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新潮社は毎年「女による女のためのR-18文学賞」を主催していますが、今年の第12回受賞作をめぐり、選考委員では意見が対立したようです。
女性限定の文学賞『第12回 女による女のためのR-18文学賞』の授賞式は、4月22日、東京・新宿の京王プラザホテルで行われました。選考委員を務めた作家の三浦しをんさんと辻村深月さんによると、最終選考では大賞はこの2作のどちらかだという点については一致していたものの、どちらを大賞とするかに関しては意見が割れ、協議が重ねられたそうです。
三浦しおんさんは『朝凪』を高く評価し「どちらが大賞でも遜色のない出来だった。『朝凪』は読んでいてストレスが溜まる。ただ、主人公がいい意味で読者を苛立たせ、笑いの要素もありつつ、先を読ませるという構成のうまさを感じた」との意見。
これに対し、「主人公が男性ということもあり、賞の意義を考えるとどうなのかと思ったが、この作品はもう一人の主人公格の女の子が、主人公に復讐しているような形で読める。そう読むとカタルシスがあり“女のための”小説といってもいいだろうと思った」というのが辻村さんの所感。
最終的には今年の大賞を手にしたのは朝香式(あさか・しき)さんの『マンガ肉と僕』。
森美樹(もり・みき)さんの『朝凪』(あさなぎ)は読者賞に選ばれたのでした。
いずこの賞も、最終決定に至るまでには様々な毀誉褒貶があるようです。
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選考委員;
三浦しをん(みうら・しをん)
1976年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。2000年、書下ろし長編小説『格闘する者に○』でデビュー。2006年『まほろ駅前多田便利軒』で第135回直木賞受賞。小説に『私が語りはじめた彼は』『風が強く吹いている』『神去なあなあ日常』『きみはポラリス』『天国旅行』『木暮荘物語』などがあるほか、『しをんのしおり』『悶絶スパイラル』『あやつられ文楽鑑賞』などのエッセイも人気がある。
辻村深月(つじむら・みづき)
1980年生まれ。千葉大学教育学部卒業。2004年に『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。2011年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に『子どもたちは夜と遊ぶ』『凍りのくじら』『ぼくのメジャースプーン』『スロウハイツの神様』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『光待つ場所へ』『ふちなしのかがみ』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』と、精力的に作品を発表し続けている。
※辻村深月さんの「辻」の字は、正しくは二点しんにょうです。