであり、処分性があるとみている。

執行停止については、34条規定による。


○行政不服審査法 第34条  

審査請求は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。
2  処分庁の上級行政庁である審査庁は、必要があると認めるときは、審査請求人の申立てにより又は職権で、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止その他の措置(以下「執行停止」という。)をすることができる。
3  処分庁の上級行政庁以外の審査庁は、必要があると認めるときは、審査請求人の申立てにより、処分庁の意見を聴取したうえ、執行停止をすることができる。ただし、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止以外の措置をすることはできない。
4  前二項の規定による審査請求人の申立てがあつた場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があると認めるときは、審査庁は、執行停止をしなければならない。ただし、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、処分の執行若しくは手続の続行ができなくなるおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときは、この限りでない。
5  審査庁は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たつては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとする。
6  第二項から第四項までの場合において、処分の効力の停止は、処分の効力の停止以外の措置によつて目的を達することができるときは、することができない。
7  執行停止の申立てがあつたときは、審査庁は、すみやかに、執行停止をするかどうかを決定しなければならない。



本件では、審査申請人=沖縄防衛局、処分庁=沖縄県、審査(上級)庁=農水省であり、34条2項、同4項、同7項により、今回の執行停止を決定し両者に通知したものと考えられる。


審査対象及び審査(上級)庁としての妥当性はどうであろうか。


○水産資源保護法 第35条の二  

第四条第一項、第二項、第七項及び第八項並びに第三十条の規定により都道府県が処理することとされている事務は、地方自治法 (昭和二十二年法律第六十七号)第二条第九項第一号 に規定する第一号 法定受託事務とする。



沖縄県漁業調整規則の根拠が4条1項及び2項にあるなら、1号法定受託事務であることから、審査庁は必然的に農林水産省及び大臣となる。

従って、
・処分性は行政不服審査法2条の処分の定義(=事実行為)により該当
・審査庁は水産資源保護法35条の二により農水大臣
・執行停止決定は行政不服審査法34条による

外形的には、手続の要件を満たしているものと思われる。


3)今後の行政不服審査法上の流れと訴訟提起の関係

沖縄県は作業停止指示に続き、規則39条の岩礁破砕許可の取消処分を実行したとしても(農水大臣主張では、既にその権限も執行停止されている、というものである)、効果を持たない行政行為とみなされるだろう。実質的に取消処分と同等(事実行為)ということで審査請求・執行停止申し立てなのであるから、執行停止決定後には知事権限発動は無効(多分、不当でも不法でもなく、無効)である。


裁決が農水大臣より出されるまでは、訴訟提起も不可能である。


○水産資源保護法 第35条

農林水産大臣又は都道府県知事が第四条第一項又は第二項の規定に基づく農林水産省令又は規則の規定によつてした処分の取消しの訴えは、その処分についての異議申立て又は審査請求に対する決定又は裁決を経た後でなければ、提起することができない。



故に、漁業調整規則に基づく沖縄県のできることは、待つことだけである。
裁決が出ないと訴訟提起できない。
裁決で防衛局の言い分が否定されることは想定できない(農水省が防衛省の進める米軍基地建設を停止するほどの強権を発動することなど考えられない)ので、裁決結果は見えている。

行政不服審査法での再審査請求が当初の審査請求人(本件では沖縄防衛局)にしか認められていないなら、裁決が出た後の沖縄県の手段は行政訴訟しかないだろう。機関訴訟ということになるわけだが、原告適格が問題とされる可能性はある。

他には、国地方係争処理委員会の審理を申し立てる、といったことだろうか。

>http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/singi/keisou/kisoku.html


裁決が出る前に審査を申し出たとしても、農水省の執行停止に不服とする主張くらいしかなく、そもそもの漁業調整規則39条に基づく取消処分の妥当性には回答が得られない。農水省の裁決後に係争委員会に審査申出をしても、国の一組織であることから、期待できるような答えが来るとは考えない方がよい。


従って、農水省の裁決が出るまでは、岩礁破砕許可を根拠としての沖縄県側の対抗策はほぼ封じられていると思える。
裁決で負けた場合、訴訟提起は困難であるか(処分庁が審査庁を相手に機関訴訟を認められるか、都道府県が国を被告として取消訴訟を提起する場合の原告適格を裁判所が問題としないか)、できたとしても岩礁破砕許可取消が認められるだけであって、埋立工事を止めることができるわけではない。

工事法に制限がでてくるだけであって、基地は建設できてしまうということである。