魂か肉体か、換言すれば、イデアリスムスかマテリアリスムスかという問題は、19世紀の人々にとって重要な哲学的テーゼであった。
というのは、その頃、科学哲学分野では大きな刷新が起こり、それまで同一のカテゴリーに入れられていた哲学と科学が袂を分かつことになったからである。
19世紀はカバニスの精神と肉体の関係論とともに始まったとさえ言われるように、フランスには科学主義を強く支持する多くの知識人が出現した。
シャルル・ド・レミューザが、「カバニスにおいては、胃が食物を消化するように脳が着想を消化する。かくして着想は分泌する」 と記したように、カバニスの科学主義の勢いにはすさまじいものがあった。言い換えれば、19世紀は科学と信仰、唯心論的精神主義と物質主義的マテリアリスムスのイデオロギーの対立と葛藤の世紀conflits idéologiques entre science et foi, matérialisme et spiritualismeだったのである。
ロマン主義者は霊的なものを化身としてあるいは感覚として理解し、実証主義者は現象を関係性の総体として捉えて伝統的な形而上学を拒絶、改革派は継続的な世界観を力強く推進し、精神であろうと物質であろうと、存在の永劫的な基盤を構成するとみなされる本質の不動性に反発した。
フランスの博物学者かつ数学者でもあるGeorges-Louis Leclerc, Comte de Buffonビュッフォン(1707-1788)は、数学の確率論に微分や積分の概念を導入したが、彼もまたマテリアリスム的立場を取った。アカデミーの評価は低かったが、一般の読者に大きな影響力を及ぼした。
この科学万能主義のマテリアリスムスの風潮に対抗し、イデアリスムスの重要性を強調したのが、サンドに近しいピエール・ルルーであり、ポール・ジャネ Paul Janet やジャン・レノーJean Reynault であった。折しも、『プラトン全集』の仏語訳全13巻(1825-1840)がギリシャ語に堪能であった哲学者ヴィクトル・クザンVictor Cousin の翻訳により出版され、科学主義の猛威に対しプラトン哲学が唯心論の旗手となって抵抗していた。
フロベールが恋人の詩人ルイーズ・コレに「君は理想が好き」なのだから、哲学者の翻訳によるプラトンを読むように」と助言し、姪のカロリーヌ(愛称ルル)への手紙でプラトンの『饗宴』と『フェードル』を読むよう勧めたのは、まさにこのクザンの翻訳版であった。
csophie2005@.copyright.
というのは、その頃、科学哲学分野では大きな刷新が起こり、それまで同一のカテゴリーに入れられていた哲学と科学が袂を分かつことになったからである。
19世紀はカバニスの精神と肉体の関係論とともに始まったとさえ言われるように、フランスには科学主義を強く支持する多くの知識人が出現した。
シャルル・ド・レミューザが、「カバニスにおいては、胃が食物を消化するように脳が着想を消化する。かくして着想は分泌する」 と記したように、カバニスの科学主義の勢いにはすさまじいものがあった。言い換えれば、19世紀は科学と信仰、唯心論的精神主義と物質主義的マテリアリスムスのイデオロギーの対立と葛藤の世紀conflits idéologiques entre science et foi, matérialisme et spiritualismeだったのである。
ロマン主義者は霊的なものを化身としてあるいは感覚として理解し、実証主義者は現象を関係性の総体として捉えて伝統的な形而上学を拒絶、改革派は継続的な世界観を力強く推進し、精神であろうと物質であろうと、存在の永劫的な基盤を構成するとみなされる本質の不動性に反発した。
フランスの博物学者かつ数学者でもあるGeorges-Louis Leclerc, Comte de Buffonビュッフォン(1707-1788)は、数学の確率論に微分や積分の概念を導入したが、彼もまたマテリアリスム的立場を取った。アカデミーの評価は低かったが、一般の読者に大きな影響力を及ぼした。
この科学万能主義のマテリアリスムスの風潮に対抗し、イデアリスムスの重要性を強調したのが、サンドに近しいピエール・ルルーであり、ポール・ジャネ Paul Janet やジャン・レノーJean Reynault であった。折しも、『プラトン全集』の仏語訳全13巻(1825-1840)がギリシャ語に堪能であった哲学者ヴィクトル・クザンVictor Cousin の翻訳により出版され、科学主義の猛威に対しプラトン哲学が唯心論の旗手となって抵抗していた。
フロベールが恋人の詩人ルイーズ・コレに「君は理想が好き」なのだから、哲学者の翻訳によるプラトンを読むように」と助言し、姪のカロリーヌ(愛称ルル)への手紙でプラトンの『饗宴』と『フェードル』を読むよう勧めたのは、まさにこのクザンの翻訳版であった。
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